2016年4月26日、チェルノブイリ原発事故から30年が経過した。しかし、その悪影響は現在も収まっていないようだ。AP通信社は、ウクライナの隣国ベラルーシで採れたミルクから基準値の約10倍の放射性物質が検出されたことを報じている。

As if the locals living near Chernobyl haven’t been through enough already, an investigation into milk being produced on the border of the exclusion zone has revealed that it contains 10 times the accepted radiation limits, even 30 years after the devastating meltdown.

AP通信社の取材に応じたのは、ベラルーシで農場を営むニコライ・チュブノク氏だ。2001年から、ニコライ氏はチェルノブイリの封鎖区域より45km、立入禁止区域より2km北という位置に農場を開いており、そこでは1日2トンのミルクが生産されている。今回、AP通信社はニコライ氏の農場で採れたミルクをサンプルとして回収し、国営衛生疫学センターで検査した。するとその結果、ミルク1kgにつき37.5ベクレルのストロンチウムが検出されたという。ベラルーシ国内の基準値は食品1kgあたり3.7ベクレルだから、その約10倍もの放射性物質が含まれていたことになる。

ニコライ氏は、生産したミルクを乳製品メーカーMilkavita社に提供していた。Milkavita社は取材に対して「(検査結果は)ありえない」と答えている。同社ではミルクに自社テストを実施しているほか、半年ごとに徹底的な調査を行っているという。なお自社テストではミルク1kgにつき平均2.85ベクレルという結果が出ているというが、この数値は今回の検査結果とは大きく異なる

Milkavita社のCMより

CM全編はYouTubeで見ることができる。

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原発事故と農場の関係

なぜニコライ氏の農場は、封鎖区域に近い位置に開かれているのだろうか。その背景には、ベラルーシという国の経済状況があるようだ。

現在、ベラルーシの主な貿易相手国はロシアであり、輸出経済の15%をロシアへの食品輸出が占めている(実際にMilkavita社も、製造したパルメザンチーズの90%をロシアに輸出している)。食品輸出に経済の一部を依存するゆえか、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領は原発事故後も農業・畜産業に関する政策を推し進めてきた。1994年には事故による避難者の再定住計画を中止し、かつて人々が暮らした村を含めた『廃墟』の土地を農業・畜産業に利用する計画をスタートしている。この政策の影響下でニコライ氏の農場は開かれており、また他の農場の多くもよく似た条件・環境下にあるだろう。

こうしたベラルーシの状況に警鐘を鳴らすのは、医師・病理解剖学者のユーリ・バンダジェフスキー氏である。原発事故以降、事故の影響に関する研究・調査に携わってきたユーリ氏は、「ベラルーシには被曝から国民を守るものがない。政府は放射能を恐れる必要はないと国民に訴えかけ、汚染区域で作られた食べ物は国内各地に送られている」と話している。

ユーリ・バンダジェフスキー氏

1999年に政府当局より汚職の疑いで逮捕されたが、世論の高まりに押されて2005年に釈放されている。

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WIKIMEDIA COMMONS

なおAP通信社は、原発事故による放射性物質問題に対処する「ベラルーシ非常事態省」にも取材を試みている。しかし担当者は「(ミルクの)検査結果にはコメントしない」と回答したという。

REFERENCE:

Chernobyl’s milk is still radioactive 30 years later, investigation reveals

Chernobyl’s milk is still radioactive 30 years later, investigation reveals

http://www.sciencealert.com/chernobyl-s-milk-is-still-radioactive-30-years-later-investigation-reveals

AP EXCLUSIVE: TEST FINDS CHERNOBYL RESIDUE IN BELARUS MILK

http://hosted.ap.org/dynamic/stories/E/EU_CHERNOBYL_RADIOACTIVE_FOOD?SITE=AP&SECTION=HOME&TEMPLATE=DEFAULT

ベラルーシ基礎データ | 外務省

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/belarus/data.html

ユーリ・バンダジェフスキー – Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/ユーリ・バンダジェフスキー

top image by The accident at MAYAK complex