よく、日本人は『休み下手』であるといわれます。非常に勤勉で、よく働く一方、いつどうやって休んだらいいかわからない……。日頃の行いを思い返してみましょう、もしかするとあなたもそうではありませんか? あえて言いますが、記者の私も『休み下手』のひとりです。もっとも、勤勉でよく働くかは別問題ですが。

『休み下手』の国民性を表しているかのように、日本人の有給休暇取得率は、世界と比べても著しく低いものになっています。厚生労働省によると、2013年の有給取得率は48.8%であり、この数字は世界でも1、2位を争う低さです。どうしてそんなに働くのか、なぜ休まないのか? もっとも、みな休みたくないわけではないはずです。

有給休暇取得率

ある調査では、2014年には世界最下位を脱したという結果に。喜んでる場合か?

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誰もが休みたいと思っているのに、誰もが休んでいない。もしもそんなバカバカしい状況が現実なのだとしたら、なんとか改めていかねばなりません。なんとか休みを取るために、休む必要があることを力強く説くために……。まずは、休まないことのリスクから確認していきましょう。

休まず健康、は可能か

『過労死』が社会問題となり、いまでも問題とされるように、「休まないのは身体に悪い」ことは疑うべくもありません。本当に休まないとどうなるか、想像することもさして難しくないでしょう。では具体的に、私たちの身体にはどのような影響が出るのでしょうか?

2012年にフィンランド労働衛生研究所がおこなった、労働時間と心臓疾患の関係についての研究によると、『休む』『休まない』どころではなく、1日8時間以上働いている者は、冠状動脈心疾患を発症するリスクが約40%高いといいます。労働時間のみならず、ストレスや睡眠不足、休暇不足も関係していると、研究者は推測しているようです。

冠状動脈心疾患

狭心症、心筋梗塞など。

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また、心血管疾患の原因を3世代にわたり調査する研究『フラミンガム・スタディ』(1948年〜)によれば、休暇を数年間取っていない男性は、心臓発作を起こす可能性が30%高かったようです。さらに、よく休む者ほど、うつ病に関連する経験をもたないという報告があるほか、認知科学の分野では、精神的に自由であるほど創造性を発揮でき、机をまえに長時間働いても頭は冴えなくなるといいます。

しかしながら、「休まなければ身体によくない」「心臓病のリスクが高まる」「うつ病になりやすくなる」「頭が冴えなくなる」といわれても、それは多くの人にとっては自明であって、いまさら言われるまでもないはずです。ときには仕事から離れて、身も心もきちんと休ませる……そのメリットも重要さも知っていながら、『それでも休まない』ということ。ここに問題があるはずなのです。

「まだ大丈夫、倒れてからが勝負だ……」

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なぜ休まないのか

Yahoo!による意識調査では、全体の38%が「有給休暇を取ることに罪悪感を感じる」と述べています。また、べつの調査によると、休むことを後ろめたく思う理由の第1位は『人手不足』だといい、「ほかの者が一生懸命働いているときに、自分だけ休むのは申し訳ない」という発想が強いといえそうです。

もちろん、休みを取らない理由はほかにもさまざま挙げられるでしょう。自分の責任があるから、いつ体調を崩すかわからないから……。しかしこれは、他者の視線を気にする性質や、「がんばることが美徳」とされる精神が大きな要因となっているはずです。まともに寝ていなかったり、まったく休んでいないことが、さも自慢のように語られるのも、おそらく同じ理由でしょう。

寝てください。

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©2014 地獄のミサワ

もっとも、『休まない』という選択だけが問題ではないでしょう。ノートパソコンの小型化・軽量化が進み、スマートフォンやタブレットが普及したことで、『仕事』をかんたんに持ち運べるようになったのです。その性質を利用して、時間も場所も選ばずに働くスタイルを選ぶ者もいる一方で、かつては持ち運ばなくてもよかった仕事が、いまや休みの日もついて回るという事態も起きています。

職場のメンバーによるLINEグループ

休みの日に仕事の連絡が来るのもつらい、仕事に関係ない連絡もスルーできないという無間地獄。

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『休む』という権利

休むのは後ろめたい、申し訳ない……。そう考えてしまうのが仕方なければ、少しでも『休む』ことのハードルを下げていくしかありません。

有給休暇は、正式名称を『年次有給休暇』といいます。勤続期間に応じて一定日数が与えられ、その範囲内であれば休んでも賃金が減額されることはありません。申請の理由は問われず、基本的にいつでも休むことができるという権利です。有給休暇には有効期限があり、発生から2年後に失効してしまいます。ちなみに、半年以上勤続した場合、アルバイトやパートといった非正規雇用者にも与えられるものです。

年次有給休暇の付与日数

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日本労働組合総連合会

有給休暇の申請を、雇用者側から拒否することは基本的にできません。ただし、申請通りに受け入れた場合、事業の運営がままならなくなるようであれば、有給取得の変更を指示する権利はあります。したがって、有給休暇とは労働者がいつでも確実に休めることを保証するものではありません。

もともと、有給休暇とは国から与えられているものであり、後ろめたくも申し訳なくもない、あくまで当然の権利として主張すべきものです。もちろん、仕事を進めるうえでは『配慮』は必要となるでしょう。しかし、この場合の『配慮』は、具体的な手続きによってなされるべきであって、感情的に諦めることが『配慮』ではありません。

『休む』ことは、言うまでもなくすべての人に必要なものです。自身の健康のために、広い意味での幸福のために、あるいは、ほかでもない仕事のために……。「時は金なり」という言葉もありますが、いわば『仕事をしない』時間は、『仕事をする』自分への投資といってもいいのかもしれません。いつ休むか、なんのために休むのか、どうやって休むのか……。綿密な計画と強い意志をもって、思い切って休んでみましょう。近々、記者もそうしてみようと思います。

あっ……。

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日経BP

REFERENCE:

Science says your body needs vacations, and here’s why

Science says your body needs vacations, and here’s why

http://www.sciencealert.com/your-body-needs-vacations-and-here-s-why

休めない?休まない? 大型連休に考える“日本人と休暇”

http://www.nhk.or.jp/fukayomi/maru/2014/140503.html

7年連続最下位に終止符!有給休暇国際比較調査2014

https://welove.expedia.co.jp/infographics/holiday-deprivation2014/

有休取得に罪悪感を感じる? – Yahoo!ニュース 意識調査

http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/other/13282/result

年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。|厚生労働省

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei06.html

有給休暇を取得する前に知っておきたい|有給取得の権利や基礎知識

https://employment.en-japan.com/tenshoku-daijiten/8936/