家の窓を見るとガラスにヤモリが張り付いているという光景は日本でも見られますが、その仕組みは様々な分野の技術開発にも用いられています。本日12月3日、イギリスの現存する最も古い科学学会『王立協会』にて、カリフォルニア大学の生物学者がある研究発表を行いました。

Experiments on both live and recently euthanized tokay geckos (Gekko gecko) revealed that death does not affect the dynamic adhesive force or motion of a gecko foot when pulled along a vertical surface.

ヤモリが貼り付けるのは『毛』のおかげ

壁を張っているのはロッククライマーのように凹凸を見つけ出して必死にしがみついているわけではありませんし、カエルのような吸盤やナメクジのように粘液を使っているわけでもありません。ヤモリ身体を支えているのは非常に細かな毛なのです。趾下薄板(しかはくばん)と呼ばれる足の裏の部分にはナノメートル単位の細さの毛が寄り合わさって構成されたマイクロメートルの剛毛を作り、それが約50万本近くヤモリの足の裏を覆っているのです。

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肉眼ではわからないが目に見えないほどの細い毛が寄り集まり、このような形を取る。

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Bjørn Christian Tørrissen – Own work by uploader, http://bjornfree.com/galleries.html. Licensed under Creative Commons Attribution-Share Alike 3.0 via Wikimedia Commons

この無数の毛が鏡や壁などに触れたときに、弱い力を発生します。『ファンデルワールス力』と呼ばれるこの力は分子と分子の間で発生するもので、あまりにも極細の毛が壁やガラスの分子にまで近付くことでこの力が生まれます。ファンデルワールス力そのものは小さなものですが、それが何十万もの本数の剛毛で同時に発生することによってヤモリは張り付くことができるのです。雑誌を二冊、交互にパラパラとページを重ねていくと離れなくなったりしますが、ヤモリと壁の場合はそれよりもはるかに小さな世界で密接に繋がっているようです。

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この発見に、世界中の技術者が注目しました。2010年に日東電工が『ヤモリテープ』を開発、2011年にはカナダの研究チームが垂直の壁面も移動できるキャタピラ付きロボットを開発しました。

そして、今回のカリフォルニア大学の研究発表において、また新たなヤモリの性質が明らかになったようです。

死んでいても同じように貼り付ける

研究チームは生きているものと死んでいるものを用意しました。死んでいるヤモリは動くことはもちろんありませんし、体勢なども自分の意志でどうにかすることはできません。振り回されてもなすがままです。ところが、死後30分以内では生きているとき同様の吸着力を発揮することが今回の実験で判明したのです。それは、ヤモリが壁などに張り付く際に自らの力を用いずに趾下薄板の力だけで張り付いていることになります。真っ直ぐな壁に張り付いていて大変そうだなと思ったことがあるかもしれませんが、どうやらそのようなことはヤモリには無縁だったようです。

House Gecko on Wall

張り付くだけならいくらでも平気。

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自分ではなにも頑張らずに楽して急な斜面も垂直な壁も貼り付けるヤモリの力。研究チームはこの結果が、ロボット工学の分野に影響を与えるだろうと語っているそうです。

REFERENCE:

Royal Society(王立協会)

Royal Society(王立協会)

Passively stuck: death does not affect gecko adhesion strength
http://rsbl.royalsocietypublishing.org/content/10/12/20140701