さっき食べたところなのに、なんだか小腹が空いた気がする。この時間に食べるのは良くない、わかっていたはずなのに気づいたら封が開いていた……。夜中に私たちを襲う『食の誘惑』には、なかなか勝つことができないものです。

If you can’t keep out your hand out of the biscuit tin on an evening, don’t feel guilty – it’s probably not your fault.

どうして夜中に限ってつい食べすぎてしまうのか? この大いなる疑問について真正面から検証したのが、ブリガム・ヤング大学のトラヴィス・マスターソン氏です。『食の誘惑』に私たちの脳はどのように反応しているのか、彼はMRIスキャンを用いて実験を行いました。

食欲の仕掛け

そもそも私たちの食欲は、大きくふたつに分けることができます。

ひとつは、お腹が空いて栄養分が不足してくると出てくる、いわゆる『普通の食欲』。これは、体の状態をベストコンディションに保とうとする「ホメオスタシス(恒常性)」という働きで起きています。

また私たちは、食事によって栄養のみならず快感を得ています。脳には「報酬系」と呼ばれる領域があり、何かを食べることでこの部分が活性化するのです。つまり、もうひとつの食欲とは、栄養や空腹とは別物の『快感のための食欲』です。

報酬系

食べて得られる快感は、食べ物を見つけるという行動につながる。個体の維持に必要なシステムである。

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センタン

つい夜中に食べすぎる現象を支えているのは、後者の『快感のための食欲』だといえるでしょう。

写真と食欲

トラヴィス氏の実験では、被験者は高カロリー食品(焼き菓子、アイス、ファーストフード等)と低カロリー食品(野菜、フルーツ、魚、穀物)の写真を合計で360枚見せられ、脳の活動をMRIスキャンで測定されています。

実験は1週間の間隔をあけて2回行われ、1回は午前中、もう1回は夕方以降に実施されました。どちらについても、被験者は実験の数時間前から食べ物を口にしないよう求められています。

実験の結果、時間帯を問わず、特に高カロリー食品の写真が脳の活動を活発にしたといいます。しかし、トラヴィス氏らの予想とは異なる結果が生じてきました。夜間には、どちらの種類の写真にも脳の反応が乏しくなったのです。

午前中に食べ物を見たときの脳の反応は、夜中のスナック菓子への反応より大きかった。

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しかし、その一方で、被験者の空腹・満腹の度合いが他の時間帯と同様であっても、彼らは夕方以降のほうが食べ物により強く惹かれていました。

この結果を受けて、トラヴィス氏は「夜に多く食べてしまうのは、少なくとも視覚的には、脳の報酬系が反応しないからかもしれない」と述べています。満足感を得たくて食べるにもかかわらず、食べても食べても昼間ほど満たされない……。こうした反応の結果、私たちはついつい夜中に食べすぎてしまっているのかもしれません。

ギャンブルやアルコール、ドラッグへの依存にもよく似ている。

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トラヴィス氏は、この実験はまだ途中段階であり、さらなる作業が必要だと認めています。次なる作業では、脳の反応が人々の食習慣や体重管理にどのような影響を及ぼすかを測定するといいます。

欲求不満にならないために

私たちに快感を与え、食欲を左右する「報酬系」。実はなかなかの曲者かもしれません。

オレゴン研究所のカイル・バーガー氏らによると、食べすぎる傾向のある人は、「報酬系」の活性化で得られる快感が少ない可能性があるといいます。

彼らは若者を対象に、食習慣についてのアンケートと、ミルクセーキの写真を見た場合・飲んだ場合の脳の活動の測定を行いました。すると、日頃からアイスクリームを頻繁に食べていた者は、ミルクセーキを飲んでも「報酬系」の反応が小さかったというのです。

美味しくても食べすぎ注意。

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求める快感に対して得られるものが小さいとき、『食べつづける』という現象が起きかねないことを、この実験は示唆しているといえるでしょう。では、ただでさえ脳の反応が小さくなる夜中に高カロリーの食べ物を摂る生活を続けていくと、一体どうなるのでしょうか……。

トラヴィス氏は、夜遅くに食べすぎないよう、「午前中に見た食べ物や広告を夕方以降に思い出しても、実際はそれほど満足できない」という事実について覚えておくように薦めています。また、身の回りの環境が自分自身にどんな影響を与えているかを自覚することが、習慣を変える第一歩だと述べてもいるのです。

結局は忍耐しかない?

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とはいえ、わかっていても我慢できないところが『食の誘惑』の一番厄介なところです。これを食べても満足できない、といくら自分に言い聞かせても、結局食欲は理性ではありません。どうしても困ったときは、いっそ早々に寝てしまうのはいかがでしょうか。食べるのがダメなら睡眠です。

最悪の事態

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REFERENCE:

Why we crave snacks at night: Brain doesn’t get same ‘high’ from food in the evening so we eat more to compensate

Why we crave snacks at night: Brain doesn’t get same ‘high’ from food in the evening so we eat more to compensate

http://www.dailymail.co.uk/health/article-3071195/Why-crave-snacks-night-Brain-doesn-t-high-food-evening-eat-compensate.html

Late-night snacking: Is it your brain’s fault?

http://news.byu.edu/archive15-may-nightsnacking.aspx

Blame the brain for late-night snacking

http://www.cbsnews.com/news/blame-the-brain-for-late-night-snacking/

BYU Study: MRI Shows Night Snack May Be Less Satisfying than Morning

http://kuer.org/post/byu-study-mri-shows-night-snack-may-be-less-satisfying-morning

第11回 生活のリズムをつくる脳の働き/自然科学研究機構 生理学研究所

http://www.nips.ac.jp/nipsquare/sknews/series/entry/2010/03/post-3.html

なぜ、食べるのを止められない?|くちにか内科クリニック

http://www.kunichika-naika.com/hitorigoto/2014/20141231282.html

肥満問題解消なるか?米国で進む食欲の研究

http://sankei.jp.msn.com/wired/news/120326/wir12032616060003-n1.htm