酒というものは飲んでる時は楽しいものだが飲み過ぎた時や飲み過ぎた翌日はこの世の終わりかと思うくらい苦しいものである。記者も何度『お願いします神様もう二度とお酒は飲みませんからどうかこの二日酔いを止めてください』と願ったことかわからないが、それですぐさま治った試しは一度もない。遠藤周作的にいえば沈黙でありニーチェの言葉を借りるのならば神は死んだ、といえる状況だ。

神は死んだかもしれないが現代を生きる我々には科学がある。科学でならば二日酔いを治せないだろうか、というわけでアメリカのyoutubeチャンネル『Reactions』にて二日酔いのメカニズムをカガク的に解明し二日酔いを治すあるいは防止する方法を紹介しているのでこの動画に則ってにっくき二日酔いの正体をカガク的に解明しその傾向と対策をお伝えしようと思う。

カガク的、と書いたのはこのReactionsが『化学』を扱ったチャンネルなためであり決して誤変換というわけではない。

二日酔いとは

まずは二日酔いが起きるメカニズムを明らかにしておかなければならない。

我々は二日酔いになる。我々は二日酔いになる前に必ず酒を飲んでいる。我々は水道水天然水井戸水緑茶烏龍茶コーヒー飲茶スポーツドリンク葛根湯その他コンビニに売られている怪しげな着色料を使った清涼飲料水等々を飲んでも二日酔いにならない。ならば酒とその他の飲料水の違いはなんであろう。当然ながらアルコールが入っているか否かである。

化学的に言えば『アルコール』は『日本酒にビール焼酎ウィスキーワインテキーララムジンウォッカ』という七草を思わせる美しい短歌から『炭化水素の水素原子をヒドロキシ基に置き換えた物質の総称』というなんだかややこしい定義に変わってしまうので化学的には『エタノール』と表記するのが正しいのだろうがどうも『エタノール』と言われると殺菌消毒消臭掃除用という言葉が連想されてしまいどうにも飲料する気分を削がれる。

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だがそれらを混同してしまうのはあまり好ましいことではない。ホルマリンの原料であるメタノールは化学的な方の『アルコール』に分類されるのだが、メタノールは飲むと酔っ払うことは酔っ払うらしいが毒性が強く、小さじいっぱい程度でも飲むと失明する。それでも気にせず大さじ一杯飲むと十中八九死ぬ。消毒用エタノールにもこのメタノールが結構な量含まれているのでアル中の人はうっかり水で薄めて飲んだりしようとしない方が懸命だ。なおダイナマイトの原料として知られる『ニトログリセリン』の後半部分の『グリセリン』、こちらも化学的に言えばアルコールにあたり、こちらは飲むと酔っ払うかは知らないが噛むとほのかに甘い。保湿ティッシュを口に含んで確かめてみるとよい。毒性はあまり無いようだがカロリーが高いので注意されたし。ついでに『高級アルコール』というものもあるがこれは化学的に言えば『炭素数の多いアルコール(分子)』なので当たり前だが飲むと美味いというわけではない。

と、高校化学の教師が年に一回嬉しそうな顔で全クラスの授業で得意気に言う『アルコール』豆知識を流し読んだところでやはりそれでもどうにもこうにも『エタノール』という呼称は薬品というイメージが強くなんとなく洗濯用洗剤のような響きも感じるのでこれ以降からエタノールは慣れ親しんだ俗称のアルコールで呼ばせてもらおうと思う。

さて。アルコールそのものが人体に及ぼす影響は短期的にはさほど大したものではない。急性アルコール中毒に陥りさえしなければ『大脳の高位機能が麻痺し判断力、集中力、抑止力等が低下することで低位機能が表出する』噛み砕いていえば『なんだか頭がポワポワして考えるのが面倒になってきて突然喚きだしたり人に絡みだしたりその他泣く叫ぶ笑う説教を始める深夜に遠く離れた友人に電話するLINEで好きな人に戯言を述べる何かに足を引っ掛けたような気がしたが気にせず寝入って翌朝気が付いたら足が血だらけで布団がガビガビになっている』等の症状を引き起こす程度である。

このままでも楽しいことは楽しいのだが人間としてかなり使い物にならない上に放っておくと暴れる道端で寝る等の迷惑行為危険行為自殺行為に及ぶ可能性があるので人間の体はアルコールを体外に排出するための機構を備えるように進化しており肝臓内のADHという酵素がアルコールを分解しアルコールはアセトアルデヒドになりアセトアルデヒドはALDHという酵素によって酢酸に分解され酢酸は二酸化炭素と水になり最終的に色んな所から体外へと放出されるようになっているわけだがこの途中に出てくるアセトアルデヒド、がいわゆる二日酔いの原因となっている。つまり人体は自ら毒性の物質を体内で作り出してポワポワ気分を急転直下地獄のような苦しみに変えてゲーゲー吐いて文字通り辛酸を舐めるようにできているわけである。

