Hulu、Netflix、Amazonプライムビデオ、dTV。動画配信サービスが低価格かつ豊富なラインナップを揃えるとともに、わざわざ『テレビ番組』を見る者は少なくなるといわれて久しい。しかしそれでも多くの人々はテレビを見ているし、その影響力は依然としてネットよりも強いだろう。むしろ時代とともに変わったのはテレビの『見かた』で、いまや多くの番組はわざわざ録画しなくとも後からオンデマンド配信で見ることができるし、いわゆるテレビでなくタブレットやスマートフォンで見ることもできる。

では、テレビが曜日や時間を限定して、わざわざリアルタイムでの放送をつづける意義はどこにあるのか? 人々がテレビを見るため『お茶の間』に集まるという時代はもう戻ってこないのか……。その突破口は、最新のテクノロジーを用いた『さわれるエンターテイメント』にあるのかもしれない。

But the bigger, more exciting challenge is how we can not only imitate what is happening on the screen, but also use smell, taste and touch in a way that’s not a novelty and enhances the emotional experience of a show, just as a soundtrack does.

そういうことではない。

image by

Getty Images

次世代エンタメのつくり方

現在のテレビ番組は、ドラマやバラエティその他ジャンルを問わず、視聴者の『視覚』と『聴覚』を刺激するエンターテイメントである。テレビに3D機能が付いて音響システムがいかに向上しても、現状そこから外れているものではない。では、今後のテレビは視聴者の感覚をいかに刺激していくべきか……。

イングランド・サセックス大学でインタラクション(相互作用)デザインを研究するマリアンナ・オブリスト氏によれば、その可能性は「映像のなかで起きていることを再現するだけでなく、匂いや味や触覚を用いて視聴者のエモーショナルな体験を向上させること」にあるという。

たとえば映画の場合、観客にこうした体験をもたらす試みはかなり進んでいる。『4DX』『MX4D』と呼ばれる形式の上映(いわゆる4D映画)では、座席が揺れ水しぶきが飛び、風や煙が噴き出し、また香りもするなどさまざまな効果が用いられているのだ。すでに話題作にも続々導入されているため、体験したことがあるという人も少なくないだろう。

もはやアトラクション

味覚を導入した例もあるが、いまだ一般的ではない。

image by

humhug.net

しかしテレビの場合、ここまで多彩な効果を用いた番組の制作は難しい。そもそも基本はお金を払って見るものではないうえに、特別なシステムが各家庭に普及するのも考えづらいだろう。バーチャルリアリティ技術を導入するハードルも下がりつつあるとはいえ、こちらもまだ普及には時間がかかりそうだ。すなわち、テレビはそれら以上に簡単に視聴者の感覚に訴えかけなければならないのである。そこでマリアンナ・オブリスト氏がポイントとして考えたのが『触覚』だった。

そこにないものに触れるデバイス

マリアンナ氏はいま、イングランドに拠点を構える“Ultrahaptics”社の触覚デバイスに注目している。手をかざすことで、空中の『そこにないもの』に触ることができるというものだ。超音波のビームを手に当てることで、さも何かに触れているかのような錯覚を感じるという仕組みである。また、緻密にデザインされた『そこにないもの』はあらゆる形やサイズに対応するものになるという。

下の黒いものが本体。『手動』でブロック崩しを操作しているところ。

image by

YouTube

たとえばこの場合、下からミストが噴き出しているのを感じるという。

image by

YouTube

マリアンナ氏いわく『そこにないものに触れる』ことは人の感情にも影響するという。すでに研究では『そこにないもの』の刺激と人間の部位には特定の関係があることがわかっている。たとえば親指と人差し指および手のひらの中央に短く強い風を与えると人は興奮し、小指周辺や手のひらの外側にゆるやかな刺激を与えると悲しくなるのだ。では、もしもそこにない水が手に滴ったり、そこにない風を感じられたら……。このデバイスがテレビを見ることに導入されたとき、お茶の間には新たな体験が生まれることになるだろう。もっともこれが家庭に普及するかどうかは疑問だが。

サセックス大学のコンピュータ・ヒューマン・インタラクションラボは、味や匂いと触覚についての研究を5年計画で始動させている。“The SenseX project”と名づけられたこのプロジェクトでは、豊かなインタラクティブ体験のため、どのように感覚への刺激を統合するのか、また実際どのようにデザインするのか、そのガイドラインと開発ツールを提供することが目指されるという。テレビの常識が変わる日も、そう遠くはなさそうである。

REFERENCE:

The future of TV? How feely-vision could tickle all our senses

The future of TV? How feely-vision could tickle all our senses

http://theconversation.com/the-future-of-tv-how-feely-vision-could-tickle-all-our-senses-54059

Ultrahaptics

http://ultrahaptics.com/