歴史的な舞台作品の『照明』を復刻するプロジェクトが始まった。一時のもので終わる舞台作品の照明デザインをいかに保存するか。また、過去の作品の照明デザインを、3DやVRなどの最新技術によっていかに再現するか……。その長い模索が始まろうとしている。

That’s the goal of a new project, funded in part by the National Endowment for the Humanities, to figure out how to preserve historic theater lighting design. And not only that: Reside and his colleagues also want to test methods for visualizing those designs, including 3-D modeling and immersive displays of historic lighting design that could be experienced in virtual reality.

照明デザイン

作品全体の照明のプランニング。どこに照明の灯りを仕込むか、いつどこをどんなふうに照らすのか。

image by

THE ART OF LIGHT ON STAGE

1975年にブロードウェイで初演された『コーラス・ライン』は、当時の舞台照明に革新をもたらした。はじめてコンピュータによる制御を導入したことで、人間の手では到底実現しえないダイナミックな照明デザインが可能になったのだ。そのデザインは当時から高い評価を受けており、アメリカの演劇界で最も権威ある「トニー賞」で、『コーラス・ライン』は最優秀ミュージカル照明デザイン賞を受賞している。

『コーラス・ライン』(1975年)

image by

Unsung Broadway

しかし、舞台照明へのコンピュータの導入は業界に別の変化ももたらした。コンピュータの導入以前、ブロードウェイでは照明デザインがスケッチや記録で残されていたのだが、『コーラス・ライン』以降はそうした記録がなくなってしまったという。

今回のプロジェクトでリーダーを務めるダグ・リサイド氏は「演劇とははっきりさせることが難しい芸術形式だ」という。紙の上に文字を印刷し、紙そのものも残る小説や詩とは違って、すべては『ある時・ある場所で行われた出来事』にすぎない。しかも照明デザインは、舞台美術や衣裳のように実物を持たないため、資料や写真を見てもそのすべてを把握することは難しいという。

舞台作品という『一時的な芸術』を保存するため、プロジェクト・メンバーは、ビデオゲームや古いコンピュータ・プログラムの保存例を参考にしている。かつて『パックマン』などのビデオゲームがニューヨーク国立近代美術館に収蔵された際、担当学芸員は大きな課題に直面したようだ。ゲームはソフトそのものをギャラリーに並べたり、見て楽しむようなものではない。美術館にゲームを収蔵することとは、ソフトの実物やプレイ画面を収蔵することでも、ソースコードを収蔵することでもなく、ゲームがもたらす『体験』を収蔵することなのである。

観客が劇場で味わった『視覚体験』をいかに保存し、また再現するのか。舞台作品の『照明』復刻プロジェクトは、その点でビデオゲームの収蔵と同じく、非常に困難な課題のクリアを目指したものだ。プロジェクトはまだ始まったばかりだが、今後の展開に期待が寄せられるところである。

REFERENCE:

A Digital Time Capsule For Broadway Stage Lights