父親がやせているか太っているかという情報は精子中の遺伝子に保存され、子供の食欲に影響を与えることがデンマークのコペンハーゲン大学の研究により判明した。

A study published December 3 in Cell Metabolism reveals that a man’s weight affects the heritable information contained in sperm.

太った人と痩せた人では遺伝子が違う

元々、親の食生活がその子供に影響を与えることは知られていることだった。スウェーデン北部のノールボッテン地区の住民を対象に行われた実験では少年時代に飽食を体験した子供、およびその孫は平均寿命が6年も短いという結果が出ている。逆に食糧不足の親の子は心血管系の病気や糖尿病のリスクが高い。

このようなことが起きるのは遺伝子の外側、『遺伝子のこの部分をよく使うように』といった遺伝子に付随する情報、エピジェネティクス的な遺伝によって起きるとされていた。実際、ラットや昆虫での実験では既にやせた個体と太った個体では遺伝子の『修飾』が違うことが確認されていた。

今回の研究はこの体重が及ぼす子への影響がヒトでもエピジェネティクス的な遺伝によるものかを確認したものだといえる。13人のやせた男性と10人の太った男性の精子を比較したところ、9000箇所以上も遺伝子の『修飾』に差異があることを発見した。もちろんこの中には肥満に関わる遺伝子も含まれている。

obesity image by

Getty Images

この研究は太った親の子供がなぜ太りやすいかという生物学的説明になると研究者は語っている。

太った親の子供は太りやすい?

ただ少し不可解な事実ではある。先も書いたように食糧不足を経験した親の子供は糖尿病に罹りやすいが、ラットの実験によればインスリンの分泌が低下するために起きているとされる。インスリンは肥満細胞と呼ばれることもあり、インスリンの過剰な分泌(もちろんそれだけの栄養があればだが)は肥満へと繋がる。だとしたら太っている親の子供はインスリンの分泌が少ないため逆に『太りにくい』と考えるのが自然だ。

別のラットの実験では低タンパクな食餌を与えられたラットの子供は脂質やコレステロールを合成する遺伝子発現が多いという結果が出ている。これもどちらかといえば『食糧が足りないから体に保存する機能を高める』という親の環境に適応するための遺伝のように見える。

obesrat image by

Getty Images

こうした結果を見ると太った親の子供は太りやすいよりも太りにくいように見える。ただ、エピジェネティクス的な遺伝がどの程度本来の遺伝情報に影響を与えるかはわかっていない(エピジェネティクス的な修飾ではなくDNAの塩基配列に記述された太りやすい性質の方が強いかもしれない)ため、一概にどちらということはできないのであろうが。

外科手術でやせても遺伝子は変わる

ともあれ、太った親の子供は太りやすい、あるいは糖尿病になりやすいかのどちらかが起きやすいことは確かのようだ。実験では外科手術によって脂肪を取り除いた男性も手術前と手術一年後で精子中の遺伝子の『修飾』が変化していることも明らかにされている。これは同一の人物の精子であろうと(たとえ手術であろうとも)やせれば遺伝子の『修飾』が変わる、ひいては自身の体調によって遺伝子の『修飾』が変わることを意味する。

paradox

しかしこの結果も『少年時代に飽食を体験した子供は平均寿命が短い』という実験結果と矛盾しているように映る。

image by

Getty Images

妊娠中の母親はアルコールや喫煙を禁止され、食事もなるべく気を遣うよう薦められる。この研究がたしかならば将来的に男性も女性の妊娠に先んじて体調管理を薦められるようになる社会が来るかもしれない。

REFERENCE:

Sperm carries information about dad’s weight | EurekAlert! Science News

Sperm carries information about dad’s weight | EurekAlert! Science News

http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-12/cp-sci112515.php

Obesity and Bariatric Surgery Drive Epigenetic Variation of Spermatozoa in Humans

http://www.cell.com/pb-assets/journals/research/cell-metabolism/on/cmet1935_r.pdf