ふだん、どんな環境で食事をしていますか? テレビを見ながらの人、ついついスマホ片手の人、ひたすらごはんに集中する人……ひとり暮らしでなければ、誰かと喋りながらになることも少なくないでしょう。

今回は、「そういえばいつも、食事の時には音楽が流れている気がする」という人にお知らせです。オックスフォード大学から、音楽が食事をより美味しくするという研究報告が届きました。

Research suggests that certain types of music can bring out specific flavours – including sweet, salty and bitter – in a range of foods.

教授の研究

行動心理学者のチャールズ・スペンス教授は、食事と音楽の関係について研究するため、たとえばこんな実験をしています。

参加者には同じ種類のチョコレートを2枚渡して、異なるクラシック音楽2曲を、1曲ずつ聴きながら食べてもらう。そして、チョコレートの味が変わったと感じたかどうかを尋ねる。

この実験では、暗い曲調の音楽を聴きながらチョコを食べた場合はより苦く、また明るい曲調の場合はより甘く感じた、という結果が出ています。ここからチャールズ教授は、「私たちが考えているほど、味覚は食べ物の判断を支配していない」というのです。

チャールズ・スペンス教授

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チャールズ教授は「音楽は味を作り出すことこそできないが、食べ物の『特定の味』に脳を注目させることができる」といいます。教授によれば、甲高い音は酸味を、丸みのある豊かな音は甘さを、深い音色は苦味を引き出すといいます。未だ、しょっぱさをどんな音楽が引き立てるかはわからないということですが、研究チームは『激しい音』が恐らくその効果を持つと推測しています。

とにかく聴いてみよう

甲高い音……はまだわかるとしても、どんな音が『豊か』で、どんな音が『深い』のか、言葉だけではイメージすることができません。幸い、チャールズ教授たちはそれを判断するためのサンプルを用意していました。せっかくなので、どの曲がどんな味を引き立てるのか、実際に聴いてみることにしましょう。

ビリー・ホリデイ『オータム・イン・ニューヨーク』

かぼちゃプリンの秋の風味を引き立てるとか。

ルチアーノ・パヴァロッティ歌唱『誰も寝てはならぬ』

ダークチョコレートやコーヒーの苦みに。

また、チャールズ教授はワインと音楽の相性にこだわりが強いようで、お薦めをいくつか提案しています。いわく、「相性のいい音楽とともに飲むワインは、静けさの中で飲むよりも約15%美味しい」そうです。

たとえば彼は、「シャトー・マルゴー」の2004年を飲む際には、チャイコフスキー作曲『弦楽四重奏曲第1番ニ長調 作品11』をお薦めしています。

第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」

ワインなしでもいい雰囲気。

またチャールズ教授は、音楽のみならず、周囲の色や食器の重さといった要素は、すべて食事をより『楽しくする』ために組み合わせられると主張してきました。たとえば間接照明であれば、赤色は赤ワインのフルーティーな風味を、緑色は酸味を引き立てるのだそうです。

しかし、食べ物の味も音色の聴こえ方も色の見え方も、結局は人の主観に左右されてしまうような気がします。したがって紹介した曲の数々も、「この曲を聴けばこれが美味しくなる」ということを保証するものではないでしょう。それゆえに教授も、食事を『楽しくする』という表現を選んでいるのかもしれません。

聴き方も聴こえ方も人それぞれ。

音楽によって、味に対する個人の感覚の違いを埋められない以上、チャールズ教授のいう、音楽や色や食器の重さは、いわば食事の『演出』のひとつだといえるはずです。たとえば『オータム・イン・ニューヨーク』を聴きながらかぼちゃプリン……なんて、演出以外の何物でもないでしょう。

グルメと演出

あらゆるレストランで、料理は凝った演出とともにしばしば提供されています。

スペイン・ジローナ州のレストラン“El Cellar de Can loca”には、バルセロナのサッカー選手・メッシをイメージしたデザートがあります。これは、プレイヤーやゴールを模したメレンゲをチョコレートのボールで破り、混ぜて食べるという趣向のものです(バルセロナのライバル、レアル・マドリードは通称「メレンゲ」)。さらにこのデザートが出てくる際には、メッシがゴールを決めた際の実況が流れています。

上海のレストラン「ウルトラヴァイオレット」

イギリス料理が出てくる際にはテーブルにユニオンジャックが投影され、ザ・ビートルズが流れる。

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日本では近年、忍者やプロレス、学校給食などコンセプト重視の居酒屋をよく見かけるようになりましたが、そういった店も食事を楽しく演出する場といってよいでしょう。また、時たま見かける奇妙なレトルト食品が食卓に与える演出効果も、けして少なくはないはずです。

新宿歌舞伎町・ロボットレストラン

ロボットとダンサーによるパフォーマンスを楽しめる。海外からの観光客も多く、新たな観光地となっているとか。(注:食事はお弁当です)

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わくわくお宅

せっかく食べるならできるだけ美味しく食べたい。きっとすべての人間が、料理を前にしたときに願っていることです。しかし人それぞれ、舌が違えば味覚も異なります。そんなときこそ効果を発揮するのが『演出』で、また演出がよりどころにするのが、食事の『楽しさ』なのかもしれません。

どこで食べるか、なにを食べるか、誰と食べるか……そんなことを一生懸命考える人は多いことでしょう。これからは、たまには『なにを聴くか』もその中に加えてみてください。劇的にとはいかなくとも、毎日の食事がほんの少しだけ楽しく、美味しくなるかもしれません。

料理はマズくても楽しい食事ってなかなかない。

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Getty Images

REFERENCE:

Scientists reveal which MUSIC will make your food taste better: The Beatles are perfect for fish and chips… and Pavarotti does wonders to a chocolate mousse

Scientists reveal which MUSIC will make your food taste better: The Beatles are perfect for fish and chips… and Pavarotti does wonders to a chocolate mousse

http://www.dailymail.co.uk/news/article-3026252/The-Beatles-fish-chips-Pavarotti-chocolate-mousse-Pyschologists-discover-music-help-enhance-enjoyment-food.html

Melody on the menu: how a sprinkle of Mozart might give your meal zing

http://www.theguardian.com/science/2015/apr/05/music-enhance-enjoyment-wine-food