アメリカ航空宇宙局(NASA)が子供たちに科学に興味を持ってもらうために全球降水観測計画主衛星(GPM主衛星)らを擬人化したマンガを公開した。

To get young students reading about science, NASA is trying something different. Instead of a press release or a scientific paper, the Global Precipitation Measurement (GPM) mission has launched a Japanese manga-style comic book.

NASA | Making Science Fun For Kids Through Comics

予告編

Page 1 - GPM Meets Mizu-Chan

RAINDROP TALES GPM MEETS MIZU-CHAN

image by

Raindrop Tales: GPM Meets Mizu-Chan | Precipitation Education

GPM計画について
GPM計画は二周波降水レーダー(DPR:Dual-frequency Precipitation Radar)とマイクロ波放射計を搭載した主衛星と、マイクロ波放射計を搭載した副衛星群とからなるスケールの大きな観測計画です。
日本(JAXA)とアメリカ(NASA)が中心となり、米国海洋大気庁(NOAA)、フランス、インド、中国等との国際協力により実現します。
JAXAは、主衛星の打ち上げと、情報通信研究機構(NICT)と協力して主衛星に搭載されるDPRの開発を担当しました。主衛星の本体および主衛星に搭載されるマイクロ波放射計はNASAが開発を担当。
マイクロ波放射計を搭載する副衛星群については、NASA、NOAA、フランス、インド、中国等の機関が開発を担当します。これら、複数機の副衛星群により、約3時間毎の全球降水観測が可能になります。
JAXA | 全球降水観測計画/二周波降水レーダ「GPM/DPR」

GPMはNASAとJAXAの共同開発によって開発された衛星を用いて全世界の降水を観測する計画である。

NASAはこのGPM、および科学への興味を子供たちに抱いてもらうためにマンガを作ったという。なお、マンガの主要キャラクター(擬人化)のデザインはマンガを作るという発表の際に募集した公募の中から選ばれている。

gpm2

“GPM”

GPM主衛星の擬人化。金髪に着物というNASAとJAXA共同開発らしいデザインの男の子。作者は日本のマンガ家『霧賀ユキ』氏。

image by

The Making of "Raindrop Tales: GPM Meets Mizu-Chan" | Precipitation Education

mizuchan2

“Mizu-Chan”

『GPM』が調査する水、あるいは降雨の擬人化。名前の由来はもちろん『水』から。天候によって服の色や髪型が変わるらしい。作者はアメリカの『Sabrynne Buchholz』氏。なんと14歳らしい。

image by

The Making of "Raindrop Tales: GPM Meets Mizu-Chan" | Precipitation Education

はやぶさの二番煎じ?

衛星の擬人化といえば思い出されるのはやはり『はやぶさ』であろう。はやぶさが地球に帰還する直前あたりから、インターネット上で数多くの擬人化されたはやぶさの画像がアップロードされはやぶさは人気を博し、帰還後には擬人化されたはやぶさを描いた漫画作品も出版されている。それをご存じない方々でもテレビなどではやぶさがあたかも生きているかのように扱われていたことは承知いただけると思うし、あれだけ多くの人の感動を生んだのははやぶさをそのように扱ったからだということは認められることと思う。

対象が衛星であること、開発にJAXAが関わっていることから、今回のGPMの擬人化がはやぶさから影響を受けていることは想像に難くない。はやぶさは広義の擬人化によって多くの人に注目され感動を生み、直接的な影響があるかは定かではないがJAXAははやぶさ2の予算の増額に成功している。今回のGPMの擬人化ははやぶさの二匹目のドジョウ、といえないこともない。

しかし、どうなのだろう。はやぶさが『はるか宇宙の彼方への孤独な旅』『トラブルに巻き込まれながらのサンプル回収の成功』『目的を果たすと同時に訪れた自己犠牲的な死』という非常によくできたストーリーであったのに比べてGPMはなんだか地球の周りを回って雨を観測してるだけで地味で、あまりストーリー性がないように思える。大体にしてデザインに比べて表紙の絵がかわいくないし、よくある『マンガでわかる』本のようにマンガはオマケ程度で固っ苦しい文章を読まないと理解できない作品が関の山、はっきり言ってしまえば失敗なんじゃないかという気がする。

Mizu2

あまりかわいくない絵柄

image by

Raindrop Tales: GPM Meets Mizu-Chan | Precipitation Education

というか、このマンガは去年の10月に公開されたようなのだが検索をかけても少なくとも日本ではキャラクターデザインが日本人が受賞したこと以外は全く検索に引っかからなかったので本当に大コケしたのだと思われる。

