アメリカ運輸省道路交通安全局が人工知能を運転手と認める

アメリカ運輸省は2016年2月、Googleが開発中の自動運転車に搭載されている人工知能を、法律上『ドライバー』とみなす見解を示した。人工知能が『ドライバー』と認められるなら、自動運転車の普及に向けた手続きはかなり容易になると言われている。2012年にネバダ州で自動運転車の公道での試運転が可能となる免許が発行されて以来、公道での走行テストを続けてきた『ドライバーレスカー(無人運転車)』の実用化を目指すGoogleにとっては朗報だろう。

Google自動運転車

image by

On the road – Google Self-Driving Car Project

すでに270万キロを自動運転で走破

Googleによると、無人運転車の累計走行距離は6年間で170万マイル(約270万キロ)に達する。これまでに発生した事故は12件、1件の軽い接触事故を除いた他は全てもらい事故で、いずれも負傷者は出ていない。同社は「無人運転車は人間が運転する一般の車より安全だ」と自信をのぞかせている。

日本の自動運転車

日本でも国内の各自動車メーカーが自動運転車の開発に乗り出し始めている。メーカーの開発状況は運転補助用や高速道路限定と様々だが、そんな中、自動車メーカー以外で開発に乗り出し注目を集めている企業がある。携帯ゲームサービス『モバゲー』で有名なDeNAだ。DeNAは自動運転システムの開発を手掛けるZMPと合弁で新会社『ロボットタクシー』を2015年に設立。同社は運転手不在の完全自動運転タクシーを2020年までに実用化することを目指している。自動運転タクシーを携帯端末のアプリで呼び、低価格で利用できるというサービスだ。既に実際に公道で乗客を乗せたモニター実験もスタートしており、その開発は順調に進んでいるようだ。

走行実験中のロボットタクシーの車両

ロボットタクシー株式会社は、2016年2月29日から神奈川県藤沢市において研究開発のための実証実験を開始している。

image by

ロボットタクシー株式会社

2020年代は自動運転が主流?

技術的な問題もさることながら法的な問題も多く抱えているように見える自動運転車だが、現在は国も『2020年代中には自動走行システムの試用を開始する』と指針を示し開発の後押しをしている。これは自動運転車の普及によって交通事故死者数の減少や現在の自動車業界の枠を超えた新たな産業の創出などが見込めるためである。

タクシー業界はどうなる?

今のところ大きな事故もなく国にも事故減および雇用増加の方策として期待されている自動運転車だが、既存のタクシー業界にとってはあまりいい話ではないように見える。もしこのまま自動運転車が実現し普及が進めば、これまでの『有人』のタクシーサービスは需要がなくなり消滅してしまうのではないだろうか。

タクシードライバー

image by

Flickr

業界としては追い風

しかし、この自動運転車時代の到来に関して、日本交通株式会社の会長であり全国ハイヤー・タクシー協会の副会長も務める川鍋一朗氏はインタビューで、

よく見ると、確かに自動運転になると最終的にはいらなくなるかもしれないですけど、実はそこにいくまでって、タクシー産業のために事故防止とかで機械が進化していくんです。ですから、当面は追い風だぞと。

と、自動運転化の流れはしばらくの間タクシー業界にとってもプラスであるという考えを述べている。なるほど、GoogleカーやDeNAの『ロボットタクシー』のような完全自動運転者に至るまでには、まず運転補助レベルの自動運転車からと段階を踏んで開発を進める必要がある。その自動運転車の開発の過程で得られる事故率の低下による保険料の引き下げやドライバーの負担軽減などは、既存のタクシー業界にとってもメリットがあるように思われる。

また自動運転タクシーに対しては、

逆に、自動運転では代えられないところを我々が今から磨いていけばいいわけで。それなりに、そういうのを先読みしながら磨いていけばいいんじゃないかなと思うんですよね。

『人間だからこそできること』で対抗する方針を匂わせる発言をしている。あまり具体的な事は語られていないが、ドライバーのサービスの質の向上や高齢者などに対するサービスの充実を考えているようだ。

しかし低所得化が叫ばれるタクシー業界において、サービスの質や充実という負荷をドライバーに求め続けられるかどうかは疑問が残る。また、本当にそれだけで安価な無人タクシーに対抗できるのだろうか。そもそも自動運転タクシーが参入すれば確実に既存のタクシー業界のシェアは奪われることになる。そうなった時に業界としては生き残れる可能性はあるだろうが、末端のドライバー達は確実にその煽りを受け雇用を減らされるであろうことは間違いない。

どのようなサービスを展開するかが、今後のタクシー業界を決めるのだろう。しかし、この話が経営者の話というのも忘れてはならない。

image by

pixabay

その未来はすぐそこに

ドライバーという仕事は人工知能に奪われるかもしれない。しかしタクシードライバーの方達が自動運転タクシーの開発に対し抗議を行っているなどの話は聞かない。全国のタクシードライバーの平均年齢は57.6歳と高齢だが、もし「自分達の引退まではまあ大丈夫だろう」と考えているのなら、それは危険ではないだろうか。自動運転車の開発やサービスの展開に乗り出しているのはGoogleやDeNAといったIT企業である。ロボットタクシーは「従来のタクシーをITに置き換えるもの」としている。ITが社会や我々の生活を変えてきたスピードは、もう誰もが実感しているはずである。

ロボットタクシーの実現に向けたビジョン

image by

ロボットタクシー株式会社

我々消費者にとっては、タクシーというサービスがより便利に、より安く提供される事は喜ばしいが、ドライバーの雇用問題というニュースを2020年代には頻繁に聴くことになるかも知れない。

REFERENCE:

グーグルの自動運転車、AIが法律上「運転手」に当局が見解 ロイター

グーグルの自動運転車、AIが法律上「運転手」に当局が見解 ロイター

http://jp.reuters.com/article/alphabet-autos-selfdriving-idJPKCN0VJ0AO?pageNumber=2&sp=true

Googleの自動運転カー、ネバダ州で免許取得 ITmedia ニュース

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1205/08/news037.html

Googleの自動運転カー、公道での270万キロ走行で11件の“もらい事故” ITmedia ニュース

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1505/12/news043.html

グーグル自動運転車が事故…人工知能の判断ミス 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

http://www.yomiuri.co.jp/world/20160301-OYT1T50153.html

「Googleに負けているとは思わない」――DeNAが“自動運転タクシー”参入、その背景と勝算 ITmedia ニュース

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1505/28/news132.html

SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)自動走行システム研究開発計画 内閣府

http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/keikaku/6_jidousoukou.pdf

タクシードライバーの平均年齢と勤続年数についてのレポート ドライバーズワーク

http://www.drivers-work.com/taxicolumn/knowledge/age-report/