地球温暖化による海面上昇に対してインド洋の島嶼(しょ)国セーシェルが危機を覚えています。11月11日に行われた小島しょ国連合による首脳会議で、セーシェルのジェームズ・ミシェル大統領は「世界の島しょ国は一致団結して気候変動対策キャンペーンを実施する必要がある」と呼びかけました。

ミシェル大統領は、「世界はあまりにも、われわれをないがしろにすることが多すぎる。われわれはあまりにも、傍観者として扱われることが多すぎる」と語気を強め、「気候変動が避けられないものとして扱われることを、われわれは容認できない。海面上昇で島が失われることを、われわれは容認できない。自国の島々が上昇する海に没してしまうことを、われわれは容認できない」と続けた。

大統領が訴える危機

世界の島しょ国がないがしろにされているとは穏やかなものではありません。ミシェル大統領の訴えは島しょ国以外の国への怒りや反発を含んでいます。

島しょ国には海抜1m程度の国土も多く含まれています。ようやく机の高さに辿り着くくらいのなだらかな平地は、海面上昇が起こるとたやすく失われてしまいます。しかし実際のところ、水没するほどの海面上昇は起こるのでしょうか。

地球温暖化で国が水沈してしまう!?

海面上昇の予測

海面上昇については、地球温暖化による海水膨張および陸上氷河などが溶け落ちることにより引き起こされるとされています。実際に、20世紀には20cmの海面上昇が起きたと言われています。20cmならばさほどの脅威ではなかろうと思われるかもしれませんが、今世紀で更なる海面上昇が起こると予測されています。その代表的な予測報告書に、数年ごと発行される国連のIPCCのものがあります。

IPCCとは、地球温暖化に関する科学的研究成果の収集と編集を目的とした、各国政府関係者および学術専門家からなる政府間機構です。その報告書では数千人という世界中の専門家の科学的知見が集約され、国際的な政策に強い影響を与えています。今後の海面上昇については、2013年度の報告書に今世紀末までの95年間の上昇予測としてまとめられています。最も楽観的なシナリオでは0.3~1.7℃の気温上昇により海面が26~55cm上昇するとされ、逆に最も危機的とされるシナリオでは2.6~4.8℃の気温上昇により45~82cmもの海面上昇が予測されています。これはなだらかな平地を多方面に渡り飲み込んでしまう高さで、島しょ国の存亡に直接影響します。ミシェル大統領が危機を感じるのも無理はありません。

水没が危惧される国々

以下の国や地域は、ソロモン諸島の一部の火山島を除きほとんどが海抜5m以下です。

ナウル共和国全域
ニュージーランドのトケラウ島しょ群の三島
モルディブ共和国の8割から全域
キリバス共和国
マーシャル諸島共和国
ミクロネシア連邦のコスラエ島(州)
パプアニューギニアのカーテレット諸島
同国領ソロモン諸島の100余り島の一部
ツバル

メラネシア。伝統的なコア・メラネシアと呼ばれる部分は濃い緑色で、広域のメラネシアは薄い緑色で示されている。なお、小さな島が見やすいように薄い緑色の影をつけてある。 - wikipedia
沈没に瀕した島嶼国の多い地域であるメラネシアはパプアニューギニアとソロモン諸島を含んでいる。ソロモン諸島の東にはツバルがある。

これらの国でこれまで対策がなされてきました。キリバスなどの水没による国外脱出を余儀なくされた国では、どのような選択肢を国民に用意するか検討をすでに始めています。またツバルでは2002年7月からニュージーランドへの移民を開始し、「環境難民」であることを政府が国際的に訴えています。地球温暖化による国・地域・島の水没の問題はすでに差し迫っており、国際的に無視できない状況になっています。

地球温暖化の認識の違い

地球温暖化の問題についてはあらゆる国共通の問題のようであって、現実はそうなっていません。水没の危機をかかえている島しょ国をはじめとした発展途上国からしてみると、地球温暖化を引き起こしたのは先進国であり、我々は温暖化の被害を受けた国であるという認識を持っています。

大統領は先進国がおしすすめた経済発展に対する怒りや反発を表明しています。地球温暖化・海面上昇の実際上の被害の課題に取り組む以前に、我々が取り組まなければならない課題が大きく横たわっています。