世界で最もデング熱感染が多いブラジルで、感染拡大を食い止める画期的な試みとして、デング熱の免疫をもった蚊1万匹が自然界に放出された。この試みに関与した生物学者ガブリエル・シルベストル・リベイロ(Gabriel Sylvestre Ribeiro)氏が2日、AFPに語った。

数千匹をリリースした際のインタビュー

想像しただけで身体が痒くなるニュースです。日本でも代々木公園を中心に各地へ広まっているデング熱ですが、ブラジルでは遥かに深刻な問題のようで、過去5年で800人以上が亡くなっています。しかしウイルスを媒介する蚊の駆除を考えるのではなく、逆に免疫を持った蚊を放つというのは中々大胆な試みですね。そもそもこれらの蚊はどうやってデング熱の免疫を獲得したのでしょうか。

共生細菌ボルバキアを利用

ボルバキアにはデングウイルスの増殖を防ぐ働きがあり、ボルバキアに感染した「良い蚊」と自然に生息する蚊が交配して
生まれた蚊はデングウイルスを媒介することはないという。

ボルバキアという細菌に感染した蚊は、その個体だけでなくその子もデングウイルスを媒介しなくなるようです。つまり人為的にボルバキアに感染させた蚊を放ち、ボルバキアを持たない蚊と交配させることで次の世代以降デングウイルスを媒介する蚊はどんどん減っていくという仕組みです。優性遺伝のような構図です。

Wolbachia

ボルバキア

節足動物やフィラリア線虫の体内に生息する共生細菌の一種で、特に昆虫では高頻度でその存在が認められる。-Wikipedia

image by

Scott O’Neill [CC-BY-2.5 (http://creativecommons.org/licenses/by/2.5)], via Wikimedia Commons

ネッタイシマカにおけるボルバキアの遺伝

雄・免疫有 雄・免疫無
雌・免疫有 子・免疫有 子・免疫有
雌・免疫無 孵化しない 子・免疫無

このようにそれぞれが同数であれば、1世代進むごとに免疫が無い個体の数は約1/3になると考えられます。

1万匹…多いのか少ないのか、ブラジルに生息する蚊の個体数ははっきりと分かりませんが、今回放たれるネッタイシマカの寿命は凡そ2週間~1ヶ月程度のため、比較的早く効果が見られるのではないでしょうか。もっとも生態系への影響も無視できないため、一度に1万匹ではなく数ヶ月かけて徐々に放っていくようです。

しかし、蚊を1万匹放つというのは身近で起こって欲しくないイベントですね。もちろん命には換えられないのですが。ということで折衷案として、刺されても痒くならない共生細菌の発見を心から願っています。