イギリスの伝説的ロックバンド、レッド・ツェッペリンの代表曲『Stairway to Heaven(天国への階段)』が盗作であるという訴えが起こされ、アメリカでメンバーに対しての裁判が来月開かれることとなった。

レッド・ツェッペリンは1968年に結成されたイギリスのロックバンド。アルバムの売上は全世界で3億枚を超えており、ビートルズやローリング・ストーンズと並ぶ伝説的なロックバンドとして知られる。

そんなレッド・ツェッペリンの代表曲『天国への階段』のイントロが、アメリカのロックバンド、スピリットの楽曲の盗作ではないかとスピリットのギタリスト(故人)の遺産管財人に著作権侵害であるとレッド・ツェッペリンのボーカル、ロバート・プラント氏とギター、ジミー・ペイジ氏を相手に訴えを起こしていた。

ジミー・ペイジ氏はこの二曲の類似性について「半音ずつ下がる4つのコード進行は音楽ではごくごくありふれたものだ。」と主張してるが、裁判官は今月8日、「『天国への階段』の節回しはたしかに音楽業界では一般的なものだが、2つの曲の類似性はその域を超えている」として、来月10日にロバート・プラント氏とジミー・ペイジ氏に対する裁判を開くことが決まった。

スピリットが盗作されたとする楽曲は『Taurus(トーラス)』といい、ライブの際には必ずといっていいほど演奏する曲だったそうだ。レッド・ツェッペリンのメンバーは訴えを起こされて初めてこの曲を聴いたと言っているが、スピリットとレッド・ツェッペリンは1969年に同じツアーに参加しており、遺産管財人はこのツアーの際に『トーラス』を聴き『天国への階段』のイントロの着想を得たのではないかと主張している。

本当に似ているのか

さて、これは非常に衝撃的なニュースである。海外の音楽に明るくない人のために日本で例えるとB’zの楽曲が海外のバンドの盗作であったというくらい衝撃的なニュースである。しかし、ギターのジミー・ペイジ氏がNHK教育の『できるかな』のノッポさん役を務めた高見のっぽ氏に似ていることから『ジミー・ペイジはのっぽさんのパクリではないか』と一部ではささやかれている。このことからもジミー・ペイジ氏が『トーラス』のフレーズを拝借して『天国への階段』のイントロを作った可能性は否定出来ない。

実際、どの程度似ているものなのだろうか。実際に聴いてみるのがいいだろう。

Stairway to Heaven – Led Zeppelin

イントロが訴えを起こされている部分。

Taurus – Spirit

問題のフレーズは45秒あたりから。

たしかに似ていることは似ている。

ジミー・ペイジ氏は「ギターを習っている人なら誰でも学ぶ基本的なスキルだと思います」とも述べている。本当にその通りだと思った

和音を一音を鳴らすアルペジオはギターを弾き始めの中学生が必ずやると言って過言ではない。マイナーコードをとりあえずアルペジオで演奏してみて一人悦に浸り、そのうち飽きて人差し指のフレットを一つずらしてみると不思議と格好いい。ためしにもう一つずらしてみるとこれがまた格好が良い。さらにもう一つずらしてみると、これが意外と合わない。なので人差し指の位置はそのままに他のコードを適当に探して弾いてみると、おぉ、めちゃくちゃカッコいいぞ、となり、勢いで結成したバンド仲間にオリジナル曲として披露するのである。そこでちょっと音楽に詳しくて自ら「俺ベースやるわ」なんて言い出したちょっと渋い、しかも親がレコードを集めてるみたいな友人がこう言うのだ。

「それ、ツェッペリンじゃん」と。

ギターの少年はツェッペリンなんて知らないし聴いたこともないがツェッペリンなんて知らんなんて言うとバカにされそうで恥ずかしいので「あっ、おう、ツェッペリンだけどよ」とか言ってお茶を濁してその日は解散となり、家に帰ってネットでレッド・ツェッペリンを調べてみてその経歴に驚きつつどうやら『天国への階段』が自分のフレーズと似ていることに気付き、さらにそれが代表曲であることに気付いて『もしかして俺はジミー・ペイジの生まれ変わりなんじゃないか』などと淡い妄想を抱くのである。

ジミー・ペイジ氏は死んでいないのでもちろんこの中学生はジミー・ペイジ氏の生まれ変わりではない。少々長くなってしまったが、要するに本当にそれくらいありふれた類似性ということだ。実際、上記の話を読んで昔ギターを弾いたことのある人の中には淡い記憶を呼び覚まされ少し物憂い気分になっている人もいるだろう。たまたま最初の3音がDeep Purpleの『Smoke on the Water』そっくりとか。

guitar

さらに言っておくと『トーラス』のフレーズを弾くのは比較的簡単だが『天国への階段』は割と難しい。先の中学生は恐らく『天国への階段』を弾けないだろう。

image by

Guitar – Angela Quitoriano

これが著作権侵害であるならば、世の中のほとんどの音楽が著作権侵害になりかねない。winkの『淋しい熱帯魚』もCoo Cooの『Upside Down』の盗作に、倉木麻衣が先日発表したJR西日本のキャンペーンソング『Serendipity』もオリビア・ニュートン・ジョンの『Xanadu』の盗作になってしまう。なってもいいけど。

淋しい熱帯魚 – Wink

0:17あたりから。

Upside Down – Coo Coo

1:00あたりから。

Serendipity – 倉木麻衣

メロディが全体的に似ている。

Xanadu – Olivia Newton John

なお、Xanaduは『桃源郷』の用法で使われる言葉で、Serendipityは『思わぬものを偶然に発見する才能』を意味する。

『トーラス』と『天国への階段』は確かに似ている部分があるがジミー・ペイジ氏の言う通り「ギターを習っている人なら誰でも学ぶ基本的なスキル」と判断するのが妥当だろう。『トーラス』を作曲した故ランディ・ウルフ氏は生前「あいつらは俺の曲をマネして売れたくせに俺には一銭も払いやがらない」と述べていたそうだが、ランディ氏もこのフレーズが非常にありふれたものだということは当然わかっていたはずである。大方、ランディ氏の冗談を遺産管財人が真に受けたか、あるいは『もしかすると多額の和解金をもらえるかもしれない』と思ったかというところだろう。なお、裁判は陪審制で行われる予定だ。