アメリカ、ハワイ島のマウナケア山にて超大型望遠鏡TMTの建設がいよいよ開始されると国立天文台TMT推進室が発表した。東京から大阪に置いた1円玉を捉える程の驚異的な解像度を誇り、宇宙最初の銀河や星々の観測に活躍すると期待されている。

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TMT(Thirty Meter Telescope)

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国立天文台TMT推進室

TMTは口径30mという、すばる望遠鏡(口径8.2m)の10倍以上の面積の主鏡を持つ史上最大の地上望遠鏡である。すばる望遠鏡をはじめとする大型望遠鏡と同じく、レンズではなく鏡を使って光を集めるタイプの反射望遠鏡。六角形の鏡を492枚組み合わせ、巨大な1枚の鏡として機能させる分割鏡を使用して可視光と赤外線ほかを観測する。

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492枚の鏡を用いた主鏡

表面についた埃の掃除はドライアイスの小さな粒を含んだガスで吹き払う。

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国立天文台TMT推進室

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赤外線観測する理由

宇宙の遠方から放たれた可視光などが赤外線として地球に届くから。観測対象からの光(可視光だけでなく全ての波長の電磁波を含む)のスペクトルが赤側(長波側)にずれる現象を赤方偏移という。救急車のサイレンが遠ざかるときでは音が低く、近づくと高く聞こえるドップラー効果と同様。

「すばる」とのスペック比較

TMT すばる
口径 30m 8.2m
集光力 707㎡ 52.6㎡
解像度 0.008秒角(*1) 0.03秒角

相対感度をすばる望遠鏡を1とすると、TMTはその179倍となる。視野はすばる望遠鏡が1.5度に対してTMTは0.25度だが、視野の広さを除いたほぼ全ての面で高性能な望遠鏡となる予定である。

(*1)秒は角度における単位の接頭辞。1秒角は1/3600度。

宇宙望遠鏡と比較すると

地上では最も優れた望遠鏡であることは明らかだが、それでは軽量化の課題やリスクはあれど大気の影響を受けない宇宙望遠鏡と比べるとどうだろうか。ハッブル宇宙望遠鏡の後継機として予定されているJWSTは、事実上メンテナンス不可能とされる地球から150万kmのラグランジュ点(L2)にて運用される。TMTと同じく赤外線での観測を主とし、実現されれば圧倒的に良い観測環境である。しかしながら、宇宙望遠鏡は膨大な観測データの内、ごく僅かしか地球に送信できないため、そのほとんどを捨てなければならないというデメリットがある。したがって、データをほぼすべて活用できるTMTは大きな範囲を、JWSTは局所的な観測を高精細に行う連携的な観測が行われるのではないかと予想する。

JWST

JWST(ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)

アメリカ航空宇宙局が中心となって開発を行っている赤外線観測用宇宙望遠鏡である。ハッブル宇宙望遠鏡の後継機として、2018年以降の打ち上げを目指して開発が進められている。- Wikipedia

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ラグランジュ点

太陽の重力と地球の重力と遠心力の3力が釣り合う点で、衛星が相対的に静止して見える太陽-地球系における特殊な位置。ラグランジュ点L2付近に置かれた衛星は、太陽と地球を静止した相対位置に捉えることが可能であり、安定した観測をおこなうのに有利とされる。

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彼方の星は、はるか過去

光年とは天文学で用いられる距離(長さ)の単位であり、1光年は、光の速さで1年かかる距離を表す。太陽は地球から0.00001581光年、時間になおせば8分の距離にある。光が地球に届くのに8分要するので、私たちが見ている太陽は8分前の太陽ということになる。この太陽を除いた最も大きく見える恒星ベテルギウスは642.5光年、つまり642年と半年前の光を見ていることになる。したがって、より遠くの天体を観測できるTMTで用いれば、より遠い過去の状態を観測できるようになるということだ。遠くを見るというのは過去を見ることに相当する。

TMTで宇宙誕生時の姿が

観測によれば、宇宙はおよそ138億年前に誕生した。ビッグバンによって初めてできた星は、太陽の数百倍の質量を持つと以前はされていたが、近年ではそれほど巨大ではなかったとされている。だが、これらの星に関するデータは未だ乏しい状況だ。2006年、すばる望遠鏡は128.8億光年離れた銀河を発見したが、TMTはその遥かに高い性能で、宇宙最初期の銀河や誕生した星々、解明が期待されている「宇宙の再電離」や「第二の地球」を捉えることができるだろう。

ガリレオが月に望遠鏡を向けてから400年、人類はまもなく宇宙の始まりを覗こうとしている。

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ビッグバンの残光、ガンマ線バースト。

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REFERENCE:

国立天文台TMT推進室

国立天文台TMT推進室

http://tmt.nao.ac.jp/