インターネットでニュースサイトを見ていると時々『この問題が解けたらIQ150!』などといったタイトルの問題が流れてくる。そんなわけはないと思うのだがそういった問題を見るとついつい紙とペンを用意してしまう。今年もたくさんの『難問』が話題になった。今回はそれらをまとめて最後に簡単に解説を付けようと思う。

第一問

まずはオーストラリアのビクトリア州統一試験(VCE)で出題された数学の問題だ。

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50セント硬貨は12本の等しい辺と角で成り立っている。

2枚の50セント硬貨が図のように辺と辺とを隣り合わせた状態でテーブルの上に並べられているとき、θの角度はどれか。次のうちから選べ。

(a)12° (b)30° (c)36° (d)60° (e)72°

第二問

こちらはイギリスのGCSEという高校一年生が受ける全国統一試験問題。

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バッグの中にn個のアメ玉が入っており、そのうち6個はオレンジ色で、残りのアメは全て黄色である。

ハンナは、バッグから無作為にアメを1個取り出し食べた。そのあと彼女はもう1個、無作為にアメを取り出して食べた。この時、ハンナがオレンジ色のアメ玉を2個食べる確率は3分の1である。

(1)n^2 – n – 90 = 0 が成り立つことを示せ。(n^2はnの二乗)

第三問

続いてはベトナムの8歳児に向けた試験問題。出題した教師は数学や経済学の博士号保持者にこの問題を送って返事がなかったことを喜んでいるらしい(無視されたんだと思われる)。

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A puzzle for Vietnamese children. VN Express

図の空欄に1~9までの数字を1回ずつ入れて等式を完成させよ。(ただし『:』は『÷』、つまり除算を表す)

第四問

スコットランド資格当局の高校二年生向けの試験問題。日本でいえば高卒資格を取るための試験というところ。

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あるワニが川の対岸上流にいる獲物を追っている。

ワニは地上と水中で移動速度が異なる。図のようにxメートル上流にある対岸のある地点Pまで泳いだ時、獲物に淘汰するまでの移動時間が最小となる。

この所要時間Tは以下の等式によって求められる。

T(x)5√(36+x^2)+4(20-x)

(a) (i)ワニが地上を移動しなかった場合の所要時間を求めよ。
(ii)ワニの泳いだ距離が最短だった場合の所要時間を求めよ。

(b)これら両極端の2つの中間に所要時間が最小となるxの値が一つある。
  xの値を求め、獲物に辿り着くまでの最短所要時間を求めよ。

第五問

最後はジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構の小学5年生の問題とか。

1

アルバートとバーナードはシェリルと友だちになった。アルバートとバーナードはシェリルの誕生日を知りたがり彼女に尋ねた。シェリルはヒントとして10個の候補を教えてくれた。

5月15日、16日、19日
6月17日、18日
7月14日、16日
8月14日、15日、17日

それからシェリルはアルバートには正しい誕生した月だけをバーナードには正しい誕生した日だけを教えた。

アルバート「シェリルの誕生日がいつかわからない。でも僕はバーナードもわからないことを知っている」

バーナード「僕もわからなかった。でも今はわかる」

アルバート「今僕もわかった」

シェリルの誕生日はいつか答えよ。

以上の5問である。各問の解説を下に記載するが見る前にできれば自分で考えてみてもらいたい。

解説

第一問

この問題は最初に書いてある『50セント硬貨は12本の等しい辺と角で成り立っている』から50セント硬貨が正12角形であることがわかればすぐ解ける。
x角形の内角の和は180×(x-2)°なので12角形の内角の和は1800°で正12角形は全ての角が150°であることがわかる。するとθを除く正12角形と地面に囲まれた領域の角度の和が480°であることがわかる。この領域は5角形なので内角の和は540°ということでθ=60°となる。

150
210

愚直に解くとこんなところだろう。ちなみに正4n角形を隣り合わせた時のθの角度はθ=(180/n)°になる(はずだ)。算数が好きな人は自分で求めてみるといい。これでどんな4n角形の硬貨を隣り合わせた問題が出ても安心だ。ちなみにnを無限大に発散させれば正4n角形は円になるので10円硬貨同士を隣り合わせた時の隙間の角度は数学的には0°になる。

