アニメが子どもの見るものだった時代は、ずいぶんと昔のことになって久しい。いまやアニメは大人も子どもも楽しむ娯楽のひとつだ。だが、そんなアニメ業界は徐々に元気を失っている。日本のクリエイターが活躍できる場の減少、作品傾向の大きな偏り。そんなアニメ業界を元気づけ、アニメの楽しさを製作者にも視聴者にも再認識してもらおうという企画が開始される。

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題字は宮﨑駿

ちなみにこの『日本アニメーター見本市』という名前は宮崎駿監督の提案のもの。括弧はのちに庵野秀明監督が内緒でつけたのだという。真っ赤な彩色は鈴木敏夫プロデューサー

10月26日、ニコニコ生放送にてスタジオカラー・ドワンゴ共同企画『日本アニメ(ーター)見本市』発表会が行われた。出演者は庵野秀明(スタジオカラー)、川上量生(ドワンゴ)、氷川竜介(アニメ特撮研究家) の3名。『アニメ(ーター)見本市』を開始するにいたった経緯、現在のアニメ制作事情について語った。

アニメーションは袋小路

いまアニメーションは袋小路状態だと庵野秀明は語る。それは、制作現場、作品どちらも。若い日本のアニメーターが育つ場が減っていて、彼らが自由に作品を作る機会も失われていっている。ターゲットは狭く狭くなり、見る側も減っていく。アニメの作り手も見る側も減っていくこの現状を打破するためにも、日本のアニメーターが挑戦し、自由な作品を作る場が必要だとして、今回の『アニメ(ーター)見本市』を行うこととなったという。

日本のアニメが抱える問題

若いクリエイターを育てる場の減少

1年に数多くのアニメが制作されているが、1本のアニメに割り当てられた予算に求められるクオリティの採算が合わないと言われている。これには、かつてのアニメ黎明期において手塚治虫が低予算で制作を引き受けた背景があったり、リスクを負わない代わりに還元も少ない『製作委員会方式』などの問題点がある。加えて、当時のアニメと現在のアニメでは求められているクオリティにも大きな違いがある。低予算で高クオリティを求められるため海外への委託が増えるなど、日本の若いアニメーターが技術を磨きたいと思っても、肝心のその場がどんどんと失われてしまっている状態では今後の日本アニメを支える新しいアニメーターを生み出すことは困難といえる。「アニメ業界はこの先必ず先細っていく」と庵野秀明は語った。

安定したクオリティを毎回保つには、それだけの人件費も要する。制作費を安く抑えるために、海外へ委託することも増えている。たとえば、人気アニメ『ONE PIECE』も制作のほとんどがフィリピンで行われている。かつて日本のアニメは『ジャパニメーション』と呼ばれていたが、その文化も、もはや日本だけのものではなくなってしまった。当時のアニメーターも高齢化していき、その後に続くべき若いアニメーターを育てられる環境が必要。

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作画崩壊

キャラの顔立ちに統一感がない、絵のクオリティが低いということに、いまの視聴者はかなりナーバスに思われる。

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©岸本斉史 / 集英社・テレビ東京・studioぴえろ

「このままでは子ども向けと深夜アニメしか残らない」

毎クールごとに様々なアニメ作品が放送されているが、その一覧を見ると、子ども向けアニメや人気漫画、ライトノベル、ゲームを原作とした作品の多さがわかると思う。それ以外のオリジナルアニメも『萌え系』と呼ばれるものが目立つ。アニメ視聴者の幅が、いま非常に狭いものとなっており、その狭いターゲットに向けてのアニメしかほとんどが作られていない。こういった現状を変えるためにも、商売抜きでアニメーターが自由な作品が作れる場所を提供していくという。

愛と勢いで作るアニメ作品を配信

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公開されたPV

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http://animatorexpo.com/

様々なアニメを毎週1本配信

『日本アニメ(ーター)見本市』では、「愛と勢いで作りきる」作品を毎週金曜日に公式サイトで配信していくという。内容は5、6分という以外は制限なしの短編だが、ひと言でアニメといってもその種類は様々。オリジナル企画、スピンオフ企画、プロモーション映像など、様々なディレクター陣によって配信される作品の数は30本を予定している。参加者もフリーの人もいればCGスタジオからの参加もいる。アニメーターの『ーター』にかっこがついているのは、アニメーター以外のアニメ制作者も含まれるため、アニメーターのためだけの企画ではないからというものが理由だ。

次回内容は配信までのお楽しみ

金曜の配信が終わった後に、次週放送されるアニメのタイトルとスタッフ名が公開される。それ以外の情報は公開しない。「(見る人には)情報に飢えてほしい。ネットを検索すればなんでもあると思うな(笑)」と庵野秀明は語る。視聴者はタイトルとスタッフから、いったい次はどんな作品を見ることができるのかを想像し、次回配信日を楽しみに待つことになる。いまの時代、アニメでもドラマでも先々の情報はネットを検索すればある程度のことはわかってしまう。そんないま、わからないからこその楽しみの再確認の場にもこの企画はなるのだろう。

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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q

2012年公開。封切りの瞬間まであらすじを公表せず、ストーリーは隠されていた。観客は未知の状況に困惑する主人公を追体験するような感覚を味わった。

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youtube ©スタジオカラー/GAINAX

「アニメっておもしろいんですよ」と庵野秀明は言う。作るのも、見るのもアニメは楽しい。子どもだけのものだったアニメは裾野を広げ、大人でも楽しめる娯楽になった。そのことを今一度この企画を通して体験してほしい。この企画を通じてアニメ作りに惹かれた若手アニメーターが今度活躍することがあるのかもしれない。

配信の翌月曜日には作品の監督などのスタッフとアニメ特撮研究家の氷川竜介による作品の解説もニコニコ生放送で配信される。

INFO:

日本アニメ(ーター)見本市

日本アニメ(ーター)見本市

http://animatorexpo.com/