ノースカロライナ州のデューク大学の4年に渡る調査により、子供は敵意を向けられたと感じると攻撃的になることが明らかになりました。

In every ecological group, in those situations in which a child attributed hostile intent to a peer, that child was more likely to report that he or she would respond with reactive aggression than in situations when that same child attributed benign intent.

被害者意識は攻撃性を高める

調査期間は4年と非常に長いものですが、調査の対象範囲、対象数も9ヶ国12地域の1299人の子どもと非常に膨大な数になっています。さて、研究者はこれだけ大規模な対象者に対してどのような調査をおこなったのでしょう。

研究者は子供たちに10個の質問をしました。たとえば、

『あなたは友達に後ろから背中を押されて、水たまりの中に足を突っ込んでしまいました。さて、友達は敵意を持っておこなったでしょうか』

というようなものです。

もしかしたら友人はあいさつのために背中を押そうとして、ちょっと力加減を間違えてしまい強く押してしまっただけかもしれないし、単純にちょっとしたイタズラ心が働いて水たまりに足を突っ込ませてみたくなったのかもしれません。研究者が子供たちにした質問は、このような『わざとなのかどうか判別がしがたい行動』に関しての質問でした。

なじみのある日本語にするのならば『敵意がある』というよりは『わざとやったか』と言い換える方が適切かもしれない。

image by

Getty Images

加えて、研究者はそれぞれの質問の後に、もう一つ質問を加えます。

『もしそれをやられたら、あなたはどうしますか? やりかえしますか?』

この二つの質問をまとめると、以下のようなものになります。

『あなたは誰かに何か自分が不利益を被るようなイヤなことをされました。その誰かは敵意を持ってわざとあなたにそれをしたと思いますか? そして、それをされたら、あなたは反撃をしますか?』

子供たちの回答をまとめたところ、ある行動に対して『敵意がある』と判断した子供はそうでない子供に比べて平均して5倍以上が『反撃をする』と答えたことがわかりました。どうやら、自分が何かイヤなことをされた時に反撃するかどうかは、相手がわざとやった(と判断する)かどうかが大きく関わっているようです

しかし、これはあくまでも仮想実験でしかありません。頭の中では反撃をする、と答えても実際に行動に移すようなことはしない、ということも考えられます。そこで、研究者は質問をした子供たちのその後、実生活についても調べたところ、先の質問で相手が『敵意を持って行動した』と判断しがちな傾向にある子供、つまり被害者意識の強い子供はそうでない子供に比べて実生活においても攻撃的な行動を起こすことが多かったようです。

時代遅れな本能

実を言うとこの『被害者意識が強い子供は攻撃的になる』ということは既に実験により明らかになっていたことだったのですが、それはあくまで狭い範囲での調査に過ぎませんでした。今回の調査はその範囲を広げ、この性質が世界中の地域を問わず非常に広い範囲で見られるかどうかを調べたもののようです。結果は先ほどのとおり、全世界的に見られる傾向だったようです。

しかしなぜ、人は敵意を向けられていると感じると攻撃性が増すようになってしまうのでしょう。少し考えてみましょう。

今回の調査の対象は調査開始当時、8歳ほどの子供です。つまりこの傾向は成長と共に備わった後天的な気質ではなく先天的な、本能として備わっているものだと予想することができます。

たしかに、猿などの動物の立場になって考えてみれば、敵意を向けてきた相手を殺せばもう二度と敵意を向けられることもありませんし、場合によっては殺した相手の肉を食べることもできます。そう考えれば敵意を向けてきたと思われる相手に暴力で対抗するのは非常に有効な問題解決であるといえるでしょう。

問題は争いで解決

image by

Getty Images

しかし私たちは人間です。わざとでもないのにいちいち反撃をされていたらたまったものではありませんし、反撃をする人もあまり良い気分にはならないでしょう。

新たな『黄金律』を

この結果に対して本研究の筆頭著者であるケネス・ダッジ氏は『人にしてほしいことをあなたも人にしてあげなさい』という黄金律を持ち出し、新たな教育の方針を示しています。ケネス氏は「私たちはこれから、子供たちに『人にしてほしいことをあなたも人にしてあげなさい』だけではなく『人に向けてほしい気持ちを、あなたも人に向けなさい』とも教えた方が良いだろう。そうすれば彼らは今よりも、もっと温和に、もっと不安もなく、そしてより良き者になれるだろう」と述べました。

言い換えるのなら、ケネス氏のこの提案は、今までの教育が暴力に向かう心を留めるためのものだとしたら、暴力に向かう心そのものを生まないための教育だといえるでしょう。たしかに、そのように考えるようになれれば、自分も相手もストレスを感じることなく容易にお互いを許せるようになるかもしれません。

お互い悪気はなかった。

image by

Getty Images

しかし、本当に相手に敵意があった時はどうするのでしょう。何度、攻撃を受けても『この人はわざとやってるわけではないのだから』と笑ってやりすごすべきなのでしょうか。それとも相手に敵意があると判断して、反撃をするべきなのでしょうか。答えを出すのは難しそうですが、できる限り穏和に解決したいものです。

REFERENCE:

Hostile attributional bias and aggressive behavior in global context

Hostile attributional bias and aggressive behavior in global context

http://www.pnas.org/content/early/2015/07/08/1418572112.abstract

When kids expect hostility, they get hostile – Futurity

http://www.futurity.org/children-hostility-violence-960852/?utm_source=feedly&utm_medium=webfeeds