もはや説明するまでもないスマートフォン。日本での普及率は全世帯の62.6%、20代に至っては83.7%を記録し、すっかり私たちの生活に定着しました。あれこれアプリをダウンロードして、より便利に、より使いやすく活用されている方も多いことでしょう。むろん、この動きは世界中で広がっているものです。

しかし、南カリフォルニア大学のUSC Viterbi School of Engineeringで助教授を務めるウィリアム・ハルフォンド氏は、いま『無料アプリ』の危険性を訴えています。

There’s no such thing as free—especially with smartphone apps, according to a new study.

“Ads in ‘free’ apps drain your phone’s battery faster, cause it to run slower, and use more data,” says William Halfond, co-corresponding author of the study.

まさに群雄割拠

世はアプリ戦国時代……そう形容しても大げさではないほど、スマートフォンでダウンロードできるアプリの数は増加の一途をたどっています。2014年末の時点で、AppleのApp Storeには約121万本、Google Playはそれをしのぐ約143万本のアプリが登録されているのです。両者がしのぎを削るなか、アプリ開発者のあいだでも激戦が起きているといえるでしょう。

アプリ数ではAndroidが優勢。

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多くの方が恩恵を受けているであろう『無料アプリ』ですが、もちろん多くは開発者の利益のために制作されているものです。アプリに広告が表示されるものなら、たとえば広告の表示回数やリンク先へのアクセス回数によって、開発者に収入が入るようになっています。ほかにも、アプリ内で課金が行われるものもあれば、企業が提供するものはそれ自体がひとつの広告になっていたりするのです。

『無料』がスマホに与える負荷

ウィリアム・ハルフォンド氏は、『無料アプリ』が私たちにもたらすデメリットを指摘しています。彼は広告付きアプリと広告のないアプリを比較することで、それぞれが私たちのスマートフォンに与える影響を調査したのです。

AppleのApp Store

無料アプリのランキング。

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DAILYTECH

たとえば広告付きの『無料アプリ』は、広告のないアプリに比べ約16%以上、最大で約33%早く電池を消耗するといいます。同じようにアプリを開いていても消耗の速度が大きく違う、その理由はスマートフォンのCPUにありました。

広告を表示するぶん、スマートフォンはそのCPUを余分に働かせています。広告のないアプリに比べ、CPUの使用時間は約48%以上長くなり、占有率も約56%以上高くなるのです。さらに、メモリの使用率も22%以上高くなるといいます。

また広告の多くは、表示のたびにダウンロードされる仕組みです。小さなデータとはいえ、そのぶん容量が多く必要になるほか、通信量は約79%以上増えるといいます。

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USC News

この研究は、アプリの開発者にも重要な示唆をもたらすものになりそうです。昨年、研究チームが人気のアプリ21種類を比較したところ、『無料アプリ』の特徴がユーザに与えるストレスと費用は、アプリの評価を平均0.003ほど低くしていた(5つ星評価)ことがわかりました。

将来的にウィリアム氏は、混戦を続けるアプリ業界に役立てるべく、『広告がある場合とない場合で、アプリはどのように受け入れられるか』を開発者が予測できるようなモデルを作り上げたいと考えているようです。

『無料』の代価

【只(ただ)より高いものはない】
ただで何かをもらうと、代わりに物事を頼まれたりお礼に費用がかかったりして、かえって高くつく。
デジタル大辞泉

さっき充電したばかりなのにもう電池が切れそう、なんだか動作の速度が遅い気がする……。

そんな『気づき』やストレスは、『無料アプリ』に私たちが支払う代価のひとつなのかもしれません。しかし、それが気に入らないという感情もよくわかります。

「動作重すぎ……」

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たとえば『無料アプリ』の広告を表示させない方法は、調べればすぐに出てくるほど簡単なものです。しかし、私たちが恩恵を受けているそのアプリの開発者は、『広告が表示されること』、広告収入で利益が得られることを前提にアプリを無料で提供しているはずです……。

しかし一方で、サービス提供側も『無料』に足元をすくわれることがあります。

2006年、ソフトバンクが「通話料0円、メール代0円」を謳った広告を展開したことに対して、公正取引委員会は『誤認性が高い』『表示の適正化が求められる』として警告を行いました。このとき、KDDIやNTTドコモ、ウィルコムも価格表示についての注意を受けています。

問題の広告と孫正義社長

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『無料』という言葉は時に甘く、また時に強いものです。その甘さに騙されることもあれば、その強さが武器になることもあり、しばしばさらなる欲望を駆り立てることすらあるでしょう。しかしそんな状況こそ、ユーザと提供者の両方が、実はその倫理性を問われているような気がします。『無料』を前にすると、なぜ「せめて誠実に……」という気持ちはうまく働かなくなるのでしょうか?

『無料アプリ』の使い方はもちろん自由ですから、ユーザーによって人それぞれだといえるでしょう。しかし、お金の代わりに大切な何かを支払ってしまわないよう、くれぐれも気をつけたいものです。

約1分でフル充電できるアルミニウム・イオン電池(左)

スタンフォード大学が発表。『無料アプリ』のストレスも激減しそう。

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YouTube

REFERENCE:

3 WAYS ‘FREE’ APPS CAN COST YOU

3 WAYS ‘FREE’ APPS CAN COST YOU

http://www.futurity.org/free-apps-smartphones-889932/

‘Free’ apps may not be so free after all: They take a big toll on your phone

http://news.usc.edu/79081/beware-of-an-ads-hidden-costs-in-free-mobile-apps/

若者のキーボード離れ加速 レポート・卒論でフリック入力も

http://www.news-postseven.com/archives/20141021_282954.html

なぜ「無料アプリ」が成り立つの? – いまさら聞けないiPhoneのなぜ

http://news.mynavi.jp/articles/2013/05/23/iphone_why61/

App Stores Growth Accelerates in 2014

http://blog.appfigures.com/app-stores-growth-accelerates-in-2014/

ソフトバンクモバイルに行政指導,“0円広告”で公取委

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20061212/256727/

New battery could reduce phone charging to just one minute

http://www.computerworld.com/article/2906495/new-battery-could-reduce-phone-charging-to-just-one-minute.html