日本でも世界でも多くの犯罪の取り締まりがなされていますが、それはもちろんのこと未然に防ぐのも警察の重要な仕事です。『プリコブス(Precobs)』という犯罪予測装置の導入がドイツベルリン警察によって検討されていますが、この装置は果たして有効な取り締まり装置になるのでしょうか。

個人データ集積を元に犯罪予測する装置

この『プリコブス』とは、様々なデータを元に未来に起きる犯罪の時期と場所を特定するコンピュータソフトウェアであり予測装置です。

その名称はSF映画『マイノリティ・レポート』に出てくる『プリコグ』を意識して命名し、その能力は過去の犯行場所や時刻をはじめとした様々の詳細なデータを集積して解析し、地域と時間を特定した未来の犯罪の可能性を計上します。どう現場に侵入したかや何が犯行に用いられたといったデータを過去から現在まで集積する機能をもち、また都市構造・交通インフラ・気象データといった外部からの大規模なデータを自由に利用する機能をもっています。

エリアを分けて犯罪の可能性を計上できるので、局地的な予測に対応してピンポイントに防犯ができます。またテストでは強盗などに関する住居侵入の予測があげられていますが、全ての犯罪予測に有効であるとされています。

映画『マイノリティ・レポート』

犯罪予知が実現した社会を描いた。『プリコグ』は3人の犯罪予知能力者で構成された犯罪予知システムだった。

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マイノリティ・レポート公式

犯罪予測装置をつくった研究所、SFの世界が現実に

犯罪予測についてこれまでは主にベテラン刑事による努力の集積によってなされてきましたが、ここ最近になってコンピュータによる過去の犯罪データを集積した、それに基づく未来の犯行の場所と時期を予測する努力が行われるようになり、結果今回の『プリコブス』が開発されることになりました。研究開発は『パターンに基づく予測技術研究所(IfmPT)』が行い、これは社会学の博士を始めとしてIT専門家の協力と犯罪学・社会地理学のコンピュータ科学を集積した研究開発の会社となっています。

プリコブス公式ロゴ

先述の通りマイノリティ・レポートのプリコグを意識した名称だが、Pre-Crime Observation System(事前犯罪予防監視システム)を短縮した名称ともなっている。

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IfmPt

政府関係者から効果について有望とされ、バイエルン州内務大臣のヨアヒム・ヘアマン氏が中間報告書の中でそう語っています。同州警察では導入についてテストの結果次第検討するとしつつ、ミュンヘンとニュルンベルクといった複数都市での数週間の強盗を未然に防ぐための検証で最大30%の減少が確認できたとして導入に前向きの姿勢を示しています。

プリコブス以前にもプリポル(Prepol)という犯罪予測装置があり、性能は劣るとされていますが、こちらも検証データから有効であることを示しています。

プリポル(Predpol)による5ヶ月間の犯罪件数減少を表したグラフ

プリコブスより性能の落ちるとされるバージョン。これはアメリカサンタクルスおよびロサンゼルスで検証された。グラフ横軸は月日を示し、縦軸は一日の犯罪件数を示している。2012年までの記録になるが、前年犯罪数の増加に対し導入以後1月から件数の減少が確認できる。前年比も早い段階から減少している。

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TeckDart

これが実現すると犯罪に関わるデータをより多く集積しようとされることが予想され、際限ない利用が起き個人情報にまで及ぶのではという、例えば犯行者やその身内だけでなく多くの関係者のデータが集積されるうることや、外部の大量のデータに個人情報も含まれてしまうのではといった可能性が懸念されます。既にドイツでは日刊紙で人権活動家が匿名データでなく個人情報として用いられる恐れがあると表明されています。個人情報は守られるべきですが、有用性からドイツに限らず大量データをコンピュータ解析する犯罪予測装置が導入されてゆく可能性は高いでしょう。