フランスの裁判所が、『ある障害』を抱えているとして障害者手当の受給を訴えていた女性の申し立てを認め、3年間に月800ユーロ(約11万円)を支給することになりました。

A court in France has ruled that a woman can claim a disability allowance for an illness, which she claims is caused by exposure to electromagnetic radiation from man-made sources. Known as electromagnetic hypersensitivity (EHS), no scientific evidence exists for the condition described by the woman. She will receive €800 ($900, £590) a month for three years.

女性が訴えていた『電磁波過敏症』

今回、障害者手当が支給されることになった女性が訴えていた障害は、スウェーデンとスペインを除いて疾病として認められていない『電磁波過敏症(EHS)』でした。しかし、裁判所は女性への障害者手当は認めましたが、電磁波過敏症について疾病と認めるという判決を下したわけではありません。あくまでも女性の現在の生活が補助の必要な状況であるという部分のみを認めただけで、疾病そのものを認めたわけではありません。なにやらややこしい状況ですが、電磁波過敏症はなぜそんなにも『病気』として認められづらいのでしょう。

電磁波過敏症(でんじはかびんしょう、英: electromagnetic hypersensitivity [EHS] )または電磁場に起因する特発性環境不耐症(でんじばにきいんするとくはつせいかんきょうふたいしょう、英: idiopathic environmental intolerance attributed to electromagnetic fields [IEI-EMF] )とは、「ある程度の電磁波(=電磁場)に曝露すると、身体にさまざまな不調が現れる」とする疾病概念、心気症の一つであるとされ、健康を害する電磁場に曝されてる(という観念)事によって引き起こされると称されている症状、疾病を記述する用語である。「特発性」(idiopathic)とは原因不明であることを意味する。現状、明確に疾病概念は定まっていない。

電磁波過敏症は、Wi-Fiや携帯の電波などにさらされることによって心身に苦痛を受けることが特徴です。そのような理由から、今回の裁判の女性はフランス西武の山間で電化製品を自宅には全く置かず世捨て人のように暮らし、友人宅に行く際にはその家のあらゆる家電の電源を切ってもらわなければいけないというほど徹底した生活を送っています。電磁波過敏症を訴えている人々には以下のような症状が認められるとされています。

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ドラマ『Better Call Saul』

『Breaking Bad』に登場する弁護士ソウル・グッドマンを主人公としたスピンオフドラマ。この作品に登場するソウルの兄チャックが電磁波過敏症で隠遁生活を送っており、この症状への関心を増した。

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皮膚の症状
・チクチクした感覚
・灼熱感
・皮疹
・発赤
・ヒリヒリとした痛み

チクチクした感覚やヒリヒリした痛みというのは肌に電磁波があたっているためというようなイメージが浮かびますが、それ以外の症状として頭痛や疲労、精神的ストレスや睡眠障害など様々な症状が個々によって現れるようですが、これがはたして本当に電磁波の影響であるかは明確な判断はしがたいような気がします。何か別の疾病や障害によって引き起こされているものなのではないとも言い切れません。

さらに、電磁波過敏症には患者にとって有害である電磁波とそうでないものの区別が患者含め誰にもできないという特徴があります。つまり、『自分はいまアレルギーを起こす電磁波に晒されている』と感じれば、患者はそれが本当かどうかがわからなくても同様の症状を現してしまうことになります。こうなると、これは特定の電磁波が原因の疾病であるというよりも電磁波に対する恐怖が産んだ思い込みによるものと考えられるのも頷けますし、電磁波過敏症が疾病であると認可されるのが困難であることも理解できます。

けれど実際苦しんでいる

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この判決が電磁波過敏症の認可の突破口になるという声もありますが、今回の女性もあくまで『自称』電磁波過敏症患者と判断されています。疾病とは認められていないのに本人がそう訴えているだけで裁判所が障害者手当の支給を認めたのは奇妙な気がしますが、裁判所は彼女が実際の原因はなんであれ彼女の苦痛にのみ着目したのでしょう。疾病として認められていないからといって心身になんの問題もない健康状態であるとはならないということでしょう。実際に苦しんでいる人のために補助を出すということは良いと思いますが、この判決が電磁波過敏症の認可の突破口になるという声にはいささか疑問を覚えます。

今後、同様の症状から補助を求める人が現れた場合、医学的根拠に基づいた判決を下すために電磁波過敏症ではない別の病名が付けられてしまう可能性もあるでしょう。はたしてそれは彼らの望みにそったものなのでしょうか。

REFERENCE:

Woman Who Claims She Is “Allergic” To Wi-Fi Signals Given Compensation By French Court

Woman Who Claims She Is “Allergic” To Wi-Fi Signals Given Compensation By French Court

http://www.iflscience.com/woman-who-claims-she-allergic-wi-fi-signals-given-compensation-french-court

Court awards French woman disability allowance of €29,000 for ‘sensitivity to gadgets’

http://www.rt.com/news/313579-woman-disability-gadget-allergy/

French woman wins disability allowance for ‘gadget allergy’

http://www.english.rfi.fr/france/20150827-french-woman-wins-disability-allowance-gadget-allergy

電磁波過敏症 – Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E7%A3%81%E6%B3%A2%E9%81%8E%E6%95%8F%E7%97%87

二重盲検法 – Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E9%87%8D%E7%9B%B2%E6%A4%9C%E6%B3%95