もし私たちが、ある日から耳が聞こえなくなったり、目が見えなくなったりしたら? これまで当たり前にできていたことができなくなる恐怖にとらわれ、ただただ運命を呪い、我が身の不幸を嘆いて過ごすでしょうか。それとも、運命に立ち向かい、前向きに生きていくでしょうか。ロンドンのサイエンス・ライター、フランク・スウェインさんは後者のタイプでした。

きっかけは補聴器

スウェインさんは20代の時から徐々に耳が聞こえなくなり、二年前から補聴器を使い始めるようになりました。はじめは大きなショックを受けましたが、同時に『聴こえること』の重要さについて考えるようになり、本来聴こえないものを聴こえるようにする新しい技術を作れないかと考え始めるようになりました。そんなスウェインさんが目をつけたのが『Wi-Fi』でした。彼は、サウンドデザイナーのダニエル・ジョーンズさんとタッグを組み、補聴器を通してwi-fiネットワークを音に変換するプロジェクト『ファントム・テラインズ』を開始しました。

見えないものを見て、聴こえないものを聴く

どのようにして、Wi-Fiネットワークを音に変換し、聴こえるようにするのでしょう。まず、ネットワークそれぞれのルータ名、データレート、暗号化モードなどに特定の音が割り当てられ、そのネットワーク固有のサウンドが構成されます。音色や音の長>さは、信号の強さや方向、ネットワークの名前、セキュリティレベルなどによって決められます。例えば、遠い信号はクリック音やポップ音のような短い音で、強いネットワークは長いループ音になるなど。このようにして構成された音が補聴器に送られ、音が聴こえるようになります。

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例えばこの3体は同機種だが、それぞれのSSIDによって違う音色が構成される。

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NEC

もう一つのサウンドスケープから

続いてスウェインさんらは、BBC放送局周辺を歩いた時に聴こえるネットワークのサウンドマップとオーディオファイルも作成しました。パチパチというつぶやくようなノイズ音の中にちらほら現れる電子音。心地よいスペーシーなアンビエントサウンドで、作業のBGMにも良いかもしれません。これが現実の音風景の裏側に広がる、もう一つの音風景なのです。

ターン・パイク・レーンの駅に近づき、地下に降りていくと、すっかり馴染みになったWi-Fiのガラガラ音が聴こえる

電車にのると、音は、ロンドン中心に導くトンネルに入っていくかのように、静寂へと弱まっていく

スウェインさんの言葉は詩的ですらあります。

「すごく奇妙なように思えるでしょうが、すぐに普通になりますよ」とも彼は言います。ファントム・テラインズは今は実験段階ですが、商品化するとしたら、たとえば、Wi-Fiスポットをわざわざ探さなくても、スマートフォンを持ち歩くだけで、飛んでいるWi-Fiの強さや属性を聴き分けられるようにするなど、色々な可能性を持っており、実現化するのはそう遠くないでしょう。

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こちらはBBC放送局周辺を歩いたときのWi-Fiサウンドマップ。下のラインはサウンドとともに推移するタイムライン。波形の幅は信号の強さ、波形の色は放送チャンネル、波形パターンはセキュリティモードをあらわしている。

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IGN

REFERENCE:

Daily Mail

Daily Mail

The man who HEARS Wi-Fi: Deaf man uses his hearing aid to listen to invisible networks
http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2832933/The-man-HEARS-Wi-Fi-Deaf-man-uses-hearing-aid-listen-invisible-networks.html

IGN

PHANTOM TERRAINS LETS YOU HEAR YOUR WI-FI
http://www.ign.com/articles/2014/11/13/phantom-terrains-lets-you-hear-your-wi-fi

phantom terrains

http://phantomterrains.com/