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もう少しなんとかならんのかい人体、と思うかもしれないがコーカソイドやネグロイドは割とこのALDHの働きが強いため比較的二日酔いになりにくい体質で、しょっちゅう二日酔いになって苦しんでるのはモンゴロイドの約半数程度らしい。さらにモンゴロイドの数%はアセトアルデヒドを分解する能力を幸か不幸かほとんど持っておらず酒を飲むと延々と二日酔いの苦しみを味わう体質に遺伝的になっている。なので当然ながらアルコールは鍛えれば飲めるようになるというものではない。あるとしても本当に多少の差であって「おれ、鍛えたらたくさん飲めるようになったよ」とか言う人は単に無謀な飲み方をしなくなっただけ、と考えるのが自然である。

アセトアルデヒドは体内に入ると認識力記憶力の低下、疲労、口腔の渇き、抑うつを引き起こす、と動画内では言われている。その他頭痛や吐き気もあると言われているし体験的にもひしひしとそれを感じるがひとまずアセトアルデヒドが人体に引き起こす身体への影響に対する素人意見的議論は置いておいて、目下はこのアセトアルデヒドをどうするかに注目しよう。

寝る一時間半前に酒を飲むのをやめる

と思ったのだが動画の説明の順番を変更して先にこちらの対策から紹介しようと思う。寝る一時間半に酒を飲んではいけない。仕事に疲れて寝る前に寝間着のままスッとウィスキーの蓋でも開けて一杯二杯ないし三杯飲んでそのままほろ酔い気分でグッスリ就寝という生活パターンに陥ってる人もそこまで少なくはないと思うがこれはあまり良くない。アルコールは脳の働きを抑制するGABAの作用を強め脳を興奮させるグルタミン酸の作用を弱めそれにより眠くなるのだがそのせいでレム睡眠がなくなってしまいきちんとした睡眠が取れずおまけに数時間の睡眠の後に交感神経が活発化して結果、全然寝た気がしないのに変な時間に目覚めてしまったり眠っても寝た気があまりしない、ということが起きてしまう。

そこで寝る一時間半前になぜ酒を飲まないほうが良いかというとその辺りのトイレに起きたりしないように体が準備してくれるから、というわけらしいのだが仕組みはともかくその対策の理由は少しカガク的な物言いとは言いがたくついでにアルコールの話をしているのに化粧室の話をするのは少々気が引けたので先に置くことにした。

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卵を食べよ

というわけで話はアセトアルデヒドに戻る。卵を食べよ、と『Reactions』は言った。卵といえば良質なタンパク源でありビタミンA、B2、B12、D、必須アミノ酸とさすが生命のもととあり栄養たっぷりな万能食品として知られる。映画『ロッキー』でもロッキーが生卵をジョッキに入れて飲んでいたりマンガ『リングにかけろ』でもそのようなシーンが見受けられたので激しいスポーツを行う人々にとって卵は必需品なのだと思われる。さておきそのような万能食品こと卵は二日酔いにも効くという。どういうことかというと卵にはLシステインというアミノ酸が含まれておりこれがアセトアルデヒドの分解を促し二日酔いからの回復を早めてくれるそうだ。

これに近い話は記者も聞いたことがある。悪鬼のように襲いかかる頭痛と吐き気と布団の中で闘いながらスマホを取り出し『二日酔い 治し方』と検索した時に出てきた。美白効果があると知られている『ハイチオールC』はLシステインが多く含まれておりそれが肝臓の働きを高めてくれてアルコール及びアセトアルデヒドを早急に分解してくれるという話だった。

むむむ。ひとまずLシステインが二日酔いに効くということはわかったがこうなると卵とハイチオールCのどちらを摂るべきなのか迷うところである。『ハイチオールC』の錠剤というお薬感と美白効果があると謳われる錠剤なのに二日酔いに効くという裏ワザ感が魅力的だが、卵の万能神話を信じたいような気分と『なんとなく薬って怖いイメージがあるし……』と消極的健康ヘルシー嗜好思考に傾いてしまう気持ちもある(ちなみにハイチオールCの効能にはきちんと『二日酔』と記載されているので二日酔いの時に飲むのは決して用法を破った飲み方ではないことを書いておく)

