米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究チームが、クマムシの遺伝子の17.5%近くが異種生命体に由来するものであることを発見した。

By sequencing these creatures’ genome, researchers from the University of North Carolina (UNC) at Chapel Hill were surprised to find that 17.5 per cent – nearly a fifth – of the genome came from foreign organisms.

『最強生物』クマムシ

クマムシといえば高温は151℃、低温であればほぼ絶対零度、X線、放射線にも耐える体を持ち、果ては宇宙空間でも10日間ほどであれば生存できる体長0.5mmという非常に小さな体ながら『最強生物』とも謳われる生物だ。

kumamushi

クマムシが上記のような『最強』な性質を持つのは後述の乾眠状態の時だけであり、乾眠に入っていない時は熱湯などでも普通に死ぬ。

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こういったクマムシの適応力の高さはどこからやってくるのだろうか。なぜクマムシだけがこれほどの高い適応力を持つのだろう。

その理由はクマムシが多種多様な生物の遺伝子を取り込んでいるからかもしれない。

遺伝子を取り込むクマムシ

クマムシは極度の乾燥状態に置かれると乾眠という一種の仮死状態のような形態に変化する。その際にクマムシは細胞内のグルコースを極度の乾燥下でも細胞を壊さずにいられるトレハロースに変えて極限状態を耐えているのだが、トレハロース内にあっても細胞核内のDNAにはいくつもの傷が付く。通常はDNAが二重らせん構造を持っているために再び水分が与えられた時に元通りに修復が行われるが、まれに水分と一緒に大型の分子も取り込んでしまうため、水と一緒に他の生物のDNAをクマムシが取り込んでしまうことがある。

こういった他の生物のDNAの取り込みはクマムシ以外の生物でも起きないわけではない。ブタ内在性レトロウイルスなどがそれにあたるが、このようなケースは非常に稀であり、クマムシの外来DNAが17.5%なのに対して他の生物が持つ外来DNAは1%にも満たない。

ブタ内在性レトロウイルスがブタにとって『好都合』な遺伝子だったためブタの体内に現在でも残っているように、現在生き残っているクマムシにとってもこれらの外来DNAは『好都合』なものであることが予想される。実際、細菌などの微生物の中にはクマムシほどではないにせよ高い耐久性を持った種が多数いる。クマムシが遺伝子を取り込んでいる生物の種類は2000種にも及ぶ。これらの種のDNAから『高温でも耐えうる機構』『低温でも耐えうる機構』『放射線にも耐えうる機構』などを備えた遺伝子を取り込んだことによってクマムシが今のような『最強生物』的な機能を備えたと考えてもさほどおかしな話ではない。

実際、研究者もこの『取り込み』によってクマムシが今のような機構を備えたと考えている。

DNA

遺伝子は長いスパンで相互作用が起きるので必ずしもこれほど簡単に『能力』が取り込めるわけではないが。

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いいとこどりの最強生物

この仮説が正しいとするならクマムシが他の生物の『いいとこどり』ができることを意味する。もちろん自然淘汰の結果によって、だが、ここではクマムシという『種』が自らの意志で取り込んでいると考えてみよう。

極限状態の乾眠状態から復活する度に他種の生物から『特別な能力』を有した遺伝子を取り込む。まるで死の淵から蘇るとパワーアップするサイヤ人や吸収能力を持つ魔人ブウのような存在のようではないか。私たちがクマムシを『最強生物』と呼ぶのはさほど見当違いな話ではないのかもしれない。

あるいは、別の見方をすればクマムシを『地球上の生物のDNAサンプルを取り込むカプセル』と見ることもできる。もちろんDNAの一部からは生物の全体像をつかむことはできないが『どのような特徴を持った生物がいるか』は大まかにつかむことはできるだろう。地球外に住む何者かが地球の生態を調べるためにクマムシを送り込んだ、と考えてみるのも面白い。宇宙空間でも生きられるというのも非常に示唆的だ。

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もちろんさすがにそんなことはありえないだろうが、それでも地球上のほとんどの生物が死に絶えた後に地球に訪れた宇宙人がこの星に住んでいた生き物の生態を調べるのに一番重宝するのは遺跡でも化石でもなく、極限状態でもなお生き残るクマムシに含まれる遺伝子かもしれない。

REFERENCE:

Tiny ‘water bears’ STEAL DNA from other species | Daily Mail Online