アルゼンチンの裁判所が、今年11月に訴えがあった『自由権』を認めるという判決を下しました。ただし、相手は動物園で飼育されていたメスのオランウータンに対してだったのです。

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『自由権』を認められたオランウータンのサンドラ29歳。

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BBC

オランウータンの『人権』を巡っての訴訟

今回の裁判は、もちろんオランウータンであるサンドラ本人が起こしたものではありません。動物の権利のために活動している弁護士の会『AFADA』が、ブエノスアイレス動物園に20年飼育されているサンドラの生活環境が『不当である』と主張したのです。彼らはアルゼンチンの法律ではサンドラは『物』ではなく『人』に近い存在であると言い、本来森林で暮らしている生き物である彼女がいま置かれている状況を『違法に拘留されている』として『人身保護令状』を請求、より良い環境に暮らせるようにすべきだと裁判を起こしました。

彼らはサンドラが、たびたび布を頭からかぶって来場者からの視線を避けるような行動を取っていることや、抑うつ状態が見受けられるとして、彼女がいまの環境に非常に強いストレスを感じているのだとしているようです。しかし、布をかぶっているのが本当に人々の視線から避けるためなのか、単なる日除けのためなのか、抑うつ状態と言っているがそれが実際にどのような状態をさしているのかはいささか疑問です。

とはいえ、2013年よりiPadを用いてオランウータンと人間が意思疎通を図る試みが行われており、Skypeやビデオチャットでの会話も夢ではないとされている例もあるので、人権がどこからどこまでを指すべきなのか考えさせられる余地もあります。

Orangutans use an iPad

iPadを使いこなす(?)オランウータン。

彼らが裁判所に要求したのは基本的人権のひとつである『自由権』。人は国家などの制約を受けず自由に考え自由に行動できるという権利ですが、人ではなくオランウータンである彼女にもその権利はあり、それを認めるべきだと主張したのです。彼らにとっては人と同様の権利をオランウータンも持てるという考えなのでしょうが、環境の改善をもしサンドラが訴えていたとしてもそこまでのことを要求していたかは不明です。

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AFADA公式サイト

2012年設立。非ヒト霊長類などの基本的な権利の主張が主な活動。弁護士や裁判所職員で構成されているので裁判には強そうだ。

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AFADA

判決は勝訴

これまでにもアルゼンチンではチンパンジーやゴリラに対しても同様の訴訟が起こされたことがありましたが、すべて棄却されてきました。ところが、今回の判決はサンドラの自由権を認めるというものでした。それほどまでにサンドラには目に見えて異常があったのか、それとも弁護側の腕が良かったためなのかは定かではありません。どれだけの異常が彼女の身に起こっていたのだとしても、人ではない彼女に『人権』を認めるのはかなり異例の判決です。

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霊長類に『人権』が与えられるようになる?

AFADAの弁護士ポール氏は今回の判決はサーカスや科学研究所などで不当に自由を奪われている他の大型類人猿に新たな道を開くと語っていますが、ブエノスアイレス動物園側は現在のところコメントを発表していません。控訴がされなければサンドラは20年住み慣れた動物園からブラジルの半野生自然保護区へと移送されることになるそうです。29歳にして長年世話をしてくれていた人々と別れ、ひとり遠く離れた場所へと移されることによって新たなストレスにさらされることがないのかが気がかりではあります。

この判決を皮切りに霊長類への『人権』を求める活動が活性化し、それが認められて権利団体が言うところの『ふさわしい場所』へと移住することが増えていけば、彼らの姿は動物園やサーカスなどこれまで見ることのできた場所から消えてしまうことになるかもしれません。けれど、人の手で育てられていた彼らにとってこれまでの暮らしから一部の人間が『ふさわしい』としている場所に移ることが本当に良いことなのかは彼ら自身にしかわからないかもしれません。

REFERENCE:

REUTERS

REUTERS

Captive orangutan has human right to freedom, Argentine court rules
http://www.reuters.com/article/2014/12/21/us-argentina-orangutan-idUSKBN0JZ0Q620141221