というわけで気になるので調べてみた。とりあえずどうやら卵に含まれているのはLシステインではなくシスチンと呼ばれるアミノ酸であり、これが体内でシステイン(大体Lシステインで構成)に変わるらしい。シスチンがシステインに変わる過程でさほど量が変わるわけではないのでその辺りは無視してひとまず卵のシスチン含有量とハイチオールCのLシステイン含有量を比べてみよう。

ハイチオールC
シスチン(Lシステイン)含有量 100g中160mg 一日分(6錠)240mg

なんだかどっちがすごいんだかわからない中途半端な単位を使ってしまったので若干の補足を加えると大体卵の重さが1個60gでLサイズだと80g、記者が知る限りのハイチオールCの二日酔いへの対処法は『酒を飲む前と飲んだ後に2錠ずつ』であった。それを配慮した上で表を直すと

卵(M) 卵(L) ハイチオールC
シスチン(Lシステイン)含有量 一個96g 一個128g 2錠80g

と明らかに飲み会の前後に卵を1個ずつ食らった方がハイチオールCを2錠ずつ飲むよりシスチン(Lシステイン)補給量でいえば多いことがわかる。この議論に問題があるとすればどの程度シスチンがシステインに変換されるかということだ。他にもシスチンとシステインは体内で相互に入れ替わるらしいのでハイチオールC内のLシステインがどの程度シスチンに変わるのか卵とハイチオールCでは吸収率がどのように違うのか副作用はないのかコレステロール値は二日酔いの予防および治療のために命を軽々しく利用してよいのか等々の非常に深淵な問題があるがひとまず記者は卵を食すことを推奨したい。その理由に関しては後々述べるとして動画の方に戻る。

水を飲め

卵に対してこちらはいささか聴き飽きたフレーズである。二日酔いには水。吐き戻した者には水。これは鬼に金棒虎に翼弁慶に薙刀の隣に並べても引けをとらないレベルの組み合わせである。しかしそれがどのように科学的に良いのかと訊くと案外答えはまちまちだ。「アルコールの分解には水が必要だから」「吐いたら体内の水分が減るから」「口の中がキモチワルイだろうから」と説得力のあるフレーズが飛び出すが皆一様にそれからは口を濁し最終的にとにかく水を飲ませればなんとかなるの一点張りの水万能説論者に様変わりするばかりである。全く情けないことだと思うがこれらのフレーズは全て記者がその昔に実際に挙げたものなので記者もおとなしく動画を拝聴しようと思う。

動画の答えは上に挙げたもののどれとも違っていた。曰く、アルコールを摂取すると血圧を上げるためのホルモンが機能しなくなり、結果腎臓から大量の水が膀胱に送られてしまうということらしい。要するに原因はアルコールの利尿作用にあり利尿作用ゆえに脱水症状が起きてしまうので水を飲めということのようだ。よくよく考えたらエタノールの分解に必要なのは水ではなく酸素だし吐いてなかろうが水を飲むと楽になるので記者の苦しい言い訳はあまり正鵠を得ていなかったといえる。

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先程からアセトアルデヒドを二日酔いの全ての原因のように扱ってきたが実は二日酔いの症状は脱水症状によって引き起こされているものがいくつもある。経験的にはかなり多い。アルコール50gに対する利尿作用は約600ml~1Lと言われておりビール程度の量であればまだ摂取する水分の方が多いがもう少しアルコール度数が高い酒を飲むと利尿作用により飲んだ水分より出される水分の方が多くなる。雑な計算だとワインだと同量程度、焼酎だと3~4倍の量の水を飲まなければ収支が合わなくなる。水割りにしたからどうなるという量ではない。

動画内ではこの対策としてアルコールを一杯飲む度にグラス一杯分の水を飲むよう薦めている。ズボラな人間は飲み会の最後の帳尻合わせに水を飲もうとするがそれはあまり望ましくないらしい。最後に水をガブガブ飲んだところで体内に吸収されきらずにそのまま流れていくのがオチだし急な水分補給は水中毒にもなりかねず何より飲酒中の水分補給は血中アルコール濃度が高まるのを妨げることができるので酔いが回るのを遅くできる。

しかしただ水を飲めばいいというわけではない。夏場にテレビを点けた時にアナウンサーやら解説者が述べ立てる熱中症対策と同じことを繰り返すのは気が引けるが水だけでは脱水症状は治らない。そのようなわけで最後の対策法に移る。

