感情。誰もが持ち合わせている生きていく上でなくてはならないものです。しかし、感情は誰もが持っていますが感情の振れ幅は人それぞれです。映画を観たり本を読んだりしてすぐに泣いたり笑ったりする人もいれば特に何も感じないという人もいます。前者は感受性が豊かな人としてある意味で人より得な人生を送っているといえるかもしれませんが、あまりよいことばかりではありません。些細なことで傷ついてそれが長引いて授業や仕事に身が入らないということもあるでしょう。こんなに悲しみが続くなら感受性なんていらなかった、感情なんてない方がよかった、と思ったことがある方もいるかもしれません。そんな時は一体、誰を責めればいいのでしょう。感情を作った神様でしょうか、悲しい時にもいつもと同じように生きることを要請する社会でしょうか。もしかしたら、責められるべきはあなたのご両親かもしれません。

ブリティッシュコロンビア大学の研究により、物事をより悲観的に感じるかどうかは遺伝子が大きく関わることが発見されました。

Your genes may influence how sensitive you are to emotional information, according to new research by a UBC neuroscientist and psychology professor Rebecca Todd.

ADRA2bという遺伝子があります。この遺伝子はノルアドレナリン受容体を作るものなのですが、一部の人(研究では全被験者39人中21人)はこのADRA2bの一部が欠損した変異体を持っています。このADRA2bの変異体を持っている人と持っていない人にいくつかの画像を見せどのように感じるかを調査したところ、変異体を持っている人のほうがより強く感情を動かされていることがわかりました。

また変異体を持っている人は変異体を持っていない人より画像を見た時に活動する脳の部位が多かったようです。

変異体を持っている確率は民族性にかなり左右される。たとえば、ヨーロッパ圏の人間は半数近くが変異体を持っているが、ルワンダ人などは10%ほどしかこの変異体を持っていない。

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ノルアドレナリン

ノルアドレナリンは別名『怒りのホルモン』と呼ばれ、分泌されると覚醒を促し、身体を緊張・興奮状態にする、注意力や集中力、判断力、作業効率、長期記憶、学習能力や物事へのやる気・意欲を高めるなどの効果があります。変異体を持っている人は多くノルアドレナリンを受容しているわけですから、変異体を持たない人よりも色々と利点を得ているように思えます。嫌なことを人よりも強く嫌と感じる代わりにやる気や意欲が高まるのならそう悪いことではないかもしれません。

ですが、ノルアドレナリンの過剰な放出はその人の攻撃性も上げてしまいます。また、ノルアドレナリンが放出され続けるとそのうちノルアドレナリンが作ることができなくなり、それを埋めるためにさらに感受性が高まります。それによってさらに神経過敏になる上、ノルアドレナリンが枯渇すれば一転して意欲がなくなり無気力状態へと陥ってしまいます。感受性が豊かな人は長い間ストレスにさらされるとストレスをさらに強く感じて悪循環に陥りやすくなってしまうのです。

ノルアドレナリンを作るには牛乳や大豆を摂取するのがいいらしい。

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変異体を持っていれば芸術家になれる?

また、変異体を持つ人は感受性が豊かなだけでなく印象の強かった体験をよく覚えていることも明らかになっています。そのことから研究の筆頭著者であるレベッカ・トッド教授は『失われた時を求めて』の著者であるマルセル・プルーストがこの変異体を持った人だったのではないかと考えています。

言われてみると、作家や音楽家のような芸術家は感受性が豊かな人が多いような気がします。画家のフィンセント・ファン・ゴッホ氏は気性が非常に激しかったことが知られていますし、『ジムノペディ』や『ジュ・トゥ・ヴー』『グノシェンヌ』の作曲者として知られるエリック・サティは恋人へ半年の間に300通も送る情熱的な人物であったようです。記憶力が良いということでは、日本では漫画家の東村アキコ氏が『かくかくしかじか』にて絵を描く人の映像記憶の鮮明さについて触れています。

偉大な芸術家にはこの変異体を持っている人が多いのかもしれません。

ヴァランタン=ルイ=ジョルジュ=ウジェーヌ=マルセル・プルースト

彼の代表作『失われた時を求めて』がプルースト本人と思われる語り手がマドレーヌを食べたことから幼少時の記憶が蘇り、3000ページ以上ある原稿の大半を占める長い回想が始まることからトッド教授は彼が受容体を持った人間であることを考えた。

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マルセル・プルースト – Wikipedia

フィンセント・ファン・ゴッホ『包帯をしてパイプをくわえた自画像』

自分の耳を切り落としたといわれている。

東村アキコ『かくかくしかじか』

『海月姫』や『ママはテンパリスト』などで知られる漫画家、東村アキコによる自伝エッセイ漫画。美大を目指す主人公、『林明子』が絵画教室に通い始め『先生』と出会うことから物語が始まる。2015年、第8回マンガ大賞受賞作品

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©東村アキコ/集英社

ちなみに、ノルアドレナリンは心拍数を上げ脂肪を燃焼させやすくする効果もあります。ならば感受性が豊かな人はやせやすい体質にあるのではないかと思ってしまうのですが、どうやら変異体を持つ人は逆に基礎代謝率が変異体を持たない人よりも低いという研究結果が出ています。変異体を持つ人がやせるためにはどんどんノルアドレナリンを出す、つまりどんどん悲しい目に合わなければいけないようです。まさに『泣ける』話です。

泣きながら食べれば痩せれるかも。

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REFERENCE:

How your brain reacts to emotional information is influenced by your genes

How your brain reacts to emotional information is influenced by your genes

http://news.ubc.ca/2015/05/06/how-your-brain-reacts-to-emotional-information-is-influenced-by-your-genes/

Neurogenetic Variations in Norepinephrine Availability Enhance Perceptual Vividness

http://www.jneurosci.org/content/35/16/6506.short?sid=729f77e7-707d-4941-a9d9-bd41593036c0

ノルアドレナリン – 快適.Life

http://www.human-sb.com/noradrenalin/

失われた時を求めて – Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%B1%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%9F%E6%99%82%E3%82%92%E6%B1%82%E3%82%81%E3%81%A6

フィンセント・ファン・ゴッホ – Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B4%E3%83%83%E3%83%9B

かくかくしかじか_(漫画) – Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/かくかくしかじか_(漫画)

Alpha-2B adrenergic receptor – Wikipedia, the free encyclopedia

http://en.wikipedia.org/wiki/Alpha-2B_adrenergic_receptor

エリック・サティ – Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%86%E3%82%A3

Frontiers | Shared Neural Substrates of Emotionally Enhanced Perceptual and Mnemonic Vividness | Frontiers in Behavioral Neuroscience

http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fnbeh.2013.00040/full

α2B-Adrenergic Receptor Deletion Polymorphism Associates with Autonomic Nervous System Activity in Young Healthy Japanese: The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism: Vol 88, No 3

http://press.endocrine.org/doi/abs/10.1210/jc.2002-021190