あの巨大な体からはあまり想像できませんが、実は恐竜は優れた嗅覚を持つ生き物で、周囲の環境をにおいで捉えていたようです。さらに今回の研究は、彼らの鼻に関する新たな発見をもたらしました。

Dinosaurs breathed through their noses to cool their BRAINS – and discovered their surroundings using heavy, moist sniffs

化石から解明

発見をしたのはオハイオ大学の研究チーム。カナダで発掘されたステゴケラス(パキケファロサウルスの一種)の化石をもとに、CTスキャンと、新たな手法である3Dシミュレーションを駆使して、恐竜の鼻の穴の中をどうやって息が通るかを解明しました。

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ステゴケラス

体長2 – 3メートル。ほぼ全身の骨格が見つかっている。パキケファロサウルスに近縁であり、同様に頭が高いドーム上になっている。- Wikipedia

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Sebastian Bergmann – Licensed under Creative Commons Attribution-Share Alike 2.0 via ウィキメディア・コモンズ

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パキケファロサウルス

中生代白亜紀後期マストリヒシアン(マーストリヒト期)の現北アメリカ大陸西部に生息していた、いわゆる石頭恐竜の代表的なものの一つ。属名は「分厚い頭のトカゲ」の意。- wikipedia

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Public domain via ウィキメディア・コモンズ

まずCTスキャンによって、ステゴケラスの化石の鼻腔の奥に鼻甲介(紫色の部分)と呼ばれる軟骨状の組織が見つかります。この鼻甲介はにおいを感知する部位にあり、ステゴケラスではここが大きく発達していました。つまり、この恐竜はとても嗅覚が鋭敏だったと考えられます。

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発達した鼻甲介(preserved olfactory turbinates)

ところが、3Dでステゴケラスの鼻腔内の様子をシミュレーションしてみると、鼻の中を通る空気はここにまで届かず、その手前を通り過ぎてしまうことが分かりました。これではせっかくの優秀な嗅覚を活かすことができません。

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においを感知する部分(olfactory region)まで空気が届かない

ダチョウやワニとの共通点

ここで研究チームは、恐竜の親戚であり現在も生息しているダチョウやワニ、トカゲなどの鼻腔の構造に目を向けました。恐竜とそれらの動物には似ている部分が多く、恐竜の謎を解明するヒントとなることがあるのです。これらの動物の鼻腔には、鼻梁の骨の内側の真ん中あたりにもう一つの鼻甲介(緑色の部分)が付いています。ここに鼻から吸った空気が溜まって、奥のにおいを感知する部分へと吹き上げられるという精緻な構造を持っているのです。

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ステゴケラスにも同様の構造があったのではないか、と研究者たちは考えました。その結果、二つ目の鼻甲介がどういう形をしていたか正確には分からないにしても、空気の流れを調節する役割を果たしていたのではないかということが明らかになってきました。

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手前の鼻甲介を通ることで空気が奥に届き、においを感知することができる

脳を冷却する機能も

またこの二つ目の鼻甲介には、空気の通り道を調節するだけでなく、脳に流れ込む血液を冷ます働きもありそうなことが分かってきました。全身の動脈を通ってきた熱い血液が鼻甲介を通る時に冷やされて、静脈を通り脳に戻ることで脳を冷却していたのではないかと科学者たちは考えています。ケンカする時頭のお皿をぶつけ合っていたと言われているステゴケラスが、ケンカをしている最中も、案外頭の中は冷静だったのかもしれません。私たちも彼らに倣い、カッとしそうになったら頭を冷やして、常に冷静でありたいものです。

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冷やした血液を脳へ送る