空腹時に酒を飲んではいけない

動画の方では『胃が荒れるからやめた方がいい』という内容になっているがそれらの他にもアルコールを楽しんでいる最中に食べ物を食べておく利点はある。水が体内に吸収されるためには水以外にも糖分塩分その他各種ミネラルが必要なので何も食べなければせっかく飲んだ水もほとんど体内に吸収されず上から下への垂れ流し人間ホース状態となってしまうのだ。なので水分を吸収するのに必要な栄養素を摂取するために何か食べておいた方がよい、というわけだ。低血糖症による症状もまた二日酔いとして数えられることが多い。

また、アルコールは20%が胃で残りの80%全てが腸で吸収される。これは流れていく順番が胃から腸なのでどっちも吸収しやすいけど胃が吸収できなかった分は腸が吸収しているというわけではなく胃はさほどアルコールを吸収せず腸がアルコールを吸収しやすいという理由による。胃の中に何も入れていない空腹状態で酒を飲むとこれらのアルコールはどんどん腸へと流れてしまうのでそれを阻止するために胃に何かを入れておく方がいいのだ。分解に時間がかかるものを摂った方がいいのでなるべく『重い』食品を摂取することを推奨したいがこれだと健康になりたいのか不健康になりたいのかさっぱりわからん状況になってしまうので推奨はしない。

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というわけで卵の出番である。ハイチオールCを飲み会の前後に2錠飲むように飲み会の前後に卵を一つ食べておくのだ。卵はLシステインの効果は言うまでもなくタンパク質脂質各種ミネラルもほどよく含まれており飲み会の前後に持ってこいのほどよい『重さ』の健康万能食品だ。懸案事項の塩分糖分も卵焼きにパッパッと砂糖と塩とついでにだし汁でも混ぜておけば万事解決、味も最高。面倒な人はゆで卵に塩でも振って食べればよい。どうせビールには糖質が入ってるんだから構いやしない。

なお卵はコレステロール値を高めると言われており一日一個にするべきということが記者の中学家庭科の教科書に載っていたが最近の研究によって卵は別に食べてもコレステロール値が上昇しないことがわかっている。安心して板東英二のようにゆで卵を食べるとよい。

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まとめ

なんだかさっき言われたことをもう忘れてしまいそうな気配がするし「結局どうすればいいんだよ」と苛立たしげにここまでスワイプしてきたせっかちライフハッカー諸氏のためにも二日酔いにならないためにはどうすればいいのか情報を整理する。

・寝る一時間半前には酒を飲むのをやめる
・卵を食べよ
・水を飲め
・空腹時に酒を飲んではいけない

とこのように並べると昔から言われていることの方が多いナア、というやや肩すかしな印象を覚えないでもないが本記事の目的は『突き指は引っ張りゃ治る』的な民間療法を科学的に正しいことなのか検証するためにあるのでそれはそれで仕方のないことなのである。これで「酒を飲むと血圧が上がらず腎臓が膀胱にドバドバ水分を送ってしまうので脱水症状になるから水を飲むといいんだぜ」と実に科学的な解答をできるのである。ちなみに突き指を引っ張るのは良くないらしい。

剛毅な方はそんなことを言われたところで「いちいち水なんか飲んでられっかい!」と帰宅するなり泡盛どぶろくウィスキーをストレートで飲み始めてそのままぐっすり眠ってしまうかもしれないが腎臓も肝臓も簡単にアルコールで故障しかねないのでお酒が好きならこれらを守っておくことを推奨する。多分その方が人生の中で飲める酒の量は多いはずだ。

REFERENCE:

How To Prevent Hangovers (With Science)

How To Prevent Hangovers (With Science)

http://www.youtube.com/watch?time_continue=158&v=1ixWfo69ONA

How to beat a hangover on New Year’s Day: Experts reveal what causes you to feel so bad, and how to cure it

http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-3378215/How-beat-hangover-New-Year-s-Day-Experts-reveal-causes-feel-bad-cure-it.html?ITO=1490&ns_mchannel=rss&ns_campaign=1490

レグテクト(アカンプロサート)の作用機序:アルコール依存症治療薬

http://kusuri-jouhou.com/medi/sonota/acamprosate.html

日本大学医学部附属板橋病院 | 睡眠センター | 睡眠よもやま話

http://www.med.nihon-u.ac.jp/hospital/itabashi/sleep/column.html

栄養学コーナー

http://homepage3.nifty.com/takakis2/eiyou.htm

シミ・そばかす対策には、ハイチオールCプラス(ハイチオール:シリーズ) /製品情報【エスエス製薬】

http://www.ssp.co.jp/product/all/hc/

メタノールはどれだけ飲むと危険か

http://isomers.ismr.us/isomers2008/methanol-howmuch.htm