動物園には様々な動物がいます。シロクマやパンダはその中でも人気者ですが、もし小さな子どもに「シロクマとクマは違う生き物なの? パンダもクマなの?」と聞かれたらどう答えればいいでしょう。素朴なこの疑問、じつは研究者たちも一生懸命考えています。

It has been long known that polar bears are indeed bears, belonging to the Ursids, the family of mammals that include brown and black bears, as well as others such as sloth and spectacled bears.

同じクマからそれぞれの姿に分かれた

古代のクマの化石がほとんど見つかっていなかったため、クマ類については長い間分からないことがたくさんありました。パンダははたして本当にクマの仲間なのか、シロクマやヒグマたちはどのようにして今の姿になったのかなど。遺伝子の研究が盛んになり、ようやくこの問題にも糸口が見つかってきています。

くま2 image by

CRYPTOZOONEWS

それぞれの遺伝子を調べてみると次のようなことが分かってきました。

・パンダ、メガネグマは3800万年から800万年前に、はじめのクマの祖先から分離した。
・シロクマやヒグマはそれよりずっと後、65万年から13万年前に分離した。

くま3

クマ一例

左からナマケグマ(sloth)、メガネグマ(spectacle bear)、マレーグマ(sun bear)

image by

Bears Of The World

動物園のアイドルもクマの仲間

iStock_000006364974_Small image by

GettyImages

一般的に『パンダ』と呼ばれているジャイアントパンダは、現在は中国にしか生息していませんが、最古の化石と言われているものはスペインで発見されています。パンダの系統は長い間生物学者と古生物学者によって議論されてきましたが、分子データによってクマ類の生き物であると判明しました。愛くるしい姿で一日中竹ばかり食べているイメージですが、実は雑食で肉も食べることができる立派なクマの仲間なのです。

Red Panda

レッサーパンダ

同じパンダがついているが、こちらはクマ科ではなく『レッサーパンダ科』という独自の科に分けられている。実は発見されたのはジャイアントパンダよりもこちらのほうが早い。

image by

GettyImages

シロクマとヒグマ

シロクマとヒグマは、いったんは別種のクマとして分離しましたが、それで完結したわけではなく一部のシロクマとヒグマが再び交配し、混血のクマが生まれるということも起こりました。現存の一部のシロクマの母方の遺伝子は、今は絶滅してしまったアイルランドにかつて住んでいたヒグマのものと一致していることが分かっています。つまり、一部のシロクマの母方の祖先はヒグマだったということになります。4万年から2万年前、大規模な気候の変化によって北極の氷が融け、若いオスのシロクマが陸地にまでやってくるようになり、そこにいたヒグマのメスと交配して、新しい種が誕生したと考えられています。
逆に、ヒグマのほうもエサを求めて北極圏へやってくることがあり、何度か両者は混合を繰り返していたようです。北極圏から遠く離れたヒマラヤの山中でも、シロクマと共通するDNAを持つヒグマ『ヒマラヤン・レッド・ベア』が発見されました。

くま4

ヒマラヤン・レッド・ベア

イエティの毛として保存されていたものをDNA鑑定した結果、このクマの毛のDNAと一致したことからイエティの正体だと言われている。

image by

Dan Stolyarov – Licensed under Creative Commons Attribution-Share Alike 3.0-2.5-2.0-1.0

くま5

イエティ

ヒマラヤ山脈に住むと言われているUMA(未確認動物)。全身が毛に覆われ、直立歩行するとされる。1887年、イギリスのウォーデル大佐が足跡を発見したことで世界に知られるようになった。 – Wikipedia

image by

X図鑑

現在では、シロクマとヒグマはお互いまったく別々の生活をしており、両者が交流するということはほとんどないようですが、歴史を紐解いてみると、両者の間には実は密接な関係があったことが分かります。

シロクマとヒグマの混血児

2006年、ヒグマでもなくシロクマでもない新種のクマがカナダで発見されました。猟師が山で撃ったクマが、普通のヒグマと違う変わった個体だったので、調べてみると、シロクマとヒグマとの混血児であることが分かったのです。このクマの発見によって、シロクマとヒグマとは、現在でも交配可能であることが明らかになりました。
実は、シロクマとヒグマのハーフは、この個体以外にも17匹誕生しています。ただ、これらのクマは動物園で生まれたもので、シロクマとヒグマを同じ檻に入れることで交配が起こり、誕生したものです。
 

くま6

シロクマとヒグマのハーフ。体毛の色も半々。

image by

Stefan David – Licensed Under CC by 2.0

彼らは、親であるシロクマとヒグマの両方の特徴を半々に受け継いでいるようです。長い首はシロクマに似ているけれど、肩にあるコブ状の盛り上がりはヒグマに似ている。頭のサイズや形も両方の中間ぐらい。シロクマは、氷から足を守るために足裏が毛で覆われていますが、ヒグマにはほとんど毛が生えていません。ハーフの個体の足裏には、部分的に毛が生えていました。行動特徴は、シロクマのほうに似ているそうです。

環境の変化

シロクマとヒグマの交流は、流氷の移動などの環境の変化によって起こったので、再び大きな環境の変化が起これば、また両者の交流が起こり、新種のクマが誕生してくる可能性があると研究者たちは考えています。地球の温暖化によって流氷が溶ければ、シロクマが陸地へ流れついて、ヒグマとのハーフのクリーム色のクマがどんどん増えてくるかもしれません。クマの研究者たちにとっては興味深いかもしれませんが、そうしたクマが増えてきたとしたら、地球全体としては危機的な状態と言わざるを得ません。