親にとって子供はとてもかわいいものですが、かわいいがゆえに同時に非常に厄介な存在であることがあります。というのも、子供は何を考えてるかわからなくて興味関心がすぐに移ってあっちへ行ったりこっちへ行ったりと心配で目が離せないものだからです。最近はそんな目が離せない子供のためのハーネス(胴輪)が売られているようで、その見た目から賛否両論が巻き起こっていますが、そちらの是非は置いておいて。とにかく、親は子供がなるべく危ない目に遭ったりしないよう、そして良き人生を送るように「あれをしてはいけない」「これをしなさい」ということを子供に教えます。

それ自体は決して悪いことではないでしょう。しかし、何事も行き過ぎは禁物です。良かれと思ったことだとしても、行きすぎた干渉は子供を一生見えない鎖に繋ぐことになってしまうかもしれません。

ロンドン大学の研究により『幼少時に心理的な束縛を受けた子供は成長しても幸福感が低く人生に満足がいかない人が多い』ことが明らかになりました。

A UCL-led lifelong study of people in England, Scotland and Wales has found that those who perceived their parents as more caring and less psychologically controlling during their childhood were likely to be happier and more satisfied throughout their lives. – See more at: https://www.ucl.ac.uk/news/news-articles/0915/040915-caring-parents-happier-lives#sthash.3C4DDSY2.dpuf

このことは3700人近い人々からアンケートを取ることで明らかになりました。

研究者は回答者に幸福度などに関する質問に加え、大きく分けて二種の質問をします。幼少時の心理的な束縛体験と身体的な束縛体験について、です。例を挙げると心理的な束縛は『やることなすこと、全部親に決められた』『プライバシーを侵害された』『過干渉』、身体的な束縛は『行きたいところに行かせてもらえなかった』というようなものです。

その結果、心理的な束縛を受けたと感じた人だけが成長しても幸福度が低いことが明らかになりました。これは子供だけに取ったアンケートではありません。20代、30代、果ては60代の人までもが幼少時の心理的な束縛によって自分の人生に満足がいっていないことがわかったのです。

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逆に、親から『暖かみ』と『応答』を受け取って育った子供はその後の人生においても幸福度が高かった。

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研究によればこの心理的な束縛による幸福度の落ち込みは幼少時に親しい友人や家族を失った人に匹敵するほどとのことで、心理的な束縛がどれほど子供の一生に強い影響を与えるかがうかがえます。

心理的な束縛は虐待?

幼少時の体験が自分の一生を左右する、と言われると少しばかり人生の意味について思いを馳せたい気分になりますが、感傷的になっていても仕方ありません。なぜこのようなことが起きてしまうのでしょう。

研究論文の筆頭著者であるマイ・スタッフォード博士は『親は子供にとって世界を探索する確固とした基盤となってくれる。心理的な束縛は子供の自立を妨げ、自分の行動に自信を持てなくなってしまう』というようなことを述べています。噛み砕いて読むのならば「子供にとってほとんど神に近い存在感を持っている親に『あれをしなさい』『これをしなさい』と言われると大人になった時に何をすればいいかわからなくなってしまう」ということでしょうか。

あるいは「『あれをするな』『これをするな』と言われ続け『自分の行動が親に認められる』という体験をあまり得られなかったために自分のやることなすこと全て間違えているような気がしてしまう」という可能性も考えられます。『認められるという体験がなかったためにいつまでも自分に満足することができない』とつなぐこともできるので『人生に満足がいかない』という研究結果とも合致するのでこちらの方がより実際に近いかもしれません。

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何をしても誰かに怒られる気がする。

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どちらにせよ、親の行動によって子供が自信を失ってしまう、という研究結果は他にも出ており幼少時に虐待を受けた女性は自分が良き母親になれるか非常に不安に感じていることが多いことがわかっています。心理的な虐待は「生まなければよかった」や「殺してやる」というような罵詈雑言を浴びせるイメージが強いですが子供を無視するネグレクトも立派な虐待となります。『親に自分の存在を認めてもらえない』ネグレクトが虐待となるのだとしたら『親に自分の行動を認めてもらえない』心理的な束縛も非常に虐待に近いものなのかもしれません。

負の連鎖を止めるには

残念なことではありますが、虐待の痛みを知っている人は虐待をしなくなる、というよりも虐待を受けた人は親になっても子供に対して同様に虐待をおこなってしまう、というケースが多いようです。親にとってはほんの些細な行動が子供の一生に関わる影響を与え、それがさらにその子供に連鎖してしまう。このような負の連鎖、負のフィードバックを止めることはできないのでしょうか。

研究者は『成功体験を思い返し自分自身に対して自信を持つこと』の重要性について述べています。

何一つできてないと自分では思っているのに自信を持てと言われても空元気ならぬ空自信にしか思えないような気がするというか、それができないから苦労しているような気もするのですが、そうだとしてもそうするしかないのかもしれません。

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無謀と自信を履き違えぬよう。

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たとえ失敗ばかりでも自分はできると思い続け今日できたことを数え自分を褒め称え子供がいるのならば精一杯束縛のない愛情を与える。たとえそれが間違ったものだったとしても自信がないままよりはマシな結果をもたらす可能性が高いでしょう。子は親を見て育ちます。日々、親が自分のことで思い悩んでいると感じてしまっては育つはずの子どもの自己肯定感も育たないでしょうから。

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REFERENCE:

Children of more caring, less controlling parents live happier lives

Children of more caring, less controlling parents live happier lives

https://www.ucl.ac.uk/news/news-articles/0915/040915-caring-parents-happier-lives

Confidence in parenting could help break cycle of abuse | EurekAlert! Science News

http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-08/uor-cip082815.php

Children of warmer, less controlling parents ‘grow up to be happier’ – Medical News Today

http://www.medicalnewstoday.com/articles/298898.php

子ども虐待とは | 子ども虐待について | オレンジリボン運動 – 子ども虐待防止

http://www.orangeribbon.jp/about/child/abuse.php

子ども虐待を考える 筑波大学教授 宮本信也

http://www1.tcnet.ne.jp/takano-y/koen/miyamoto.htm