20世紀最大の巨匠と呼ばれ、最も多作な美術家としてギネスにも登録されているパブロ・ピカソ。その孫娘マリーナ・ピカソさんが、相続した巨匠の絵7点を売却しようとしています。その総額はなんと推定367億円ともいわれ、美術関係者を中心に話題を呼んでいます。

売却される巨匠の作品

Pablo Picasso’s Granddaughter Is Selling $290 Million Worth Of His Art

今回市場に出る絵画は一般には公開されていませんが、1911年に描かれた『マンドリンを弾く女』と1921年の『母性』というタイトルの絵、また、ピカソの最初の妻となったオルガのポートレイトは必ず含まれているのではないかと憶測されています。

左が『マンドリンを弾く女』、右が『母性』

母性は伝わったけどマンドリンの音色が聴こえてこない……。

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オルガの肖像画

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今回売却される絵画たちと、同程度の価値があるとされるカンヌにある別荘も売られる。お金に余裕のある人はどうでしょう?

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彼女は昨年、パリのサザビーズオークションにおいて相続した絵画の一部を競売にかけました。しかし、期待通りの額には及ばず、今回は親しい美術関係者を仲介して売るそうです。

マリーナさんはピカソの孫として有名ですが、慈善活動家としても知られています。絵を売って得られた収益のほとんどは、ベトナムの恵まれない子供達のために使われます。また、フランスにおけるボランティア活動の計画も進行中とのことです。しかし、彼女が相続品を売り出した背景には、慈善活動以外にも理由があるようです。

ピカソ家にまつわる不幸

マリーナさんの父は、ピカソとオルガの間に生まれた最初の子供、パウロ氏です。この父は幼い頃から、「お前は無能だ!」などと巨匠に言われながら育ち、成人してからも有名な父の運転手としてこき使われました。彼女によると、ピカソは父を大人としては扱わず、パウロ氏もまた、自分の意思がない子供のように従ったといいます。さらに、パウロ氏の奥さんも彼を愛して結婚したわけではなく、ピカソに近づくために婚約したそうです。

マリーナさんが物心つく頃には父はアルコール依存症になり、彼女はひどく貧乏な暮らしをしました。また、仕方なく祖父の家を兄と訪れた時などは、当時ピカソと同棲していたジャクリーヌ・ロックさんから、「外で待ちなさい」と冷たくあしらわれ、何時間も門の前で待たされたそうです。なんとか祖父に面会すると、いつも巨匠は兄弟を無下に扱いました。彼女にとって一番ショックだったことは兄のパブリートさんが、ピカソの死後すぐに「もう希望も何もないよ」と言い残して、漂白剤を飲み24歳の時に自殺したことでした。孫である自分をないがしろにし続けた巨匠を、最後まで愛し続けた彼の心境は、当事者にしか分からない複雑なものがあるのでしょう。

芸術のために何人の女性を不幸に?

色恋沙汰が旺盛だったピカソは、知られているだけでも2回結婚し、3人の女性との間に4人の子供を儲けた。しかし、彼女たちの多くは不幸な運命を辿っている。最初の結婚相手オルガとは遺産の半分が無くなるという理由から彼女が死ぬまで離婚しなく、その葬儀にさえ現れなかった。また、その時に愛人だったマリー・テレーズはピカソの死後自殺している。最後まで付き添ったとされるジャクリーヌ・ロックも自殺した。しかし、ピカソを唯一拒んだ女として知られるフランソワーズ・ジローだけは、芸術家として大成し、医学者と結婚してアメリカで幸せに暮らした。

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Apart From My Art

幼い頃の不遇な経験は、マリーナさんを長年、精神科に通わせ祖父の作品を見ることも出来なくしたそうです。現在、彼女は比較的安定していて、著書『マイ・グランパパ、ピカソ』でその不幸な幼少期と世界的に有名な祖父について語っています。本当のところは分かりませんが、マリーナさんはピカソ家にまつわる数々の不幸の源を、著作や慈善活動により浄化したいと思っているのかもしれません。

ところで、孫娘により「巻き込む全ての人を不幸にした」と非難される巨匠は、一方では平和の象徴とされるハトをこよなく愛しました。ハトはピカソの重要なモチーフであり、その作品を制作する時は、妻も決してアトリエには入れなかったといわれています。残された作品により、血縁に少しでも平和が訪れることは、あの世で巨匠も願うところかもしれません。

ピカソの描いたハト

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Peace Monuments Around the World

REFERENCE:

Digital Journa