よく『ネガティブな人を見ているとこっちまでネガティブな気分になってくる』とか『お前を見ているとこっちまで気が滅入るから寄るな』という言葉を耳にします。少しネットでそれらしい言葉を検索すれば夫婦の片方がウツになったためにパートナーもうつになってしまうという相談をいくつも見つけることができます。

しかしそのような常識は十代には通用しないようです。ウォーリック大学の研究により、十代には憂鬱な気分は伝染せず、むしろ幸福な気分だけが伝染することが明らかになりました。

Having friends who suffer from depression doesn’t affect the mental health of others, according to research led by the University of Warwick.

CES-D

研究は2000人を超える高校生を対象としておこなわれました。研究者は彼らをCES-D(うつ病自己評価尺度)というテストをおこなってもらい、そのスコアによってうつ病の傾向にある人と健康な人の二つのクラスに被験者を分けました。ちなみに、CSE-Dはネットで簡単に5分とかからずに、たとえば以下のサイトなどでおこなうことができます。

研究者は被験者の友人関係をモデル化して、彼らの交友関係を調べ、6~12ヶ月の間で彼らの精神状態がどのように変化するのかを調べました。

十代にはうつは伝染らない

その結果、健康な友人(うつ病の傾向にない友人)が5人以上いる人は健康な友人が1人もいない人よりもうつ病傾向になる確率が半分であるということと、10人健康な友人を持つ人は3人しか健康な友人がいない人よりも2倍うつ病の傾向から回復する確率が高いことがわかりました。

ということはうつ病の傾向になる、あるいは回復する原因は健康な友人の数にある、さらに言うならばうつ病の友人の数は関係がない、つまり(少なくとも)十代にはうつは伝染らないということがわかったのです。

孤独な生活や幼少時の虐待体験はうつ病に繋がるといわれています。このことから、誰かと会話をするなどの社会的なサポートがうつ病からの脱却に重要であるとされています。

今回の研究論文の筆頭著者であるエドワード・ヒル氏は、今回の結果から「思春期にとってどんな人であれ友人を持つことはうつ病の改善につながる。うつ病の友人はあなたを巻き込むことはないし、健康な友人はあなたを守り、癒してくれる」というようなことを述べています。

腐ったミカンの方程式

話は少々逸れますが、かつてドラマ『金八先生』で「腐ったミカン」というフレーズが登場しました。これはとある教師が『ミカンが詰まった箱に腐ったミカンが一つ入っていると他のミカンも腐ってしまう』ということを『クラスに一人不良がいるとみんな悪い影響を受けてしまう』ことになぞらえて、金八先生のクラスの不良を指して言った言葉なのですが、であれば、当たり前の話ではありますが、うつ病の高校生は腐ったミカンではないということになります。

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そもそも不良も腐ったミカンではないということは作中でも示されている。人間だもの。

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Getty Images

さて、そんな不良ですが、彼らもまた不良となる原因の一つとして『孤独』や『虐待』が挙げられることが数多くあります。2014年に能年玲奈氏主演で映画化された、80年代の不良を描いた『ホットロード』の主人公の宮市和希も、片親である母親に愛されていないのではないかという不安を抱える孤独な少女でありました。

不良が必ずしもそのような家庭に育ったというわけではもちろんないでしょうが、何かしら和希の心境に呼応する人々がいたからこそ、作品の大ヒットに繋がったと考えてもさほどおかしなことはないでしょう。

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ホットロード

少女漫画ど真ん中の絵柄で死をも恐れないような暴走を繰り返す少年少女を描いた傑作少女漫画。絵柄のせいで作中の不良達はただの非常に繊細な少年少女に映り、主人公和希の威勢のよい言葉はとてもカッコ悪く、それゆえに読者の胸を打つ。

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©紡木たく/集英社

ところで、『腐ったミカン』の金八先生は放映開始1980年、ホットロードは連載開始1986年です。こういった不良を描いた作品は90年代へと向かうにつれ数を減らし、同様に社会問題としての『不良』は影を潜めますが、21世紀に入ってから社会問題は『ひきこもり』へと移ります。結局、これらの問題の源である『少年少女の孤独』は少しも改善されてこなかったことがうかがえます。

根本的な孤独の解消

今回の研究はこれらの問題の根本をとても簡単に改善する可能性を示唆します。ただ友達になればよいのです。

もし根本的な原因が同じであるのならば十代の少年少女は不良と友人になろうとひきこもりと友人になろうとうつ病にかかっている人と友人になろうと悪影響を受けることはありません。むしろ、互いに良い影響を及ぼしさえするのです。しかも、それは大人の手を借りることなく、子供だけでできることなのです。なんだか素晴らしいことのように思えます。

ですので、これを読んだ十代の方々は明日から休み時間になると必ず寝ているクラスメイトにできるだけ話しかけてあげてみてください。案外、気さくないい人かもしれません。保証はしかねますが。

REFERENCE:

Happiness spreads but depression doesn’t

Happiness spreads but depression doesn’t

http://www2.warwick.ac.uk/newsandevents/pressreleases/happiness_spreads_but/

CES-D(うつ病簡易評価尺度)|せせらぎメンタルクリニック

http://seseragi-mentalclinic.com/cesd.html

子どもの自殺予防のための取組に向けて(第1次報告)

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/kentoukai/houkoku/07050801/001.pdf