吸血鬼は有名なモンスターのひとつです。映画や小説、漫画など様々な作品にその姿を現しますが、それはあくまで空想上の存在。しかし、かつてはその存在は強く信じられ、死後、吸血鬼として蘇るのを防ぐための埋葬方法を取られたものもありました。ポーランドのドラフスコ村で発見された普通ではない埋葬をされた遺体をアメリカ、サウス・アラバマ州大学のレスリー・グレゴリカ氏が研究し、その成果を論文として発表しました。

However, a study by researchers of University of South Alabama, rubbished rumours that bodies buried with sickles across their neck at the Drawsko cemetery were vampires.

奇妙な埋葬をされた遺体たち

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ポーランドで、一般的でない埋葬方法に処された遺体がいくつも発見されました。ドラフスコ村では2008年から2012年の間に、通常なら収められているような副葬品がなく、首に鎌や石が置かれている遺体が6体発見されました。他にも2013年、グリヴィツェ付近の工場地帯で発見された4体の遺体は、頭部を切り落とされて足元に置かれていたそうです。発掘隊は、彼らが吸血鬼として死後復活すると思われ、それを防ぐためにこのような措置をされたのではないかと考えました。死んだ彼らが吸血鬼とならないように首を切り落としたり、首の間などに鎌を置き、蘇って起き上がろうとしたときはその鎌が肉を掻き切るようにしたり、衣類や自分の肉を食べて吸血鬼となるのを防ぐため石を置き顎が動かないようにしたのではとされたのです。何故彼らが吸血鬼として蘇ると思われ、それを防ぐための埋葬をされたのかを研究するためレスリー氏はドラフスコ村で発見された6体の遺体を調査しました。

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『吸血鬼』は地元の人々

レスリー氏は6体以外にも通常通りに埋葬されていた遺体60体も調査。歯のエナメル質で放射性ストロンチウムによる同位体分析を行った結果、普通ではない埋葬方法をされた遺体たちは外国人などのよそ者ではなく、普通に埋葬された人々と同様、その地方に住んでいた人々である可能性が高いと思われているそうです。見知らぬ人間ではなく、身近な親しい者であっても死後に吸血鬼になることがあると当時の人々は信じていたということになります。生前に罪を犯した者、神に反した者、事故死、自殺、葬儀に不備があった者など吸血鬼となる理由として伝えられているものは様々ですが、神の教えに従い、安らかな死を迎えられた者以外の人々がその対象とされる可能性は高かったようです。

The Villain

ウピオル

ポーランドで用いられていた吸血鬼の呼称。夜の大部分は眠っており、正午から真夜中まで起きているという、『吸血鬼=夜に活動するもの』というものとはいささか異なっている特徴がある。牙ではなく舌にある棘で人の血を吸うとされていた。死者がウピオルとなるのを防ぐためには杭を打ち込む、頭部を切り落とす以外にもうつ伏せに埋葬するなどもあった。

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コレラが彼らを吸血鬼にしたのか

レスリー氏は17世紀に流行したコレラが彼らを『吸血鬼』にしたのではないかと考えているそうです。コレラの世界的流行は1817年に始まり、世界中でその猛威をふるいましたが、それまではインドやアジアでその存在を知られているものでした。腹痛や発熱はなく、体温が34度台に下がり、数十回もの嘔吐を繰り返すなどによって急速に脱水症状が起こり皮膚が乾燥する、シワが増えるなど『コレラ顔貌』と呼ばれる老人のような顔になるなどが症状としてあります。コレラ流行初期に死亡した人々の感染症状や死亡の様子が未知のものであったため、吸血鬼となるのではと恐れられそれを防ぐための措置をして埋葬されたのではないかとレスリー氏は考えているようです。元気だった頃は若い青年だったはずが、老人のように様変わりし苦しみのたうつ姿は、知識のない人々にとっては恐怖の対象だったのでしょう。

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アントワーヌ・ヴィールツの『早すぎた埋葬』

コレラの流行は、その死亡率だけではなくコレラにかかった後、誤診により死亡したとみなされ生きたまま埋葬されてしまう恐怖をも人々に与えた。早すぎた埋葬を防ぐために様々な棺のアイデアが当時生み出された。棺の中で目を覚ました者が錯乱し、もがいた後に死亡した様子を墓を開いた後に発見した者は彼らが吸血鬼になって蘇ったのだと考えた。

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いまでは吸血鬼は空想上の生き物とされ、遺体に対するこのような行動はありえない思われそうですが、2004年ルーマニアで76歳で他界したペトラ・トーマンさんの遺体を遺族が掘り返し、心臓を抉り取るという事件がありました。遺族たちはペトラさんが吸血鬼だったと信じ、心臓をえぐり、身を守るためにその血を飲んだと供述しているようです。もちろん、現在の法律では彼らのした行動は犯罪です。死んだ後は身体をどうされようと死者にはわからないものですが、できることならば安らかに眠らせてもらいたいものです。もっとも、日本は火葬なのでその心配はなさそうですが。

REFERENCE:

IBTimes India

IBTimes India

Not Cross, Not Garlic; Polish Vampires Died of Cholera, Claims Study
http://www.ibtimes.co.in/not-cross-not-garlic-polish-vampires-died-cholera-claims-study-615414