禁煙希望者の方々に朗報です。タバコを吸った時にニコチンが脳に届く前に破壊する酵素がアメリカのScripps Research Institute(TSRI)によって発見されました。研究者はこれを人間に使える薬剤として利用する予定です。

A new study from scientists at The Scripps Research Institute (TSRI) explores a bacterial enzyme that might be used as a drug candidate to help people quit smoking.

これまでの禁煙アイテム

これまでの禁煙用の薬やグッズというのはほとんどがタバコの代わりにニコチンを摂るものか、もしくは気休め程度にしかならないものでした。一応、ニコチンが脳に作用するのを阻害し、代わりにニコチン受容体を刺激しドーパミンを放出させる飲み薬もあるにはありますが、それも抑うつ・自殺念慮・自殺行為などの強烈な副作用を引き起こすもので、禁煙には『タバコを吸う習慣をなくし、摂取するニコチンの量を少しずつ減らす』という方法を取るのが一番よいとされてきました。

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禁煙ガム

禁煙ガム、あるいは禁煙パッチなどは、微量のニコチンが含まれており、それによって少しずつニコチンを減らしていき禁煙を進める。

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ニコレット 製品情報|禁煙をガムでサポート「ニコレット」ニコチンガム

今回、発見された酵素はたとえタバコを吸ったとしてもニコチンが脳に入る前に酵素が分解してしまうため、タバコを吸っても何の効果も得られなくなるという新しい薬剤が作られる可能性を示しています。

発見までおよそ30年

研究者は30年以上前からこのニコチンを分解する酵素を生み出すために研究を重ねていましたが、どうしてもその酵素を作りだすことはできませんでした。しかし最近、その酵素がタバコ畑の土中で発見されたそうです。研究者はこの酵素を『小さなパックマンのようなものだ』と述べています。

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タバコ畑

こうして見ると美味しそうだが、食べると間違いなく死ぬ。

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Getty Images

灯台下暗しと言うべきか、何故そこを最初に探さなかったんだ、と言いたくなるような発見場所ですが、ともあれ似たような研究をしていた研究者もいたはずなので、恐らく特定のタバコ畑にしか存在しなかったのでしょう。

効果のほどは

研究者はマウスの血清にタバコ一本分のニコチンを入れ酵素(それと酵素を活性化する幾つかの化学薬品)を放ち、ニコチンの量が半分に分解されるまでの時間を測定しました。その結果、通常であれば分解に2~3時間かかるところを9~15分程度まで短縮できることが確認されました。

しかし、薬として利用するのならば効果の持続性が気になるところです。たとえどれだけ効果があろうとも、一時間に一錠飲まなければいけないようなものだった場合、費用もバカになりませんし、見た目としては喫煙よりも危ない感じがしてしまいます。

研究者はこの酵素を36.7℃に保ってどの程度の時間、生き続けるか調べたところ三週間以上生き、おまけに酵素がニコチンを分解する時に有害物質が発生することはなかったことがわかり、持続性は申し分なく、ひとまずの副作用の心配もないことがわかりました。

研究者はこの結果に非常に満足し「これは新しい禁煙の方法となるだろう」と述べました。

本当に禁煙できるのか

しかしニコチンの効果が出る前にニコチンを破壊する酵素の発見そのものはその効果含め、脅威に値するものだと思うのですが、実際に禁煙に役立つかと問われるとやや疑問を感じざるを得ません。

というのも、ニコチンはかなりの即効性を持っており、摂取から10秒程度で脳に届くからです。

酵素がニコチン分子一つを分解するまでにどの程度の時間がかかるのかはわかりませんが、さすがに10秒でほとんどのニコチンを分解するのは不可能でしょう。むしろ、喫煙後の体内のニコチンの分解速度が速まる分だけ、喫煙ペースは上がってしまうような気がします

もし分解が10秒ほどでほとんど可能だったとしても、やはり禁煙に役立つかは微妙なところです。禁煙を望む人がこの薬を飲んだとしても、酵素が手助けしてくれるのはニコチンの分解、つまりタバコを吸った時の快感を抑えることだけで、タバコを吸いたいという気持ちを抑えてくれるわけではないからです。タバコの依存性にはニコチン以外にも『何か一仕事終えたらタバコを吸う』というような精神依存もその一つとなっているので、たとえニコチンの効果がないとわかっていても、どうしてもついつい吸ってしまいたくなるような、そんな気がします。

それと、やや恐ろしいのは禁煙するつもりのない人がこの薬を無理やり飲まされた時です。タバコを吸いたくてたまらなくてタバコを吸うのに、酵素が邪魔をしてちっともニコチンが頭に入ってこないし、ニコチンによって得られるドーパミンが出てこないからどんどんイライラが募るばかり、ということになりかねません。よかれと思ってかはわかりませんが、人間関係の終わりになりかねません。

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抗酒剤『シアナマイド』

このようなトラブルは既にアルコールへの耐性を弱くする抗酒剤でも起きている。本人に気付かれぬように抗酒剤を飲ませるのは人権侵害という向きもあり、もし禁煙させたい人がいたとしてもこの酵素を飲ませるのはやめた方がよさそうだ。

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アルコール依存症

結局のところ、禁煙に重要なのは本人の強い意志、ということでしょうか。

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喫煙は、あなたにとって心筋梗塞の危険性を高めます。

たばこの煙は、あなたの周りの人、特に乳幼児、子供、お年寄りなどの健康に悪影響を及ぼします。喫煙の際には、周りの人の迷惑にならないように注意しましょう。

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Getty Images

REFERENCE:

TSRI Chemists Report Nicotine-Chomping Bacteria May Hold Key to Anti-Smoking Therapy

TSRI Chemists Report Nicotine-Chomping Bacteria May Hold Key to Anti-Smoking Therapy

http://www.scripps.edu/news/press/2015/20150806janda.html

バレニクリン – Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%AC%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%B3

【森岡クリニック】第6章 抗酒剤と断酒補助剤

http://www.morioka-clinic.com/alcohol2-6.htm

ニコレット 製品情報|禁煙をガムでサポート「ニコレット」ニコチンガム

http://www.nicorette-j.com/product/