第二問

この問題は問題文が何を言ってるのかよくわからないだけで試しに解いてみると数学Aを履修してさえいればすぐにわかる。

ハンナが最初に取り出したアメがオレンジ色の確率は6/nだ。オレンジ色のアメを食べた後にもう一個アメを取り出す確率は5/(n-1)になる。つまり『(5×6)/(n(n-1))』がハンナがオレンジ色のアメを2個食べる確率になる。問題文でハンナがオレンジ色のアメを2個食べる確率は3分の1と言っているので(5×6)/(n(n-1))=1/3が成り立ち、この式を整理するとn^2-n-90=0になる。

これだけでも正解といえば正解だが一応この方程式を解くとn=10,-9となる。アメが全部でマイナス9個ということはありえないのでアメの数は全部で10個だ。というわけでもう一度問題文に立ち返り、n^2-n-90=0にn=10を代入して等式が成り立つか示してみる。当然だが等式は成り立つ。

一瞬ハンナがアメをノールックで食べたか否かで結果が変わるモンティ・ホール問題の一種かと疑ったがそんなことはなかった。残念だ。

第三問

この問題はあまり論理力を問われない愚直な解き方を要求されるのであまり面白くはない。ひとまずできることから始める。まずはグネグネした問題文を真っ直ぐの式にする。空欄ははじめから順にaからiを付けておく。

a + (13b/c) + d + 12e – f – 11 + (gh/i) – 10 = 66

この式を整理すると

a + d – f + (13b/c) + 12e +(gh/i) = 87

となる。あとは『さすがにb/cやgh/iは整数だろう』という予測に基づきcは1,2,3,4のどれかでiも5か7ではないだろう、あとeに9は入らないだろうと推測して適当に数字を当てはめていくしかない。記者は面倒くさいのでPerlでコードを書いて全組み合わせを試してみた。全組み合わせを試したところ正解は全部で128通りあった。aとd、gとhは交換しても問題ないので実質32通りと考えるべきだろう。90720通りのうち32通りが正解なので適当に当てはめてみて正解する確率は1/2835だ。1400回くらい試せば5割の確率で正解に辿り着ける。
(2015/12/28追記:解答は全部で136通りとの指摘があり再度計算し直してみたところたしかに136通りでした。申し訳ありません)

ほんの一例として答えを一つ提示しておく。最初の方程式にa=9,b=8,c=6,d=2,e=4,f=1,g=7,h=5,i=3を代入すると

9 + ((13×8)/6) + 2 + 12×4 – 1 – 11 + ((7×5)/3) – 10 = 66

となり、式を整理すると

9 + (104/6) + 2 + 48 – 1 – 11 + (35/3) – 10 = 66

から

37 + (52/3) + (35/3) = 66

37 + (87/3) = 66

37 + 29 = 66

と等式が成り立つ。誰もチャレンジしなさそうな分数の計算を取り入れた解にしておいた。

第四問

最初の二つの問はx=20でT=104、x=0でT=110が正解になる。

最後の問は式を微分してTが最小となるxを求めるだけだ。計算は面倒なのでしないがx=8でT=98が正解になる。いかにも普通の数学の問題という感じで面白くない。が、これをもう少し違う方法で解いている解説動画がある。

最後の問の微分の式も書いてあるので気になる人は見ると良いかもしれない。

解説の要旨は光が時間的に最短経路を通る性質に注目してワニを光になぞらえてスネルの法則という光が媒介を移る時の角度を出す公式を用いて解く、というものだ。なるほどたしかにこの法則を用いれば微分なんてものを使わずに解ける。

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しかしここで注意しておきたいのはこの問題が物理ではなく数学のテストで出されたものだということだ。数学の問題だと何か都合が悪いことがあるかというと大アリだ。光が常に最短経路を通るということを証明しなければならない。光が最短経路を通ることは既に証明されているが証明のためには経路積分を使う必要がある。そんなことをするくらいなら素直に微分をした方がマシだ。

