インターネットが普及し、便利になった現代社会。でも実は、自然世界には太古の昔から既に生物が媒介する一種の情報網のようなものが存在しており、それを通じて植物同士が関係しあっているということが分かってきました。

WWW(ウッド・ワイド・ウェブ)

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情報媒介の中心となるのは、キノコ類が植物の根元に作る『菌糸コロニー』。まさに網目のように地中に張り巡らされています。研究者によれば、植物のうち90%がこのネットワークを通して他の植物と相互関係を持っているといいます。この情報網のことを研究者たちはWorld Wide Webをもじった『Wood Wide Web』または『自然のインターネット』と呼んでいたりしています。この菌糸コロニーネットワークの役割は実に多岐にわたっています。そのうちの代表的なものをいくつか紹介します。

持ちつ持たれつの共生関係

宿主となる植物はコロニーに炭水化物を供給し、コロニーもまた宿主植物が水を吸い上げるのを助けたり、リンなどの養分を供給したりしています。菌類と植物とは、お互いに持ちつ持たれつの共生関係にあると言えます。また菌糸コロニーは、日陰に生えた植物に自分の宿主植物からもらった養分を送ってあげるなど、頼りになる助っ人的役も果たしているようです。

植物の免疫システムの増強

植物は、病原菌などから自分の身を守るために、葉や根から化学物質を生成・分泌しています。菌糸コロニーは、植物のこの働きを助ける役割も持っているようです。具体的な実験例としてこのようなものがあります。

・トマトを2グループに分け同じプランターに植えて、それらの根元に菌糸コロニーを繁殖させる。
・地上には2株の間にプラスチックのしきりを作り、空気中では互いに交流できないようにする。
・片方のグループに、虫害を引き起こす元になる菌を植え付ける。
・65時間後、もう片方のグループにも虫害の元になる菌を植え付ける。

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同じコロニー内の植物の一方が菌の攻撃を受けたことによって免疫となる化学物質を作成、菌糸がそれを補助・伝達し、まだ攻撃を受けていないもう一方の株でも同様に作成が開始される。

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結果、はじめのグループは容易に虫害におかされたのに対し、後のグループには、虫害が起きにくいことが分かりました。この結果から研究者は、はじめのグループが虫害におかされた時に、ある種の化学物質を出し、それが菌糸ネットワークを通じて『警報』として後のグループに伝達されたのではないかと考えています。動物だけでなく植物も、信号を出して他の個体に危険を知らせ、互いの生存を守りあうことがあるのです。

植物たちのたくらみ

その一方で、植物は逆に菌糸ネットワークを使って互いを貶め合うこともあります。ある植物が、菌糸ネットワークを利用して他の植物から養分を盗み出したり、他の植物の成長を妨げる物質を送り込んだりすることもあるようです。その一例として、葉や根から他の植物の成長を妨げる『ジュグロン』という物質を出すクルミの一種を用いた実験を紹介します。

クルミが植えられた土に菌糸コロニーを繁殖させた場合とさせなかった場合では、繁殖させた土はさせなかったものに比べてジュガロンの量が4倍も高くなる結果が出ました。また、そこにトマトを植えた場合ではコロニーをクルミに繁殖させた場合、させなかった場合に比べてできたトマトの重さが36%も少なくなったのです。

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この実験から、菌糸コロニーがジュグロンの生成をブーストして、結果トマトの成長を妨げているということが分かります。菌糸ネットワークも人間社会のインターネット同様、それが他の植物にとって良いものであるか悪いものであるかにかかわらず、物質や情報を増幅したり伝達したりするというのが本質のようです。

一見静かに見える森の地下は実は、協力し合ったり敵対したり、情報戦線のただ中であり、菌糸ネットワークを介して植物は互いにさまざまなコミュニケーションを行っています。森に入ると、ザワザワとした何かが沸き起こっているような、誰かが話しかけてくるような感覚にとらわれることがあるかもしれませんが、それは私たち人間にも無意識に森のネットワークのひそかな活動が感じられるからかもしれません。

REFERENCE:

BBC

BBC

Plants talk to each other using an internet of fungus
http://www.bbc.com/earth/story/20141111-plants-have-a-hidden-internet