照明、ブルーレイディスク、信号機。私たちの生活に、もはや欠かせないものとなった青色LEDがさらなる応用性を見せるようです。

シンガポール大学の研究によって青色LEDが食品の保存に利用できる可能性が示唆されました。

Light emitting diodes (LEDs) with their antibacterial effect present a novel method for food preservation.

青色LEDは強い抗菌作用を持っていることがこれまでの研究によってわかっており、研究者はこの抗菌作用が最も働く温度と水素イオン濃度指数(pH)を調べ、その結果、ネズミチフス菌などの病原菌に対して4~15℃ほどの低温かつpH4.5ほどの弱酸性条件で最も効果が高いことを発見しました。

研究者は実際の食品にこれらの病原菌を入れた状態で青色LEDを照射し、食品に悪影響が起きないかを調べ、化学薬品を使用しない食品保存が可能かどうかを調べる予定とのことです。

なぜ青色LEDなのか

なんとも不思議な話です。というのも、青色の光、つまり波長460nm程度の光というのは通常の日光にも含まれているものだからです。青色の光が殺菌に作用するのなら、日光あるいは白色光によって細菌が死滅してもおかしくはないはずです。

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プリズムによる光の分散

白色光には様々な光が合成されてできているものだということがわかる。あるいは虹が日光の屈折によって起きるものだと考えれば日光に青色光が含まれていることがわかる。

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もう少し光の性質に着目して考えてみましょう。光のエネルギーに関与する要素は二つあります。光を構成する光子の量と、その質です。

光をぶつけて菌を殺してみる

RPG風に光で細菌を殺すことを考えてみましょう。一つの光子を自陣のキャラクターとして、1ターンでHP1000の細菌をいかに倒すかを考えてみようと思います。

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細菌を倒そう

1ターンと制限したのは光子を細菌に照射した場合、吸収、反射、あるいは透過のどれかが起き、再び細菌を狙って飛んでくる、ということはないためだ。

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簡単な方法は味方の数を増やすことです。たとえ一つの光子が与えるダメージが1でも、1000回攻撃すれば細菌は死にます。これが光子の量です。

この方法によって細菌が殺せるのならばどんな波長の光、たとえば赤色の光であろうと量さえあれば細菌を殺せそうです。そのように考えれば青色の光にことさら注目する理由はないように思えます。

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たくさんいれば勝てる。

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自陣の数を増やす以外に、攻撃力を上げる、という手もあります。光にはさまざまな波長のものがあり、可視光線でいえば赤、橙、黄、黄緑、緑、青緑、青、青紫、紫の順番に波長が短く、波長が短ければ短いほど光子一つ一つの持つエネルギーは高くなります。

簡単にエネルギーの高さが攻撃力に比例すると考えましょう。赤い光の波長を630nm、青い光を450nmとして、赤い光のダメージを1とすると青い光のダメージは1.4。赤い光が細菌を倒すのに1000体必要なのに対して青い光は約700体で倒せます。これが光の質、となるわけですが、青色光が大した威力を持っていないように見えます。

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一体一体が強ければ勝てるが。

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金銭的な問題か注目を集めるための『青色LED』か

エネルギーの量が単純に攻撃力に比例するか、というところに疑問はさまざまありますが、波長が可視光よりもさらに短くなった紫外線、あるいはX線などが大量に浴びることで皮膚がんなど人体にさまざまな影響を与えることから波長の短さ(エネルギーの高さ)がある程度、攻撃力に関わっていることは疑いようがないでしょう。それならば青色光ではなく紫外線やX線を照射した方が殺菌には適しているはずです。

それとも経済的に安価にするために青色LEDを使用するということでしょうか。しかし紫外線のLEDは既に開発されており、どちらを使おうともあまり経済的にそう変わりはないでしょう。あるいは人体や食物に影響を与えないために紫外線ではなく青色光を採用したのでしょうか。だとしても細菌を殺すほどの多量の青色光であればどちらにせよ人体や食物への影響は免れないように思えます。

なんとなく注目度を高めるためにノーベル賞を取った青色LEDの尻馬に乗った、という印象が拭えない研究ですが、実際にはそういうわけではなかったようです。

青色光に殺虫作用がある

2014年の東北大学の研究により、紫外線を照射しても死ぬことのない昆虫が、青色光に属する特定の波長の光を照射することで死滅させられることがわかりました。この発見はこれまで光のエネルギーと毒性、いわば攻撃力には関係があることがわかっていたため、日常にあふれている可視光で虫のような高等な生物が死ぬことは非常に大きな発見でした。

研究者はこれを虫の体内の物質が青色光を特異的に吸収し、多量の活性酸素を発生させることで細胞を傷付け死に至るのではないかと予測しています。

またしてもRPGに例えて見るのならば、この青色光はあたかも虫の『弱点』のように思えますが、事実はさらに奇妙な性質を示します。虫によっては日光に含まれる1/3程度の青色光で死滅させられたというのです。青色光『だけ』を照射することに意味があったのです。

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これをRPGで例えるのならば『青色光以外の攻撃は体力が回復する』『青色光によってステータス異常が起きて防御力が低下するが他の光を浴びるとステータス異常から回復する』だのといえるかもしれませんが、どれも適切とは言いがたく、ただ生物が示す奇妙な性質に感嘆する他ないでしょう。

その他、抗生物質が効かない細菌も青色光によって死滅することがわかっており、どうやら青色光は細菌や昆虫などを殺すにあたり、特権的な地位にあるようです。

なら青色光は危険では?

しかし、青色光が虫の生死に大きく関わるのだとしたら、人体への影響をどうしても考えてしまいます。青色光は目に悪いとされており、他にもスマホやテレビなどに含まれる青色光が睡眠障害を引き起こす一因にもなるといわれていますが、先日、京都大学の研究により、弱い青色光は眠気を誘うという研究も出ています。少なくとも青色光が一概に健康に害を及ぼすものというわけではないでしょう。

どちらにせよ、食物に青色LEDを照射することで悪影響が起きないかを調べるシンガポール大学の研究への関心が高まります。

REFERENCE:

Ghate, Vinayak, et al. “Enhancing the antibacterial effect of 461 and 521 nm light emitting diodes on selected foodborne pathogens in trypticase soy broth by acidic and alkaline pH conditions.” Food microbiology 48 (2015): 49-57.

Ghate, Vinayak, et al. “Enhancing the antibacterial effect of 461 and 521 nm light emitting diodes on selected foodborne pathogens in trypticase soy broth by acidic and alkaline pH conditions.” Food microbiology 48 (2015): 49-57.

青色光を当てると昆虫が死ぬことを発見(新たな害虫防除技術の開発に期待)

https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press_20141209_02web.pdf

『むしコラ』 青い光が虫を殺す

http://column.odokon.org/2015/0609_190700.php

耐性菌を作らない新たな MRSA 感染治療法 大阪市立大学

http://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2014/0pb825

プレスリリース | 世界最高出力(90mW超)の深紫外LEDの開発に成功 | NICT-情報通信研究機構

http://www.nict.go.jp/press/2015/04/01-2.html

青色LED、眠気誘う、京大など、弱い光で効果。 | ライティング・フェア

https://messe.nikkei.co.jp/lf/news/130932.html