古今東西、さまざまな『オーダーメイド』が考えられてきた。ありとあらゆる希望に応じて製品をつくりあげる、その技巧に目を見張ることもある。しかし現在のところ、おそらくこれ以上の『オーダーメイド』はないだろう。

イギリス・ロンドンの企業“Dot One”が、なんと人間のDNAをもとにスカーフを作るというサービスを始めたのだ。まさに世界唯一の製品だが、しかしこのスカーフ、どんなものになるかはまったく予想がつかないという。

You can now buy scarves featuring designs based on your unique DNA sequence, making these items among the most personalized gifts ever made.

『DNAスカーフ』

こちらが人間のDNAからできたスカーフ。

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Dot One

そもそも、どうやって自分のDNAをスカーフにするのか? その手順は意外と簡単なものだ。

まず利用者は、送られてくるキットに付属している綿棒で頬の裏側をこすりDNAのサンプルを採取する。その綿棒はイギリス有数の検査機関『アルファ・バイオラボ』に送られ、DNAサンプルは検査・分析を経てデータ化される。最後に“Dot One”が、そのデータを独自のアルゴリズムで『DNAイメージ』に変換する……という具合だ。つまり『DNAスカーフ』とは、この『DNAイメージ』をスカーフとして編み上げたものである。

自分のDNAイメージをポスターとしてプリント。

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イメージをスカーフとして編む。

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“Dot One”の創業者であるイオナ・イングルズビー氏は「いまやDNA検査は研究室だけのものではなく、人々のもとに届けられていく段階」だと述べている。しかし現実には、未だDNA検査は人々にとって身近なものではない。そこで彼女はDNA検査を『個人を識別する方法』として紹介するのである。「生活のなかで、科学に興味のない人が(遺伝学に)興味を持つことは難しいでしょう。しかしデータを中心に物語を生み出し、実際にかたちあるものをつくることで、それは魅力的なものになるのです」

兄弟で見比べてみる。78%一致したという。

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こちらは双子の場合。100%一致した。

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『DNAスカーフ』の可能性

人間のDNAは、ほかのあらゆる遺伝子と共通する部分を持っている。たとえば約50%はバナナと同じ、約90%はマウスと同じ、そして99.9%は別の人間と同じ……。“Dot One”という社名は、それでも自分と他者とを区別しうる残り0.1%に由来しているという。

いかにDNAはイメージ化されるのか

そもそもDNAは、アデニン(A)・シトシン(C)・グアニン(G)・チミン(T)の4種類の塩基から構成されているものだ。そのDNAが密集して出来ているのが染色体だが、そこには遺伝的変異が発生する場所がある。“Dot One”は『STR(縦列型反復配列)』なるものに注目し、その変異を分析している。

『STR』とは、A・C・G・Tのうち2〜4塩基がくっついたものを1単位として、それがある回数繰り返されることだ。もっとも、繰り返す回数は人によって異なる。たとえば第7染色体の「D7S280」という場所には「GATA」の繰り返しが存在するが、回数は人それぞれ6〜15回とバラバラだ。その違いこそが、スカーフに赤と青の模様をつくるか、緑とピンクの模様をつくるかを左右することになる。

繰り返しの回数は親から子へ遺伝する。

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“Dot One”はあらゆる染色体上にある28個の『STR』を分析しているが、そこでみられる違いは『そのDNAが地球上の誰のものか』を分析するには十分なものだという。

創業者の語る可能性

イオナ・イングルズビー氏は、DNA検査の将来的な可能性について『一般開業医が薬を正確に処方するための診断キット』になりうるとも、またDNAを利用してパートナーを探す『出会い系アプリ』が登場するとも述べている。予測がどこまで現実になるかはさておき、彼女はDNA検査をそれほど重要なものと捉えているようだ。現在“Dot One”は、医療機関との連携とともに、利益の一部を遺伝子疾患や家族療法の研究に寄付することを目指している。

そのビジョンを達成するためか、『DNAスカーフ』の価格は310ポンド(約55,800円)と非常に高額だ。DNAイメージのプリントでも139ポンド(約25,000円)と、けして簡単に手の届くものではない。しかしスカーフはクリスマスギフトとして人気を集めたようで、注文の受付は現在一時中止状態となっている。

『DNA家系図』を作成するサービスや、DNAイメージをタータン生地に織るサービスもある。

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イオナ氏は製品についてこう話している。「どんなものになるのか注文者にわからないのがエキサイティングだと思いますし、遺伝子が製品の美しさを決めるのもちょっとした驚きです。もっとも面白いのは、たとえば家族で検査を受けた場合、兄弟間の遺伝子の類似点や、親から子へ受け継がれたものがイメージとして描き出されることでしょう」

もちろん費用はかかるが、『DNAスカーフ』は海外への発送も受け付けているという。もし興味がある方は、ぜひ贈り物や家族の記念品として注文してみてはいかがだろうか。

REFERENCE:

Wear Your Genes: Scarves Turn Your DNA Into Unique Pattern

Wear Your Genes: Scarves Turn Your DNA Into Unique Pattern

http://www.livescience.com/53206-personalized-scarves-dna-patterns.html

Dot One

http://www.dotone.io/

マイクロサテライト – Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/マイクロサテライト

ヌクレオチド – Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/ヌクレオチド