クモは益虫、と言われたところでやっぱり怖い。記者もその意見には全面的に賛同するし、実際に大きなクモには近づくことすらままならない。というか、だいたいのクモは大きいような気がする……が、どうやらそれは自分がクモを怖がっているからかもしれないという。

People who fear spiders tend to perceive these creepy-crawlies as larger than they actually are, a new study finds.

恐怖がサイズを大きくする

『怖がるほどクモが大きく見える』という仮説を立てたのは、イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学で脳科学・認知科学を研究するタリ・レイボヴィッチ氏とノガ・コーエン氏だ。

こんなことがあったという。ある日、ふたりがクモを見つけたとき、レイボヴィッチ氏はとても怖がって「大きなクモをどこかにやってくれ」とコーエン氏に頼んだのだ。しかし、そのときコーエン氏は奇妙に思った。なぜなら、そのクモはとても小さかったのである。同じクモを見ているはずなのに、どうしてこうも違って見えるのか……。

クモは大きい? 大きくない?

そこでふたりが考えた実験は、いわゆる『クモ恐怖症(アラクノフォビア)』の人々がクモの大きさをどう認識しているかを検証するものだった。事前にネゲヴ・ベン=グリオン大学の女子学生80名にアンケートが実施されており、その中からクモ恐怖症12名とクモを怖がらない13名が参加者に選ばれたという。

なぜ女子学生ばかりが……

男性に比べ女性のほうがクモ嫌いの可能性が高いため、と研究者はコメントしている。

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参加者はコンピュータに向かい、まずは鳥・蝶・クモの写真を何枚か見せられた。そのあと、それぞれの写真を快く感じたか不快に感じたか、またハエを0%として子羊を100%とした場合、それぞれのサイズは何%にあたると思うかを尋ねられている。その結果、すべての参加者がクモの写真を不快に感じていたらしい。そしてクモ恐怖症の学生だけが、クモを蝶よりも大きいと答えたというのだ。

鳥・蝶・クモ・ハエ・子羊

なんとなくチョイスが恣意的?

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ほかの虫なら影響なし?

では、この影響はクモ以外の虫の場合でも起こるのだろうか。レイボヴィッチ氏とコーエン氏は64名の女子学生を対象に、スズメバチ・カブトムシ・蝶・クモの写真で同じ実験に取り組んでいる。

その結果、カブトムシを怖がった者は実際よりもサイズを大きく判断した。理由は「カブトムシがゴキブリ嫌いを誘発するから」だという(ゴキブリを思わせるのか、見間違ってしまうのか……)。一方スズメバチを怖がった者は実際より大きく判断していない。すなわち、恐怖(不快感)がサイズの判断を狂わせるという現象はすべての虫に共通するものではないようだ。

スズメバチの怖さは『危険』でありクモの『不快感』とは異なるが、そのあたりの違いは今後明らかになるかもしれない。

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しかし、ひとつの疑問が生まれてくる。それは「恐怖がサイズの認識を狂わせるのか、それともサイズの認識が狂って恐怖が生まれるのか」ということだ。恐ろしいから脅威なのか、脅威だから恐ろしいのか? これからの研究はその疑問への答えを探すものとなり、それは結果として広く『恐怖症』の治療に役立つという。もはや、卵が先か鶏が先かという話のような気もするが……今後の展開に期待したいところだ。

REFERENCE:

Spiders Look Bigger If You’re Afraid of Them