というわけでもう少し微分を使わずに簡単で数学的な方法で解けないか考えてみた。が、頭の中でワニが非ユークリッド空間からユークリッド空間に移動したり無限のワニが互いを打ち消し合い始めたあたりで諦めた。一応、幾何光学についても少し調べたが最短光路を導くために偏微分を用いていたので微積分を使わずに最短光路を求めるのは少なくともメジャーな方法ではないらしい。スネルの法則そのものは非常に単純な式のため微積分が使う必要があるのはなんとも納得しがたい。どなたか知っている人は教えてくれるとありがたい。

第五問

この問題が今年の問題で一番論理力を問われた問題かもしれない。代わりに算数とは少し違うかもしれないが。

選択肢を見てみると14,15,16,17日はそれぞれ2回出現しているが18,19日は一度しか出てこない。シェリルがもしバーナードに18日か19日と教えればバーナードには一発で誕生日がわかる。

5月15日、16日、19日
6月17日、18日
7月14日、16日
8月14日、15日、17日

しかしアルバートはバーナードがわからないことを知っている。ということはシェリルの誕生日は一つしかない18日もしくは19日を含む5月か6月でないことがわかる。アルバートもこれで7月か8月のどちらかが誕生日だということがわかる。

5月15日、16日、19日
6月17日、18日
7月14日、16日
8月14日、15日、17日

なのでその時点でバーナードがわかったということはバーナードが教えられた14日ではないということだ。もしバーナードが教えられたのが14日だったなら7月14日か8月14日のどちらがシェリルの誕生日か絞れないからだ。

5月15日、16日、19日
6月17日、18日
7月14日、16日
8月14日、15日、17日

そこでバーナードが「わかった」と言うからにはバーナードが聞いた答えは15,16,17日のどれかになる。

5月15日、16日、19日
6月17日、18日
7月14日、16日
8月14日、15日、17日

さらにそれを聞いてアルバートがピンときたということはアルバートが教えられていた月は7月でシェリルの誕生日は7月16日ということになる。もしアルバートが教えられていた月が8月だったなら彼は候補を絞れないからだ。

5月15日、16日、19日
6月17日、18日
7月14日16日
8月14日、15日、17日

これだけのことを一瞬で考えられるアルバートとバーナードはかなり賢いように見えるかもしれないが、本人たちの立場になって考えると割と簡単にシェリルの誕生日がわかる。苦労するのは二人の会話を盗み聞きしている我々だけなのでシェリルは二人に意地悪をしたのではなく個人情報の漏洩を心配したのだと思われる。

現役で学生をしている人にはそこそこの応用力を試される良い問題で学生を既に終えた人には頭をなまらせないためのいい運動になったのではないかと思う。記者はこういう問題を見るとついつい解いてしまうタイプの人間なので来年もどんどん学生を困らせる問題が出てくると嬉しいと思う。

REFERENCE:

Can you solve the 50 cent maths exam question that is dividing the internet? – Telegraph

Can you solve the 50 cent maths exam question that is dividing the internet? – Telegraph

http://www.telegraph.co.uk/education/11971692/Can-you-solve-the-50-cent-maths-exam-question-that-is-dividing-the-internet.html

Hannah’s Sweets: the GCSE maths problem that had students going crazy with frustration – Telegraph

http://www.telegraph.co.uk/education/11652918/Students-vent-their-frustration-at-Edexcel-GCSE-maths-exam.html

Can you do the maths puzzle for Vietnamese eight-year-olds that has stumped parents and teachers? | Science | The Guardian

http://www.theguardian.com/science/alexs-adventures-in-numberland/2015/may/20/can-you-do-the-maths-puzzle-for-vietnamese-eight-year-olds-that-has-stumped-parents-and-teachers

Can you do the maths puzzle for Vietnamese eight-year-olds that has stumped parents and teachers? | Science | The Guardian

http://www.theguardian.com/science/alexs-adventures-in-numberland/2015/may/20/can-you-do-the-maths-puzzle-for-vietnamese-eight-year-olds-that-has-stumped-parents-and-teachers

When is Cheryl’s birthday? How to solve the maths problem that has stumped the world | Asia | News | The Independent

http://www.independent.co.uk/news/world/asia/singapore-maths-problem-can-you-solve-the-viral-maths-question-that-was-set-to-children-in-singapore-10173090.html