もしも月面に自分の持っている『何か』を送ることができるとしたら、一体なにを選ぶだろうか? これまで人類は、幾度となく自らの文明を宇宙空間に打ち上げてきた。パイオニア探査機の金属板、ボイジャーのゴールデンレコード……。これらは、いつか誰かに開封されることを待ちながら今もどこかを漂っている。

今年2016年、その最新版ともいうべきプロジェクトによって、カプセル『MoonArk』がいよいよ宇宙に打ち上げられる。今度のものは宇宙を漂うのではなく、月面にとどまり続けるという。

The MoonArk is a sort of eight-inch-tall portrait of humanity, with more than 200 artists and designers contributing to it.

月面に芸術を

この計画は、ピッツバーグのロボット企業“Astrobotic”社とカーネギーメロン大学芸術学部による“The Moon Arts Project”により2008年に始動した。『月面に芸術を送り込む』というテーマで始まったこのプロジェクトは、いよいよ今年2016年に実を結ぶ予定である。

プロジェクト・チームが開発してきたのは『MoonArk』と名づけられたカプセルだ。その内部にはアート・建築・デザイン・音楽・演劇・バレエ・詩というあらゆる芸術と人文科学を代表する要素が詰め込まれるほか、ナノ・ミクロの極小サイズからアンドロメダ銀河への電波送信という極大サイズまで幅広いスケールをカバーする最新鋭の科学・工学・技術・材料工学が用いられているという。はっきりいって荒唐無稽である。

まさにコミック顔負けのプロジェクト……だが、これも構想図のひとつ。

image by

The Moon Art Project

カプセルの構造

それゆえ『MoonArk』の開発には大変な労力が必要とされた。歴史的にも現代的にも意義深いデザイン、月面まで約384,400kmの旅に耐えられる構造、そして月面で数百万年から数十億年という時間を過ごせる耐久性を兼ね備えている必要があったのだ。しかもその重量は約170グラム以下でなくてはならなかった。しかしプロジェクト・チームは、3年以上の時間をかけてこのカプセルを完成させている。

『MoonArk』の外面は五角形、その内部は4つの部分に分かれている。それぞれ『地球』『メタスフィア』『月』『エーテル』と名づけられた各部分に、プラチナ・エッチングのディスクや生物学サンプル、マイクロチップなどが収められているのだ。チームはこのカプセルを、タイムカプセルとして、そしてこの時代の人類をあらゆる側面から語りうる『文化遺産』として捉えている。

『MoonArk』

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Smithsonian

で、何が入ってるの?

このプロジェクトに参加したアーティストやデザイナーは200人を超えるという。巨大なものが入るようなカプセルではないものの、工夫の凝らされた作品が数百点以上入ることになるだろう。

カーネギーメロン大学教授でプロジェクトリーダーのローリー・バージェス氏は、ある『赤い液体』をカプセルに入れる予定だ。それはプロジェクトに参加したアーティスト33人の血液を混合したもので、なかには有名な人物のものも含まれているらしい(名前は明かされていない)。また彼は世界の河川から集めた水を混合したものも提供する予定だという。

プラチナで加工したサファイアのディスク

地球の生物多様性を表すイラストが描かれている。『MoonArk』の『地球』部分に格納予定。

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NPR

写真家ディラン・ヴィトン氏の作品『エレインへのメッセージ』

妻エレインさんとの5年間に及ぶメッセージのやり取りと、個人的に送った写真の数々が収められている。『メタスフィア』部分に格納予定。

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NPR

もはや、それ自体がひとつのアート作品のような性質を持つ『MoonArk』、その打ち上げはいよいよ年内に迫っている。果たしてプロジェクトは無事に成功するのだろうか、もうしばらく目を離せそうにない。

REFERENCE:

An Artistic Time Capsule Prepares To Hitch A Ride To The Moon

An Artistic Time Capsule Prepares To Hitch A Ride To The Moon

http://www.npr.org/2016/01/03/461795258/arts-capsule-to-hitch-a-ride-to-the-moon-on-carnegie-mellon-s-rover

The Moon Art Project

http://moonarts.org/