近年は自動車などに替わりあまり見られることがなくなりましたが、紀元前からほんの数百年前まで、馬は乗り物や農耕の手伝いとして非常に多く利用され、人類と長い時間を共に歩んできました。長く付き合うにはやはりそれなりのわけがあるのでしょうか。サセックス大学の研究により、馬は非常に表情豊かな生き物であることがわかりました。その表情の数は、犬、さらには人間に非常に近い生き物、チンパンジーよりも多いようです。

Mammal communication researchers have shown that, like humans, horses use muscles underlying various facial features – including their nostrils, lips and eyes – to alter their facial expressions in a variety of social situations.

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表情の多さは人間らしさの証拠?

人間は怒り、悲しみ、恐れ、驚き、嫌悪、幸福感など、様々な感情を表情によって表すことができます。言語を使わないとはいえ、感情を視覚的に表して相手に伝えるという点で、表情は非言語的コミュニケーションの一つといえます。

言語を使わないとはいえ、他種への威嚇でもない限り表情は同種へ感情を伝えるものであり、そのため社会的な動物、とりわけ知能の高い動物ほど多くの表情を有していることが予想されます。また、人間に非常に近い遺伝子を持つチンパンジーの表情が非常に豊かなことから、これまで科学者は人間に近い種ほど表情が多いと考えていました。

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たしかに人間のようだ。

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チンパンジーよりも表情豊かな馬

しかし事実は違いました。Equine Facial Action Coding System (EquiFACS)という馬の表情を読み取る機械で馬の目や唇の動きなどを解析したところ、馬は17種もの表情を持っていることがわかりました。これに対してチンパンジーの表情の数は13、犬の表情は16種で、27種あるヒトには遠く及びませんが、馬は他の動物に比べて表情が豊かなことがわかりました。

これに関して研究者は馬は猫や犬などに比べて非常に目の良い動物なので、他の動物に比べて表情が発達したのだろう、と予想しています。

それぞれの表情と感情の関係はまだ明らかになっていないようで、研究者はこの関係を明らかにしていくつもりであると述べました。

馬は表情を豊かに『された』?

日常的に馬に触れている人にとってはもしかすれば『何を今さら』という話かもしれませんね。馬は豚や鶏などとは違い、食用というよりも仕事のパートナーという役割を果たしている動物です。数千年にも渡る長い間パートナーとしてやってこれたのは、馬が非常に表情豊かな動物だったからであるといえるでしょう。

しかし、少し穿った見方をするなら、逆に『馬は人間と長く付き合っていくために表情豊かに進化した』という可能性を考えることができます。

人間が馬を家畜として利用し始めたのは約6000年ほど前と言われています。6000年という時間は生物の進化というスパンで考えれば非常に短い時間でしかありません。しかし、人間の手が加わると話は少し変わってきます。

現在、私たちが食用として広く愛されているブタ、彼らは元々イノシシが家畜化として利用されてから『品種改良』されて現在のような姿になっています。もちろんブタは遺伝子を組み替えられたりしたわけではありません。イノシシを飼い、食用とするのに適した変異種を選んで繁殖をおこなわせた結果、今のような形になったのです。

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イノシシ

こんなおっかない生き物を飼おうと思った人の気が知れない。

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イノシシの家畜化とブタの誕生は世界各地で起きているのでヨーロッパに話を絞るのならば、イノシシを家畜とするようになったのは約8000年以上前といわれており、それが現在『ブタ』と分類されるような種が誕生したのは5000年ほど前とされています。つまり、人間が手を加えれば3000年程度の短い時間でイノシシの姿を大きく変えることが可能なのです。

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ブタ

もちろん、5000年前から今のような姿なわけではないだろうが。

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それならば、それが意識的におこなわれたかはともかくとして、人間に親しまれやすい個体、つまり表情を豊かに見せる馬が優先して子を残させられ今のようになった、ということも、ありえない話ではありません。

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犬の先祖はオオカミと言われている。オオカミも社会性のある動物で多くの表情があるが、先の研究者の仮説に基づけば目が悪い犬が馬とほとんど同じ数の表情があるのは考えづらい。犬の表情も、あるいは人間によって『進化』させられたものかもしれない。

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少々、家畜への愛情というものについて考えてしまうような話ではありましたが、結局、仮説は仮説であり、そもそもにして『現在』生きている私たちと馬との間に生まれる感情に進化の歴史は関係がありません。たとえばこのことから家畜化の倫理を問うなどということをしても全く意味のないことでしょう。

とはいえ、単純な知的好奇心として、私たちが家畜としているウマの近縁種、シマウマの表情にはどれだけのバリエーションがあるのか、一度調べてみてほしいものです。

REFERENCE:

Why the long face? Horses and humans share facial expressions : News and events : University of Sussex

Why the long face? Horses and humans share facial expressions : News and events : University of Sussex

http://www.sussex.ac.uk/newsandevents/?id=31416

ウマ – Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%9E

東京農業大学 イノシシがブタになるまで ドメスティケーションを探る

http://www.nodai.ac.jp/teacher/203448/2011/1.html

サイボクぶた博物館「ブタの起源」

http://www.saiboku.co.jp/museum/college/buta/kigen/index.html

ブタ – Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%82%BF