アメリカ、ブラウン大学が幼少時にストレスを受けることは脳の成長を過度に高めてしまうという研究を発表した。

Scientists studying how stress in early childhood affects the brain have new evidence from a study in male mice that a key region appears to mature faster.

幼少期に受けるストレスは大人になってからアルコール依存症やうつ病、将来的に脳卒中を起こすリスクを高めるなどを引き起こすことが知られている。だが、今回の研究によれば、幼少期のストレスは脳の成長を高めているという。

実験はマウスを用いておこなわれた。生後四日目のマウスとその母親を、通常のケージから巣を作る材料が不十分なケージに移した。そのケージは食料も水分も充分にあるが、巣を作るための材料が不十分なため、母親は巣を作る材料を探して一日中忙しなく歩きまわり、子育てを充分におこなわなかった。一週間後、子マウスと母親は通常のケージに戻された。

その後、研究者は生後四日目から五十日目のマウスの海馬を調べた。ケージを移されていたマウスは、パルブアルブミンと呼ばれるタンパク質の量が通常のマウスよりも一週間早く成熟し、学習に関わるレセプター受容体の発達が通常のマウスよりも九日早かった。つまりケージを移されていた子マウスは、通常のケージで過ごしていたマウスよりも海馬の成熟が早かったのだ。

この早期の成熟はマウスの実際の行動でも見ることが出来た。マウスの実験としてよく知られているもので、入ると電気ショックを受ける小部屋にマウスを入れる、というものが存在する。この実験を繰り返すと、マウスは小部屋に入れられると電気ショックの恐怖を思い出し、身をすくめる。この現象にも海馬が影響していると考えられており、マウスを部屋に入れた時に活性化する海馬の細胞を活性化させると、部屋の外でもあるに関わらずマウスは身をすくめることが知られている。

ただ、この現象はマウスの海馬の成長過程で一時的に消失する。研究者はこの一時的な消失が、ケージを移されていたマウスは通常のマウスよりも一週間早いことを発見した。

無論、この海馬の早期の成熟がマウスのみに見られる現象で、人間には当てはまらないという可能性は十二分に有り得る。しかし、これまでの研究で既に幼少時のストレスは人間にもげっ歯類にも記憶や学習能力、性成熟や脳の神経の接続を速めていると思しき研究がいくつも出ている。人間にもこの現象が起きていることは簡単には否定出来ない

利点というわけではない

しかし、だからといって幼少時にストレスを与えれば子供が賢くなる、などという考えをすることは出来ないようだ。研究者によれば成熟が早くなるだけで全体で見れば通常のマウスの方が海馬が大きく成長するのだという。

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あまり適切な例えではないが、成長期の早い人間の方が最終的には身長が小さいことの方が多い、と言えば上記の成熟と成長の違いがわかりやすくなるだろうか。

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Brothers/Tom Brandt/flickr

研究者はこの現象を自然淘汰に適応するためであると推測している。幼少時からストレスを受ける環境では長生きをすることが難しい。そのため、マウスの体は出来る限り子孫を早く残せるように素早く成熟するのだという。

研究者はさらにこの研究を進め、もし人間にもマウスにも見られたような現象が起きるとしたら、なぜ早期のストレスから回復出来る人がいるのか、また、どのようにしてそこから回復することが出来るかを調べる予定であるという。

また、この研究の結果ではオスのマウスよりもメスのマウスの方が幼少時のストレスによる影響が大きかったという。

top image by Mouse/NH52/flickr

REFERENCE:

Early life stress accelerates maturation of key brain region in male mice

Early life stress accelerates maturation of key brain region in male mice

https://news.brown.edu/articles/2016/05/stress