いきなり記者の私事で恐縮ですが、最近めっきり疲れが取れなくなってきました。学生時代は寝なくても平気だったのですが、いまや夜はぐっすり寝ないと翌日も動けたものではありません。あの頃の体力はどこに行ってしまったのか、そして、もう戻ってはこないのか……。

今回は、体力・頭脳・性欲という3つの切り口から『人生の最盛期』について考えます。記者の場合、おそらく体力の最盛期は過ぎてしまったように思うのですが、皆さんはいかがでしょうか?

Do you ever worry that the prime of your life has already passed you by – and it didn’t even have the courtesy to let you know as it flew overhead?
They say that life begins at 40, or that 60 is the new 50 – but what’s the truth? What’s the best age to be?

いろんな最盛期

体力

なんといっても身体あっての人生です。この世に生まれ落ちてから、死ぬその瞬間まで、この身体を脱ぎ捨てることは今のところできそうにありません。では、この身体はいつまで動くのでしょうか。まずは『体力の最盛期』を考えてみることにしましょう。

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『運動』にも、瞬発力を必要とするものと持久力を必要とするものがあります。たとえば100メートル走や砲丸投げ、槍投げなど、短時間にエネルギーを一気に放出する競技では、若い体力が求められるものです。そのピークは20代半ばで、30代に入るとその力は急速に衰えるといいます。サッカーも同様で、多くのプロ選手が第一線を早々に退くのは同じ理由かもしれません。

92歳女性、フルマラソンを完走

持久力勝負のスポーツは年長者も能力を発揮できる。

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頭脳

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私たちが『情報を記憶する』能力は、実は学生時代を終える頃から少しずつ衰えはじめるといいます。そして40代に入ると、短時間だけ情報を保持するワーキングメモリの能力が衰えはじめ、神経細胞が集まっている灰白質が小さくなっていくのです。こうしたことから創造性も失われていくといわれていますが、実際にノーベル賞を受賞した発明は、その多くが40歳前後のものだといいます。

しかし、頭脳の能力は『記憶』だけではありません。中年以降、新たな情報を記憶することは難しくなっていきますが、代わりに他の能力は向上していくのです。たとえば読解力・理解力・計算力は衰えず、さらに複雑な人間関係をうまく切り抜ける能力は、年長者こそ高くなるのも頷けるでしょう。

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性欲、そして

自分自身の性欲を意識して日々を暮らしている人がどれだけいるのかはさておき、性欲は想像通り20〜30代にピークを迎えるようです。しかも、50代までほとんど減少しないばかりか、それ以降も急激に減少することはないといいます。さすが三大欲求、というべきでしょうか……。

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しかし、とある研究によれば、性欲が低下し始める頃、人は人生への熱意を高めはじめるといいます。年をとるにつれて容赦なく与えられる身体的な限界によって、かつてあったような激情に身を委ねるのではなく、感情のバランスを取るようになっていくのかもしれません。

確かに、突然趣味に目覚める人も少なくなさそう。

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このように考えてみると、ものは言いようではありますが、体力・性欲のピークは20〜30代、脳の能力のピークは40〜50代、最も充実するのは60代以降である、とまとめることもできそうです。どの年代でも私たちは『最盛期』なのであって、『最盛期』とは順番に巡ってくるもの、今が『最盛期』だと思えなくてもきっと未来は……。

しかし、そんな結論には納得できません

学生時代に運動したくてもできなかった者、不遇な青春を送った者は諦めるべきなのか、脳の能力と人生経験を混同していいのか、充実するには老後を待たなければならないのか……。さまざま疑問は生まれますが、ひとつはどうしようもない個人差の問題です。『最盛期』にまったく『最盛』感を得られない事態を想像することは難しくないでしょう。

「今が最盛期だって聞いてたのに!」

何歳になっても思うかもしれない。

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そして、そもそも私たちはいつまで生きていられるのでしょうか。

たとえば日本でも、事件・事故・災害・不況などのさまざまな原因によって、自ら望まずとも多くの人が命を落としています。一方で世界のどこかでは、明らかに『人生の最盛期』を迎えていない人々が、戦争など過酷な社会状況下で、日々命を失っているでしょう。しかし、その事態は日本の歴史でもそう古いものではありませんし、今後も「ない」と言い切れるものではありません。

「生きていればやがて『最盛期』がやってくる」という考え方は、まずは未来が存在すること、そのときにも『最盛期』を支えるシステムが社会に存在することを、将来にわたって信頼することです。たとえば私たちは90歳を超えたとき、フルマラソンに出走したいと思えるでしょうか、その余裕は保証されているでしょうか……。

2015年6月8日現在。

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経済ジャーナリスト財部誠一

振り返ってみれば、すでに「あの頃が一番よかった」と思える時代があるかもしれません。しかし、残念ながら人間は若返ることはできず、だからといって、不確定な未来に無根拠な希望を託して生きていくことも、もはや現実的ではありません。

そこでできることは、『現在』と『少し先の未来』のそのつど、自身のパフォーマンスを最大限に発揮することくらいかもしれません。しかし、そうすることこそ、私たちが『人生の最盛期』を自分自身で理解する一番の方法だといってもいいでしょう。そうでもしなければ、おそらく私たちは、日々の生活のなかで『最盛期』を簡単に見過ごしていってしまうはずです。

「おじいちゃんはこの頃がピークだったよ……」

気づいたときにはすでに遅い。

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REFERENCE:

What’s the prime of your life?

What’s the prime of your life?

http://www.bbc.com/future/story/20150525-whats-the-prime-of-your-life

92歳がフルマラソン完走 米女性、7時間24分でゴール

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG02H14_S5A600C1CR0000/

「ワーキングメモリ」とは|児童・生徒のワーキングメモリと学習支援

http://home.hiroshima-u.ac.jp/hama8/working_memory.html

灰白質 – 脳科学辞典

https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E7%81%B0%E7%99%BD%E8%B3%AA