地球の環境と私たちの食事は深い関係にある。それはまぎれもない事実だ。もっとも多くの場合、そこから展開される主張は『食を規制する』方向に向かうことが多い。たとえば『肉食が環境に悪影響を及ぼす』という主張を耳にしたことがある人は少なくないだろう。

しかし今回、エジンバラ大学・スコットランド農業大学・ブラジル農牧研究公社の共同調査によって、牛肉を多く消費することが温室効果ガスの削減につながる可能性があることがわかったという。これまでの定説とは真逆である……。

Reduced meat consumption might not lower greenhouse gas emissions from one of the world’s biggest beef producing regions, new research has found. The finding may seem incongruous, as intensive agriculture is responsible for such a large proportion of global greenhouse gas emissions.

『肉食環境に悪い説』の根拠

もっとも、これまで語られてきた『肉食は環境に悪い』という主張には、もちろん根拠が存在する。たとえば牛は草食動物だが、肉食用に育てられる牛には穀物が与えられることも少なくない。草ならばある程度自然に生えてくるが、穀物を育てるには野菜と同等の負荷がかかるうえ、肥料や農薬が使われることもある。

また、大きな問題とされるのが牛の排泄物やゲップである。排泄物に含まれる病原菌や有害物質で土壌や河川が汚染されたり、排泄物を微生物で分解する際にアンモニアや硫化水素が発生することが環境や人体に悪影響を与えるというのだ。また、牛のゲップに含まれるメタンガスは、二酸化炭素の20倍以上も環境負荷が高く、大気中に9~15年とどまるといわれている。

食肉解体場の廃棄物

解体後の廃棄物・排水が土壌汚染につながるという指摘もある。

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ほかにも熱帯雨林を伐採して家畜を放牧することの悪影響や、肉の輸送・保管・販売に伴う環境負荷も問題とされている(もっとも、こうした指摘の多くが肉だけに限らないという逆指摘もあるが……)。今回の提言は、こうした『肉食環境に悪い説』をどう覆すのだろうか?

放牧も場所が肝心

調査リーダーを務めた、エジンバラ大学のラファエル・シルバ氏はこう述べている。「ブラジルの多くの草地はいま厳しい状態にあり、これでは牛肉の生産性は低く、温室効果ガスの排出量は多くなってしまいます。しかし牛肉の需要が高まれば、それは農夫たちが牧草地を蘇らせるきっかけになります」

ラファエル氏いわく、牧草地が復活すると土壌に含まれる炭素量が増え、また肉の生産性も上がるという。すると、放牧に必要な土壌も少なくて済むため、森林破壊や温室効果ガスの排出量も減少するというわけだ。ただし、今回の提言にはひとつだけ注意点があった。ブラジルのセラード地域で牛肉を生産すべし、ということである。

いわゆる普通の草原は、森林ほど炭素を多く貯蔵することができない。しかしブラジルの草(ブラキアリア属)は、ヨーロッパの草原よりも炭素貯蔵量が多いという。質の高い草原に多くの炭素が蓄えられることで、二酸化炭素の排出量が減ると見込まれているのだろう。草原の改良には土壌に適した『種』が使われるほか、化学的・機械的処置も含まれる。

ブラジル・セラード地域

日本・ブラジル間で農業開発が行われた。森林伐採が進む一方で、開発余地も多いという。

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ブラジル・セラード地域の場合、肉の消費量が減ることは草原の改良を遅らせることになり、温室効果ガスの排出量が増えることにつながるという。研究チームは、牛肉の需要が2030年までに30%高まればガス排出量を10%削減できると予想している。一方で、需要が30%減ってしまうと排出量が9%増加するという。ただし肉の需要とともに森林伐採が進んでしまうと、ガス排出量は最大60%増える予想だ。高い需要にもかかわらず森林伐採を行わない、というのも厳しそうだが……。

スコットランド農業大学のドミニク・モラン教授は、「消費の削減がすべてにおいて同じ効果を持つと結論づける前に、あらゆる生産システムの本質を理解することが大切だ」と述べている。『牛肉をたくさん食べると温暖化が防げる』というのは、いわば「風が吹けば桶屋が儲かる」ような、いささか無理のある話かもしれない。しかし「どうせ食べるならそっちを信じたほうが精神衛生上よい」ということはありうるだろう。最終的にどの理屈を信じるかはお任せしたい。

REFERENCE:

Eating less meat might not be the way to go green, say researchers

Eating less meat might not be the way to go green, say researchers

http://phys.org/news/2016-01-meat-green.html

肉を食べると環境を汚染する?肉食と環境の関係

http://www.nygreenfashion.com/html/learn/meatconsumption.html

カンポ・セラード – Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/カンポ・セラード