プラスチックチューブとペットボトルを中心とするアナログな手法で生み出された、風の力で歩き回る人工生物『ストランド・ビースト』。オランダの彫刻家テオ・ヤンセン氏によって1990年から制作され始め、ドキュメンタリー映画が公開されたり、ビーストのミニチュア版が「大人の科学」で発売されるなど、世界中で人気を博しています。氏はこの24年間ずっとストランド・ビースト作りに没頭しており、改良を重ねながら何体も世に生み出してきました。

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ストランド・ビーストが誕生するまで

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Shift Build

ヤンセン氏がビースト作りに熱中するきっかけになったのは彼がライターだった時、オランダの海岸が波に浸食されつつあるという環境問題に対して「風で動くスケルトン生物が、砂を積み上げてくれればいい」と新聞で提案したことでした。その後しばらく何も手に付かなくなり、自身のアイデアを実現するべくDIYストアでプラスチックチューブを購入し、その『生物』を作り始めたのだそうです。けれど、作っているうちに砂を集めて積み上げるという当初の目的よりも、生物を進化させ、一個の生物として自律させるということに情熱が傾いていったのだそうです。

ペットボトルとチューブで神経システムを作る

海辺で自律して生きていくには、砂に足をとられず、波に呑まれないようにしなくてはなりません。足元が確かかどうか『知覚』するために、ヤンセン氏はビーストにペットボトルやチューブを使った神経システムを備え付けました。電力を使わずにそんな感覚システムを配備するなんてまるで奇跡のように思えますが、はじめはコンピュータで作ったアルゴリズムを基本として、その後はもっぱら自分の手と頭を使って開発を進めていっているようです。

その他にも、ヤンセン氏はビーストと共にありとあらゆる試行錯誤を重ねています。突然の波からすばやく逃げるために砂の上を滑るよう装着させたスキー、足元の砂が固いのかを知覚するために動く尻尾と鼻、空気をためるために回転するプラスチックの胃、風向きや風の強さ、引き潮の時間までわかるようにし、移動した距離が認識できるようにするなど、ペットボトルやチューブだけでそんなことまで可能なのかと耳を疑うようなことにまで挑戦し続けています。

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風を感じて元気に動くストランド・ビースト

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ビーストの『繁殖』

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MoCo Loco

3Dプリント技術が登場すると、ストランド・ビーストのミニバージョンもプリンティングされ始めました。ヤンセン氏はビーストを繁殖させることも夢でしたが、3Dプリントでたくさんの子どもたちが生み出され、公開したアルゴリズムを使って人々が作っていくことが、すなわち『繁殖』にあたるのだと彼は考えています。最新の挑戦は、ビーストの大移動。遠く離れた海岸まで歩いて行かせるために、歩いた距離を分かる機能を搭載しているそうです。自分が生きている間に、自律する生物を完成させなければと、氏は現在もたゆまず開発を進めているようです。

最新科学技術を搭載した無人自律走行する乗り物が登場しつつある一方、アナログのみの高度な機能を持ったストランド・ビーストが海辺で自律走行しているという図はなんとなく面白いものです。YouTubeでも様々な映像を見ることができます。背びれをはためかせ、しずしずとした歩みで浜辺を動く姿は、人の心を惹きつけずにはいられません。

REFERENCE:

dezeen

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“I try to make new forms of life,” says Strandbeests creator Theo Jansen
http://www.dezeen.com/2014/12/12/strandbeests-theo-jansen-interview-wind-powered-machines-new-species/