兵庫県神戸市にある、神戸市立須磨海浜水族園(以下スマスイ)。1957年のオープン以来、改装を続けながら存続する「昔ながらの」水族園だ。最近では保守的な他の水族館と比べると、比較的革新的な取り組みを行っており、地元の人々をはじめ全国の水族館マニアに愛され続けている。そんなスマスイに2010年、他のどこの水族館にも存在しなかった、奇妙な水槽が登場した。その名も「亀楽園(きらくえん)」。

亀楽園の全貌

動画をご覧のとおり、カメ、カメ、カメ……。カメのオンパレードである。こんなにもたくさんのカメをあなたは目の当たりにしたことがあるだろうか。こちらが餌をあげようと近づくと、あちらも寄ってくる。お腹がすいているのだろうか、物凄い勢いで寄ってくる。
右の方には子ガメ水槽があり、子ガメたちが悠々と泳いでいる。どれもペットショップで売られているサイズの子ガメたちだ。

カメの楽園、なんていいところなんだ!!と言いたいところだが、その場では嫌な表情を浮かべながら立ち去る人がとても多かった。なぜだろうか。

そう、なんといってもカメが多すぎる。カメたちは身動きがとれず、大好きな日向ぼっこはおろか、餌を食べるスペースさえも無さそうである。陸に上がるためのスロープは常に渋滞しており、カメの上をカメが渡り、そのカメの上もまた、カメが渡っている。なぜスマスイは、カメたちのこのような痛ましい姿をさらしているのだろうか。

「魅せる水槽」と「見せる水槽」

亀楽園にいるカメたちのうち90%はミシシッピアカミミガメ、私たちが巷でよく目にする「ミドリガメ」である。ではなぜミドリガメばかりこんなにたくさん密集させて飼っているのだろうか。これには、今までの水族館にはなかったスマスイのある「狙い」が隠されている。

そもそも、ミドリガメは日本にいないはずの外来種である。それが今、池で異常なまでに増えてしまい、日本産の「ニホンイシガメ」が餌にありつけず、数が減ってしまっている現状がある。もとはペットとして飼われていたミドリガメが、人間の手によって安易に池に捨てられたことが大きな原因となっている。

スマスイは、あえてそれを園内で再現し、人々に動物の遺棄について考える機会を与えている。「日本の池の現状をそのまま伝える」という目的のもと亀楽園を公開しているのだ。看板にも「淡水ガメ研究施設」と書いてある。すなわちカメを「魅せる水槽」ではなく、「見せる水槽」であると理解するほうが正しい。

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ミシシッピアカミミガメ

最大甲長28センチメートル。オスよりもメスの方が大型になる。背甲はやや扁平かややドーム状に盛りあがり、上から見ると幅広い卵形。 –Wikipedia

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Lencer – Licensed under Creative Commons Attribution-Share Alike 3.0 via ウィキメディア・コモンズ

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ニホンイシガメ

最大甲長22センチメートル。オスよりもメスの方が大型になり、オスは最大でも甲長14.5センチメートル。椎甲板に断続的に瘤状の盛り上がり(キール)がある。 –Wikipedia

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Ceiocaciaca – Licensed under Public domain via ウィキメディア・コモンズ

カメが見たけりゃカメを払え、アカミミガメ・パスポート

実はこの亀楽園、オープン時に面白い企画をしていた。なんと、「カメを連れてきたら水族園の入場料タダですよ!」という企画、亀を見るために亀を持ってくるという通称「アカミミガメ・パスポート」だ。当初水族園側は、皆が野生のカメを捕ってきてくれるだろうと予想していたのであるが、実際に持ち込まれたカメの7割がペットだった。家でもう飼えないからこれを機会に、水族園もタダになるし、もっていっちゃえ、さようならといった流れ。中には「今まで大切に育ててきたが、老齢でもう飼えなく、泣く泣く手放すのです」といった涙ぐましいストーリーもあったが、大半は「飼うのが面倒だから持って来た」という理由だった。亀楽園はまさに、正真正銘のカメ捨て場となったのである。

駆除目的の施設とはいえ、そこはカメたちにとって決して良い環境とは言えるものではない。亀が可哀想といったの声も頻繁に挙がるそうだ。

INFO:

神戸市立須磨海浜水族園

神戸市立須磨海浜水族園

開園時間 午前9時~午後5時  ( 夜間開園時は午後8時まで )
定休日 毎週水曜
入場料 大人1,300円 中人 800円 小人 500円

http://www.sumasui.jp/eigyou/date.html