というわけでこのGPM擬人化マンガがどの程度失敗作なのか確認してその中身を面白おかしく紹介しよう、と思っていたのだが予想に反して傑作であったので予定を変更して簡単ながら普通にストーリーを紹介する。

あらすじ(ネタバレあり)

物語は簡単に言えばボーイミーツガールだ。

主人公の少し生意気でせっかちなGPMは初めて衛星軌道に乗った日に地球とその周りを回る一人の少女を見かける。GPMは少女に話しかけるが少女はGPMの声に気付くことなく消えてしまう。

無視されて意気消沈していたところに先輩衛星であるTRMMが現れる。TRMMに尋ねると少女の名前は『Mizu-Chan』といい、雨と雪あるいはそれらの組み合わせ全ての化身であると言った。

それを聞いてGPMはますますMizu-Chanに会いたいと思い、周りにいる世界各地の気象を調査する衛星たちに協力を呼びかける

Mizu5

日本産の衛星GCOM-W『しずく』

「そんなことして私たちに何の得があるっていうの?私たちはみんな任務も違うし『雇い主』だって違うの。あんただって知ってるでしょ?」

image by

Raindrop Tales: GPM Meets Mizu-Chan | Precipitation Education

最初は何の得になるのかと非協力的だった衛星たちだが、GPMが雨や雪という現象が地球一部だけでなく全体を見なければいけないものであると説得し、集めたデータを全世界で共有するとGPMが約束することでGPMに気象データを送ることを承諾する。

Mizu6

左の二人がインドとフランスの衛星Megha-Tropiques、中央が欧州宇宙機関のMetOp

今まで無関係だった衛星たちが一人の少年の無茶な呼びかけによって協力をおこなうこをと決める感動的な場面。

image by

Raindrop Tales: GPM Meets Mizu-Chan | Precipitation Education

衛星の協力を得て、GPMはついにMizu-Chanと出会う。GPMとMizu-Chanはあいさつを交わし、GPMが尋ねる。

「どうやってキミはどこに雨を降らせるか決めているんだい?」

「それは秘密。でも、私を注意深く見てたらわかるかもね!」

「わかったよ。じゃあ僕が自分で君の謎を解き明かしてみせるよ!」

そう言って二人は別れて、GPMは衛星たちに世界中の降雨の状況を尋ねる。それでも降雨の謎はわからない。

「あら感心、本当に私が何をしてるのか調べてるのね。そんなことしてて楽しい?

いつの間にか背後にいたMizu-ChanにGPMが尋ねる。

「まだわかんないよ。水の流れは複雑すぎるんだ。ねぇ、ヒントをくれないかい?」

「それはきっと私たちが見つけていかなきゃならないのよ」

……と地球をバックにMizu-Chanが言って話は終わる。ところどころ記者の妄……意訳が混じっていることは容赦願いたい。

記者の能力が足らずあまり魅力を伝えられなかったと思うが、本編はわずか10ページにも関わらず『衛星の起動は慎重におこなわれなければいけない』『GPMが他国と協力しデータを共有していること』『降雨という不思議な現象の謎に迫る面白さ』等々の実際のGPM事情をストーリーの中に見事に組み込んでいる快作である。

また、ストーリーを追うと『GPMがMizu-Chanを追う』という『男の子が不思議な女の子の謎を解き明かす』ような作品にも見えるが、GPMの疑問があくまで降雨に関してでありMizu-Chanが最後に『私たちが』と述べるあたりも『男の子向け』な偏りも極力少なくあくまで謎の対象を降雨に収めることに絶妙なバランスで成功している。

それになんといっても完結させずに続きが読みたいと思わせる作りになっているのが非常に上手い。彼らがこれからどうなっていくのか、それはこれからGPMの計画を追っていけば自然と浮かび上がってくるというわけだ。これらのことはただ単に行って戻ってくる、というストーリーを追えば満足できるはやぶさよりもはるかに内容に興味を抱かせるという点では優れている。

少なくとも記者ははやぶさにはいまいち興味を覚えなかったがGPMには俄然興味が湧いた。なので少しGPMについて調べてみたところ、GPMが最初に会った先輩衛星のTRMM、彼は2015年の4月に観測をやめて機能を停止させたらしい。ますます面白い展開なので是非とも続編を出して欲しいと思うので、できる限り多くの方々に読んでもらいたい。

REFERENCE:

Raindrop Tales: GPM Meets Mizu-Chan | Precipitation Education

Raindrop Tales: GPM Meets Mizu-Chan | Precipitation Education

http://pmm.nasa.gov/education/comics

The Making of "Raindrop Tales: GPM Meets Mizu-Chan" | Precipitation Education

http://pmm.nasa.gov/education/comics/making-of