アルコール依存症、ニコチン依存症やギャンブル依存症など、形のあるもの、ないものに限らず『〜依存症』という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。やらなければいけないことがあるのに少しだけと関係ないウェブページを見てしまう、人と会って話しているのについつい携帯でTwitterの画面を覗いてしまう。そんな行動に心当たりがある人は少なくないのではないでしょうか。

そんな中、サンディエゴの医師団が、グーグルグラスの依存症と診断された男性の症例についての論文を公開したということです。

米グーグルの眼鏡型端末「グーグルグラス」を使い続けて依存症になり、米海軍の薬物依存症治療施設で治療を受けたという男性の症例について、サンディエゴの医師団が論文を公開した。

依存症と診断される基準

仕事で1日の長時間をパソコンの前に座り続ける人、SNSで情報を集めるためにずっと張り付いている人は、治療が必要とする依存症なのかといえばもちろんそんなことはありません。好きだからついついTwitterを見ることが多い人であっても、それだけで決めつけることはできません。そういう人たちと依存症と診断される人にはどのような違いがあるのか。どのような状態になれば依存症と正しく診断される場合があるのでしょうか。

以下の条件のうちいくつかを満たす場合、対象のものへの依存症の可能性があるとされています。

物質に対する耐性が形成されている。

・離脱症状がみられる。
・目的とするよりもよりも高用量、またより長期間、使用する。
・その行為を中止または制限しようとする持続的な欲求または努力の不成功がある。
・その物質を得るために必要な活動、物質使用、または、その作用からの回復などに費やされる時間が大きい。
・物質使用のために重要な社会的、職業的、または娯楽的活動を放棄、または減少させている。
・精神的または身体的問題がその物質によって持続的または反復的に起こり、悪化しているらしいことを知っているにもかかわらず、物質使用を続ける。

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このように、依存症と診断される可能性のある人は、そのものに対する欲求が非常に高く、また自分ひとりの力ではそれを手放すことが困難になっている場合が多いのです。
今回治療を受けた男性も、グーグルグラスに対してそのような症状が見られたため、治療を受けることになったのです。

グーグルグラスへの依存で治療を受けた男性の場合

今回グーグルグラスを使いすぎて治療を受けた男性はでは、どのような状態になっていたのでしょうか。
医師団によると、もともと男性は仕事のためにグーグルグラスを使用していました。それが、かけているときのほうが人と接しやすいと感じるようになり仕事外でも着用し続けるようになり、最後には入浴時と就寝時以外の時間には外さない状態になってしまったということです。グーグルグラスが着用できないときは非常にイライラし、怒りっぽくなっていきました。グーグルグラスを着用した際に視界に見える小さなディスプレイが、外して眠っているときでさえ夢に現れていたともいいます。
男性への治療は35日間にわたって行われ、症状は改善されたそうですが、男性は「アルコール依存の治療時よりも禁断症状は苦しかった」と話しているということです。施設での治療を始めた際は自分のこめかみを叩いて装着していないグーグルグラスを操作しようとするような仕草が見られたそうですが、治療の後にはその仕草は見られなくなり、イライラすることも以前よりは減ったということです。

はじめは『嗜癖』

お酒が好きで飲んでいる、煙草が好きで吸っている。買い物が好き、食べるのが好き、気分転換にギャンブル。もともとは好きで始めていたはずのことが、気づけば切望するようになる、その状態を『依存が形成された』と言います。

例えば、お酒が好きな人がはじめは2、3杯でご機嫌になり、満足していました。けれど、お酒を飲む機会が増えるにつれて同じ量では満足できなくなったその人は、飲む量を増やすことで同じ満足を得ようとしていきます。

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依存症(いそんしょう・いぞんしょう、Dependence)

WHOの専門部会が提唱した概念で、精神に作用する化学物質の摂取や、ある種の快感や高揚感を伴う特定の行為を繰り返し行った結果、それらの刺激を求める抑えがたい欲求である渇望が生じ、その刺激を追い求める行動が優位となり、その刺激がないと不快な精神的、身体的症状を生じる精神的、身体的、行動的な状態のこと。 – Wikipedia

次第に量とともに飲んでいる時間も伸びていき、いつの間にかお酒を飲んでいる時間のほうが1日の中で長くなる。飲み過ぎだと人が止めようとしても怒って聞こうともしない。やがてお酒が切れると不機嫌になり、お酒を飲むことしか考えられなくなり、飲めないことへの怒りを周囲に当たり散らしたりもする。見かねた人が医師に相談すれば、その人はアルコール依存症だと診断される可能性が高いでしょう。
依存にはアルコールやニコチンなどの『物質への依存』、ギャンブルや借金などのような『過程への依存』、共依存などの『人間関係への依存』などに分けられますが、どれにも共通しているのは、依存しているものに対する強い欲求、それを絶たれたときに生じる強い不快などです。

今回の男性も、はじめは仕事で使用していたものを、仕事外でも着用するようになっていきました。そこまではまだ嗜癖の範囲です。けれど、次第に着用する時間が不必要なほど長時間になり、それを外すことに強い不快を覚え、グラスがないと不安定な状態となって人に対して攻撃的な態度をとるなどの症状が発生したことによって治療が必要であると診断されたのです。

日本ではグーグルグラスはまだ一般ユーザ向けに発売はされていませんが、近い将来日本でも同じような症状に悩まされる人が現れるかもしれません。何事も、適度な使用を心がけたいものです。